味覚変じゃね?
「仲村くんの家って会社からそんなに離れてないわよね?」
マジで来るのか、家に?
「あの、ホントに大丈夫ですって。オレ今日はちゃんと飯食いますから…」
「良くないっ!また倒れたら仕事にも支障をきたすでしょ!」
おいおい…来るのかよ家に。
「あ、あの高橋さん?オレ帰りに何か食って帰りますから。ですからホントに大丈夫ですって」
彩音が家に来て飯を作ってくれるのなら大歓迎だ!
がしかし、沙織はちょっと…
「…やっぱ仲村くんの家に行くわ」
……何で?いいからとっとと帰れよ、ったく。
そんな事も言えず、オレは沙織と共に駅前のスーパーで食材を買い、家へと向かった。
「なにキョロキョロしてるの?」
ここはオレの地元だ、誰が見てるかわからんからな。
こうやって周囲を確認しないと。
「いや、実家この近くにあって…オレ地元だから誰かいるかなぁって、はい」
「えっ、仲村くん実家の近くに一人暮らししてるの?」
「はい」
「…それだったらまだ実家にいた方が良かったんじゃないの?」
「いや、とにかく家を出て一人暮らししたかったんですよ。でもまぁ、なんつーか、あんまり地元から出たくなかったから近所のアパートに住んでるんですけど」
「何かそれって一人暮らしのような一人暮らしじゃないような…まぁとにかく今日はアタシが料理作るから」
沙織って料理出来るのだろうか?
何か家事とかやらなそうに見えるんだが。
そんな事を考えてるうちにアパートに着いた。
あっ!ヤベッ、佑香ちゃんのDVDが置きっぱだ!
急いで片付けないと!
「ちょっとすいません、入る前に少し待ってくれますか?」
「どうしたのよ?」
そりゃ、その…
「いや、とにかくちょっと待ってください!」
「…わ、わかったわよ」
オレはダッシュでベッドに置いてある佑香ちゃんのDVDを押し入れにしまった。
よし、これでエロな物は何もないように見えるな。
「どうぞ、お待たせしました」
「おっ邪魔しまーす」
沙織はオレの部屋に入った。
「へぇ~、意外とキレイにしてるんだねぇ」
そりゃそうだ、他にやること無いから掃除や洗濯は一応マメにやってるのだ。
「台所もキレイね。あ、色んな調味料があるじゃない。仲村くん料理するんだ?」
「あ、はい。自炊しないと経済的にキツいですから」
「ふーん、もっとだらしない生活してると思った」
バカヤロー、大きなお世話だ!
オレはジムに通いだしてからカロリー計算とかしながら料理するようになったんだ、アンタより料理は上手いはずだ!
「じゃあ、アタシ料理するから仲村くんはそれまでお風呂入ってくれば?」
うーん、沙織がいる手前、風呂に入るのもどうかと思うのだが。
まぁいいか、サッとシャワーでも浴びてこよう。
「じゃお言葉に甘えて先に風呂入らせていただきます」
「はぁーい、ゆっくり入っててねぇ」
でも沙織は何の料理作るんだろうか?
よくよく考えたら、女の手料理を食べるなんて生まれて初めての事じゃないか?
うーん、いいなぁ、女の手料理!
結婚してるみたいだ。
てことはポチョムキンは毎日手料理を…
クソーっ!何か段々腹が立ってきたぞ!
何であのキモデブが毎日嫁の手料理を食うんだ?
あのクソヤロー、今度会ったらボディに1発パンチでもくれてやろうか!
オレはシャワーを浴びて部屋着に着替えた。
「もう出来てるわよ」
おっ、どんな料理だ?
あっ肉じゃがだ!それとワカメと豆腐の味噌汁にサラダか。
こりゃ美味そうだ!
沙織が茶碗にご飯を盛り付けていた。
「はい、仲村くん食べてみて」
「あ、ありがとうございます!では、いただきます」
まずは味噌汁から。
ん?もう一口…
んん?更にもう一口…
んんん?何か足りない。ダシ?いや、味噌はダシ入りの味噌だからそんなはずはないのだが…
では肉じゃがをいただこう!
…全体的に味が薄いような。
不味くはないのだが、イマイチ味が足りないような気がする。
「どう、美味しい?」
何だその満面の笑みは?
「あ、はい!美味しいっす!」
味が薄いなんて口が避けても言えないよな。
「良かった。喜んでくれて」
沙織は上機嫌に肉じゃがを食べた。
しかし次の瞬間、表情を歪めた。
「…仲村くん」
「はい?」
「アタシもしかしたら調味料間違えたかも…」
やっぱり味が薄いと思ったのか。
「あぁちょっと薄いなぁとは思ったけど、美味しいですよ」
「えっ、味が薄い?ウソ?アタシしょっぱく感じるんだけど!」
はぁ?これでしょっぱい?
えっ、どっちの味覚が変なんだ?
もう一度味噌汁を飲んで肉じゃがを食べた。
…やっぱり薄いよな、味が。
これでしょっぱいって、高血圧の人の食事よりひどいぞ!
「いや、しょっぱくないですよ、ちょっと薄めですけど味は良いですよ」
「えー、しょっぱいよ、これ」
…するってぇと何か、アンタは高血圧とか糖尿病用の飯を食ってるのか、いつも?
「そうですかね、オレは薄めで良いと思うんですが…」
「ダメ、アタシしょっぱくて食べられない!」
……………やっぱアンタの舌イカれてるよっ!




