一
*
*
*
西境国 の話(一)
*
*
*
今は統一王国となってしまったから、4つの地域と呼ばれているがね。昔は4つの国だった。
中央にそびえる『眠龍山』を中心に、東西南北にそれぞれ国が1つずつあった。
その中の1つ。
西にある国が『西境国』と呼ばれていた。
皆も知っての通り、『境』は「地方」という意味を持つが、「里」という意味も持っている。
当時はまさに、『境(里)』というイメージだったよ。民家ばかりで、見渡しても田畑が広がっていてね。人より豚やガチョウの方が多いと感じたほどだよ。
それでも人通りの多い道には石を敷いてきれいにならしていた。
石の敷かれた道の周りには少しだけど店が並んで、定期的に[[rb:市 > いち]]も開いていたよ。市のある日には「里」ではなく「町」と思えるくらい人通りがあった。活気があったよ。
その中で1番活気のある中央の大通りをまっすぐ、西の端まで歩くと宮殿があった。
……ハハ。
今より、そりゃあ小さかった。それでも若い私にとっては大きかったけれどね。
そう。皆も見知っているだろう。
西境王の住まう宮殿だ。