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(うわぁ……


 お前。


 マジでか。


 ジャイアントスウィングかましてぇぇ……)


 呆気にとられている(たん)と、睨みつけている紫瑛(しえい)


 長い間視線がぶつかっていたが…


 ――ギシッ


 ()は動かない2人に見切りを付けて、坦の部屋に入ろうと移動しようとした。坦はハッとなって慌てて夢を止めた。


「あっ! ちょっと待って!」


「ピッ!?」


 いきなり声をかけられて驚いた夢は小鳥のような声を出してひるんだ。坦はそれに対しても慌てて、謝った。


「あ。ゴメン…いや、あの、これ、ちょっと…」


「『これ』って何ですかぁ…」


「いや、お前。


 あ、いや、君ね。


 遠慮しろよ」


「しませんッ! 中入りませんからっ! だからいいでしょッ!」


「あのー、お前、いや、君、ねぇ。


 色々聞かれたくない音とか、あんだって。


 おま…いや、君さぁ、歪んで成長する可能性あるぞ。


 事の如何によっては」


「コトノイカンて何ですかぁ! 姫様にまたイヤーなことするつもりなんですっ! 嫌がってるのに手ぇ握ったりとかっ! パンツのぞいたりとかっ!」


「……あ、の、なー……」 


 坦は最終手段に出ることにした。このままだとどうともならない。事態を変える必要があった。しかも…今思い付いた方法なら、この流され続けた自分の人生の最初で最後の恋を、運命に委ねることが出来ると考えた。恋しい人との時間まで自分で決定できない意気地のなさに、坦はフッと寂しげに自身をあざ笑った。それから、目の前にいる、自分がおそらく生涯追い求めていくであろう女性に、なるべく明るく声を掛けた。


「夢ーちゃん、ちょっと上がって待ってて。机の上のお菓子食べてていーから。あっ、でも、本棚のスキマとか、箪笥のスキマとか、ベッドのスキマとか、とにかく、スキマは見ないでねー」


「何隠してるんですかぁっ!? 姫様っ! さっき言った場所、全部見てくだ…ふぇッ!?」


 最後の言葉を紫瑛が言い終える前に、坦は紫瑛を抱えて走って花鳥斎(かちょうさい)(坦の住まう離宮名)から離れた。


 ワァワァ叫ぶ紫瑛を抱え、華陽宮(かようきゅう)(王族の住まう宮)の入り口まで来ると、紫瑛を大きな柱に押しつけ、彼の両手を柱の後ろまで回すと、自身の額を飾る(きん)でその回された両手をきつめに縛った。


「酷いっっ! こんなことするなんてぇぇぇぇ!」


「いいか! 口は塞がずにおいてやる! だから、人を呼びたかったら呼べ! 俺が僕の大好きな姫サマにイタズラするって言ってるから、今すぐ離宮に乗り込んでくれってな! だけどここは王族に用事があるヤツしか来ない! 游さんに用か、夢ーちゃんに用か、だ。游さんも夢ーちゃんも外でフラフラしてるってこと、国民は全員知ってるから、ここには稀にしか王族以外が来ない。運が良くなきゃあな。俺が夢ーちゃんにイタズラできるかどうか、運に…天に任せる。そうすることにした! 1時辰(じしん)(約2時間)経ってもお前が来なかったらほどきに来てやるっ! じゃな!」


「待ってよっ! どーゆーことなのっ!? わぁぁぁぁぁ~ん! 誰かぁぁぁ! 誰かいませんかぁぁぁ!?」


 坦は泣き叫ぶ紫瑛を置いて離宮へ走った。


(頼む…頼むから、紫瑛、助けを呼んでくれ!


 俺、でないと…決断しなきゃならない…!


 俺……まだ、今のままがいいんだ!)




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