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十四



 寝転がるライラの腹にくるまれながらライラの手を両手で握ってマッサージしている(こう)を見ながら、(たん)はまた、(のう)へ向けて語り出した。


「…ま、いっか。俺、アイツはまだ、つぶせる圏内にいると思ってるから。


 …あのな。


 お前な。


 気ィ付けておけよ、アイツも狙ってるから。


 ……たぶん、彼女が游さん以外で初めて会ったオトコは、アイツさ。


 …アイツは、そう、惚れた相手に積極的になれるヤツじゃないみたいだから、今は俺も危険視してないんだけどな。


 ……


 …アイツは…


 気付いていないけど、持ちすぎてる。


 誰もが憧れる黄金郷の(あるじ)の座。有り余る金と権力。剣技も馬術も軍略も、おそらく、4つの国の中じゃ1番だし、男らしい度胸も懐の深さもあるし…俺ほどじゃないけど、顔も、いいし。


 あと…


 …何だかミョ~にシャクに触る、ギャップがあるし! あれだけ武の才能を持ってて絵がうまかったり綺麗な詩を詠めたり…物作るの上手かったりって!


 …あー…アイツに昔やられてたこと思い出すとくっそ腹立つ!」


「…あ~…そう言えば、お前は、北境(ほっきょう)にも人質で来たことがあったんだっけな…大変だったな。私は平民で、そういう重要なことは知らされてなかったから…」


「アイツぅぅぅ…


 俺の首に首輪なんかハメやがってぇぇぇぇ…!


 北境は秘匿の国だから、とか何とか言って、本来の北境の国の地を俺に1歩も踏ませなかった。眠龍山(みんりゅうざん)の『国境』警備の城で俺を文字通り『飼って』いやがった…! ちっくしょぉぉ! どれだけ(さら)しモンの目に遭わされたか!」


 そう言って坦は宮の手すりを思い切りダン! と、固く握りしめた片手で叩いた。


「それは…そうか、そういうことをする王だとは、思っていたが…」


「だけど、まぁ」


「ん?」


 坦はそれまでの怒りの満ちた表情を消して、真顔になって、ライラと遊ぶ煌を見た。


「アイツも苦労してるし。戦争状態だもんな、俺の国とアイツの国は…仕方なかったと思う。そういうもんだ、戦争は。


 今は、適度な距離で遊んでやってるし。


 ……


 …それほど嫌なヤツじゃない、能。


 きっとお前も慣れる。…気に入るさ。


 だけど、気は許すなよ? アイツ…言っとくが、俺より女の場数は踏んでるからな…桁数が俺と1つ違うくらいはやってるから」


 幼かった私は、そこで坦の話に入った。


「煌さんが坦さんに酷いことするなんて思えませんけど…


 女の人の『バカズ』っていうのは、闘ったってことですか? 女性にも酷いことするんですか?」


 それを聞いた坦は『しまった』という表情をしていた。それを能はため息をつきながら眺めていた。


「いやあの。


 彼女の数、だよ…彼女の数…」


 目をそらしながら答える坦の話を聞いて、当時の幼い私は驚愕した。


「えぇー!?


 煌さん、彼女、いっぱいいるの?


 それなのに、姫様のこと、気に入ってるの!?


 ウッソだぁ~!?」


「フフン、そうだろ、酷いだろ、言ってやれ言ってやれ!


 おーい、煌!」


 坦は煌の方へ向いて大声で彼を呼んだ。


 煌はライラから離れ、私たちの方へ駆け寄って来た。


「何だ?」


「フフン。


 紫瑛(しえい)。言ってやれ、言ってやれ、さっきの。


 ほら、()ーちゃんも聞いてー」


 坦が私の肩をつかみ前へ進ませ、横座りでいる姫の横に立たせた。丁度、姫も私も、宮を取り巻く外廊から庭へ降りるための階段付近にいて、手すりの邪魔なく煌と対峙できた。


 私は何の悪びれもなく、煌の顔を真正面から見て、坦に言われた通り、さっきの言葉を煌へぶつけた。


「煌さん、彼女がイッパイいるってホントですか?


 それなのに、姫様のこと気に入ってるんですか?


 嘘でしょ?」



 それを聞いて、煌は真っ青になった。



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