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一
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偉い人 の話(一)
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――桃花は湖面に静かに浮かび、
ツララのごとき月は
そこに鏡があるように
映えて光っている。
この輝く青白い夜を壊そうとする者は
もう、
この世界にはいない――
君たちは、この国が平和になった後のことしか知らないだろう。
こうして折角私と話す機会を得られたのに、このままただ帰ってはしまうのはもったいないと思わないか?
今、この地の歴史や習俗を書き留めようとしているんだ。
それで、色々と昔のことを思い出してね。
土産代わりに聞いて帰るのはいかがかな?
君らの好きな人物の昔話ばかりだよ、きっと楽しんでくれると思う―――――