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 クスクスクス…


 フフフフフ…



 (そん) (しょう)は女性の笑い声らしきもので目が覚めた。


 瞳を開いてから目に入ったのは見慣れた風景…自身の家だった。


 クラクラする頭を押さえながら体を起こすと、笑い声のした方向から声が聞こえた。


「おぉ! 起きたか、孫 彰!」


「良かったです! クププッ」



 見ると、自身の机の(そば)で女性が2人、筆で何かを書いている。月明かりで見えた、声の主の女性は、1人が髪が短く、1人は髪が肩まであった。



 まだハッキリしない頭で孫 彰がボーッとそれを見ていると、女性2人は立ち上がって、彼の方へ近付いて来た。


 2人の女性は目を細め、ニコニコと微笑んでいた。しかし、今宵の月は明るすぎたのか、物の影が濃く、楽しそうな女性の微笑みは一部暗く、妙な異様さがあった。



「えぇと…貴女たちは……」



 その言葉を聞くや否や、女性のどちらか1人が孫 彰へ飛び掛かかり、体の上へ馬乗りになった。孫 彰の両腕をつかみ、床へ抑えつけた女性は、頬を紅潮させて、興奮した様子で孫 彰へ声をあびせた。



「ハァッ…ハァッ…


 孫 彰…孫 彰……ハァッ、ハァッ……!


 おま、お前、も、もうすぐ、……ハァッ、ハァッ……」


 トロンとした表情で息が荒く、声が出し辛い女性の代わりに、飛び掛からずにいた女性が孫 彰の上の女性に負けないほどトロンとした表情で、息を荒くしながらスキップを踏みつつ孫 彰の体の周りを回りながら話した。この女性も、若干、興奮気味である。


「ウフフ…フフフフッ…お前は、もうすぐ…『終わる』のです……ンフフフ……ハァッ…ハァッ…エヘヘヘェ…」


 状況が飲み込めない孫 彰に、2人の女性は次々と話り始める。


 まず、孫 彰の上に乗っている女性が、先に口を出した。



「クフ…フフフフ……


 おま、お前は、まだ、『裁き』を受けることまで、やっちゃあ、いないッ……


 ひ、姫を、夢ーサマを…殺害する目的で殺傷してはいないのだからなっ……縛った、だけ、だからな……ハァッ、ハァッ…」


 次に、スキップを踏みながら孫 彰の周りを回る女性が語り出す。


「ウフフ……


 そぉ、そぉ。でも、でも、ねぇ。


 クフフフ…


 お前、あと、もう少しで天寿が終わるのです。


 あと、ほんの、もう少し…ウフフ、フフ…ハァッ、ハァッ…」


 孫 彰は異様な雰囲気の女性に恐怖を感じ、体を起こそうと、自身の体の上の女性を、自身の腕で叩き落とそうとした。


 その瞬間。



 バァン!



 孫 彰の両腕を、いきなり何か重い物が押さえた。その重さたるや、腕が折れてつぶれる程の質量である。


 たまらず、孫 彰は鬼に体を食われたような形相で叫んだ。



「ウッアァァァァァァァァァ!


 ゴァァァァァァァ!」



 叫んだ後、呻きながら暴れる孫 彰を見、女性たちは益々、喜喜として語り出した。



「ハァッ、ハァッ!


 そ、その声…いいぜェ!」


「ンねぇ、歌陰(かいん)んん! ハァッハァッ…!


 あとさっ、あともうちょっとなんだからさっ、もう、いいんじゃないの?


 ハァ…ハァ…ウフフフフ…


 その、天寿が尽きた瞬間に、命が失われればいいんだからぁ…ハァ…ハァッ……


 やっちゃおうよぉ……ハァッ、ハァッ…ケヘヘ…


 その瞬間より先にならないように、痛めつければぁ…


 ボク、ねぇ、ボクに、ちょっとだけ、踏ませてよぉ、その人間の体…ンねぇぇえ…ハァ…ハァ…」


 訳の分からない状況に加えて奇妙な状態に精神が耐えられなくなったのか、孫 彰は、強く瞳を閉じ、この時を否定した。本当は耳もふさぎたかったが、腕は重たい物の下だった。


 苦しむ孫 彰の耳に、酔っているような甘みのある声で、体の上の女性が周りを回る女性へ返答した音が聞こえた。


「い、いい考えだな、歌陽(かよう)……


 オ、オレも、こいつの体、踏みたい…


 フ、フフフ…良い感触だぜぇ、きっと……」


 孫 彰は腕の痛みに耐えつつ、目を開いて女性の方をにらんだ。そして何か言葉を発しようとしたのだが、目の前の光景を見ると、今言おうとした言葉が消えてしまった。


 目の前には。


 両手だけ(うろこ)のある大きな甪端(ろくたん)の足(甪端(ろくたん):麒麟の種類の中でも、鱗や体の色が黒い物)に変化させ、孫 彰の両腕をつぶすようにその両足を乗せている歌陰と、背中に五色に輝く大きな鸞和(らんわ)の羽を生やしてスキップを踏む歌陽が見えた。


 しかし、孫 彰がその姿を認めた直後、2人のキョウダイは、その体を中途半端な姿から完璧な神聖生物の姿へと変化させた。


 暗い家の中から、静かな声と大きな叫び声が幾つも山へコダマした。しかしなぜか、近辺の住民に、その声は届かなかった。



「よくも夢ーサマの服、脱がしやがったなァァ!


 オレがやってみたいコトだったのに!


 クプププッ! オラァ、気合い入れなァッ! 天寿までまだちょおーっと時間あるぞぉぉぉ!」


「あーっ、ボクも夢ーサマを裸にしたかったァッ!


 夢ーサマ、他のお姫様と違って自分で着替えられるんだもーんッ!


 ンねぇ、歌陰! 歌陰!


 今日はお泊りだもの!


 夢ーサマとお風呂、入れるかなァッ!?


 あーん、楽しみィ!


 良かったァ、夢ーサマに『裸を見られたら怒る』ってこと詳しく教えてなくってェ!


 キャハハハ!


 ヤ-ン、このコカワイイ!


 人間キャワイイ!!


 もっと叫んでっ!


 もっとボクたちに声聞かせてぇ!」



 ウワァァァァァ…



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