たまにはいいだろ?
「オヤジ、着いたぞ。さぁ降りた降りた」
オレは泥酔状態のオヤジを抱えタクシーを降りた。
「あーくそっ、重いなオヤジは」
何とか部屋の中にオヤジを入れた。
「ヨシヒコ~オラァなあ、たまたま入った店に唯ちゃんがいてだなぁ」
「わかったわかった。今日はもう寝ろオヤジ」
オヤジを無理矢理ベッドに寝かしつけた。
「ったく。何だってこんなんになるまで飲んでんだよ、オヤジは」
そういや、オレが高校ぐらいの時にオヤジがキャバクラ嬢にブランド物のバッグ買ったとかでオフクロと揉めたっけなぁ。
オヤジは銀行員で普段はお堅いイメージだが、キャバクラ大好きでたまにハメを外す。
ストレス溜まってんだろな、オヤジも。
社会人になってからオヤジがそういう場所だハメを外す理由が何となく解ってきた。
あ!そういや飯食ってねえや。
今からコンビニに行くのもかったりー。
もういいや、今日は寝よう。
残業でタダでさえ疲れてんのに、オヤジを抱えてここまで来たから飯食うヒマも無かった。
寝よう寝よう。
オレはその夜、飯を食わずに寝た。
翌朝オヤジがオレを起こしてきた。
「ヨシヒコ、早く起きろ。こんなとこで寝てたら風邪引くだろ」
「はぁ…何だオヤジ起きたのか」
「当たり前だ、急がないと会社に遅れるぞ」
「んぁー、寝た気がしねーなぁ。オヤジ昨日何であんなに酔っ払ってたんだよ」
「そ、そうか。そんなに酔っ払ってたか。スマンなヨシヒコ。まぁたまにはああやって飲みたい時もあるんだよ」
照れ臭そうにポリポリと頭をかきながらオヤジはオレに言った。
「オフクロにはゆうべ連絡しておいたから」
「そうか。悪かったな。母さん何か言ってなかったか?」
「んー、また飲んでるんだ?しょうがないわねお父さんは。みたいな感じで言ってたかな」
「…」
「何かあったの?」
「ん、いやお前が家を出てってから父さん何だか家に居てもつまらなくてな。母さんと亜美は女だからな。男は父さんしか居ないから何て言うのかな。何かつまらなくなる時があるんだよ…」
そうか、オヤジはオレが家を出たのが寂しいのか。
「オヤジ…」
「まぁ気にするな。たまにはああいう所に行かせてくれよ。勿論母さんにはナイショだぞ」
「解ったよ。でもあんなになるまで飲むなよ。唯もかなり心配してたぞ」
「あぁ解った。しかしあの唯ちゃんが居たとはなぁ。いや~最初はビックリしたよ。おじさん?て声掛けられた時、誰か解らなかったからな、ワハハハハハ」
「何でも留学するためにあそこでバイトしてるらしいよ。奈央はあまりいい顔してないらしいがね」
「う~ん、そりゃまぁそうだが、唯ちゃんなりの考えがあるんだろ。しかし随分とキレイになったな、唯ちゃんは」
「オヤジ、まさか唯目当てで通うつもりじゃないだろな?」
「ワハハハハハハ!たまにはいいじゃないか、なぁヨシヒコ!」
ったく、キャバクラがそんなにいいもんなのかね。
オレにはイマイチよく解らん。




