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十五



 今から思えば、私は幼さを武器に色々酷いことをしていたなぁと思うよ…


 あの言葉は…姫を好きだった煌にとっては断首された程の衝撃と終わりを告げる言葉だったろうと思う…



「えっ……えっ? えっ?


 誰から聞いたの、そのハナシ…ちょっ…


 あの、()ー、さん…?」


 震え出した煌の表情を見て、私は本当なんだと感じた。


「っもぉ! 本当なんですねっ!?」


「えっ、ちょっ…


 ウ、ウソウソ。いないよ、彼女なんて。婚約も結婚もしてないから!


 あのっ…()ーさん? その無表情は、どっち…? い、いつもの、でしょーか…? い、いつもの、だよね? ね?」


 うろたえている煌を見て、坦はいやらしい黒い笑い顔でつぶやいた。


「あっれぇ~? そうだったっけぇ~?


 あ~あぁ~、そぉ~だったぁ~、煌は婚約者も婚姻相手も彼女もいないけど、遊ぶ『だけ』のオンナノコは沢山いるんだったぬぇぇ~?


 この間、俺とお酒飲みながら言ってたっけぇ、妓女(ぎじょ)(遊女や芸妓(げいぎ)のこと。話や歌、舞踊などと酒で客を楽しませるコンパニオン。娼婦を差すこともある。館付きの妓女の種類は5種。宮妓(きゅうぎ)(王宮付き)、家妓(かぎ)(高官・貴族・資産家の家付き)、官妓(かんぎ)(政府運営の妓楼・酒楼といった楼閣付き)、営妓(えいぎ)(軍部内の組織付き)、民妓(みんぎ)(民営の楼閣付き))を、一晩で最高8人までお相手したことがあるってぇ。


 『妓女』ってのもどこの妓女か怪しいねぇぇ~、宮妓かもねぇぇ~? 一体、何人囲ってるんだかねぇぇ~?


 あ~、夢ーちゃん~、怖いねぇ~、フッフッフ」


 煌は真っ青になって崩れ落ちて、階段へ体ごとなだれ込んだ。


「ぐあぁ…ちょっ…そ、の、ハナシ…どうして…今ぁぁぁぁ…」


「あぁ~ん? 今この爆弾爆発させずして、いつ爆発させるんだよ~。ベストタイミングでしょ~が~?」


「酷いっ! あ、あのっ! 俺の所に、宮妓なんかいないから! これは本当でっ…ちょっ…無表情…本当にどっち?」


「へぇぇ~? 宮妓がいないのは本当なんだぁぁ~? じゃ、8人の話はぁぁ~?」


「えっ…ちょっ…えぇえ~~~…かんべんしてよ~……」


 そう言い放つ坦と階段に這いつくばる煌を見て困る私を見て、背後から(のう)がため息交じりに、交戦する2人へ声を掛けた。


「…坦。それに…その、『煌』…さん。もう、そのくらいで。紫瑛(しえい)もおります」


 それを聞くと、煌は涙を浮かべた真っ赤な顔を階段から起き上がらせた。


「…うぅ…ありがと、えぇと、…何だっけ、『能』だっけ…?


 あ、あと、『さん』もいらないから。呼び捨てにしといて、コイツと同じに」


 そう言って手の平で坦を差す煌に、坦はまた黒い笑いで言葉を放った。


「へぇぇ~。コッワ~イ。コイツ呼ばわりしてぇ。ナニナニ? 同郷2人で共闘する気ぃ?


 君たちがその気なら、俺ももう1コ爆弾を投下しなくちゃねぇぇ~?


 ねぇ~、煌~? 気を付けてね~、この能はねぇ、手だけは早いからぁ~。


 夢ーちゃんに抱きしめてもらえるように游さんに交渉したりねぇ? あぁ~、最近なんか、夢ーちゃんのカワイイカワイイ指をなめてたからねぇぇ~?」


「えっ、なっ……あれはっ…」


 能が赤面して次の言葉に詰まっている間に、坦は姫の肩を背後から抱き締めて、その耳元で周りに聞こえるような声を出した。


「夢ーちゃん。この間、能は夢ーちゃんの指を(くわ)えてたね。ほら、お菓子、差し入れてくれた時。本当だったらうなずいて?」


 坦の聞き方は絶妙で、姫は何の迷いもなくうなずかれた。


 それを見た煌は額を階段に付けて震え、能は赤面から一転して真っ青になった。煌は震えながらも腰の刀に手を置いた。


「お…俺でさえ…まだ、手を握るだけで精いっぱいだというのに……」


 それを見た能は…まだ、煌を平民扱いするのに慣れていないせいか、両膝をついて否定し始めた。


「ご、誤解です、坦の言い方には悪意のある語弊がありますっ! 私はそんな…ど、どう申し上げれば良いか…」


 不穏な空気の2人を見て楽しそうにしている坦を見て、当時の私は不公平だと思った。


 どうやら、みんな、ばらされて嫌なことを坦に言われてるようだ、でも、当の坦は何もばらされて嫌なことを言われていないじゃないか、とね。


 そこで……


「ねぇ。そんなこと言ってますけど、坦さんもこの間、僕が見張ってるって言ったのに、僕を宮殿の柱に縛り付けて、無理矢理姫様と2人っきりになったでしょ?


 歌陰(かいん)さんと歌陽(かよう)さんが僕に教えてくれたよ、もうちょっとで、危ない所だったって。


 酷いです! また姫様にエッチぃことしようとしてたんでしょ。やめてくださいよね」


「ぅえっ!!!???」


 今度は坦が真っ青になり、妙な声を上げた。


 煌はサヤとツカにそれぞれ片手を置いて体を震わせており、カチカチカチ…という小刻みな金属音が聞こえてきた。


「………坦……」


「…えっと…何?」


「……ごめん…俺、……斬るかもしんない…無意識に…」


「……え…えーとね……あの……誤解、でさ…」


 一色即発、しかしどこかコミカルな空気の中。…やっぱり、この人が、場を壊してくれたよ。



「はーい! お菓子と飲み物用意したよー!


 あっ、坦ちゃん、さっきはありがとねー、手伝ってもらっちゃってー! 坦ちゃんの分も入れたからねぇぇ~」


 游さんがにこやかに歩いて来た。



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