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 廷を出て庭にまで飛んでいた(かく)は、タンカに乗せられながら(のう)の方を見ていた。能はそんな角を、庭から廷の入り口へ入るための階段上で、見下すように見ていた。


「くそ…お前………」


「…フフン。だから三流なんだよ、お前は」


「…刺さった、はずだ……いや、幻だったのか…?」


「刺さった。お前はそれの腕は良い。違う生き方を見つけろ」


「……奇術か………?」


「………クックッ……」


 能は目を閉じて顔を少しうつむけ笑った。諦めたような、そんな気持ちも含まれたような、フッきれた声の軽さだった。


「母さん!」


 そうして、能は突然彼の母君を呼んだ。


 すぐそばにいた私は、どうしたのかと、首をかしげた。


 彼の母君はあの窮地に駆け付けた集団の中にいたようで、能の声を聴くと角の周りの人の山から走り抜けてきた。


言長(げんちょう)! お前は視野が狭いな! 見るがいい! 母さん、やってくれ!」


 その声に角の周りの人も能の方を見た。



 そして、息をのんだ。



「私はな! この国に来るずっと、ずっっっと以前から!



 ――両腕などないのだ!」



 彼の母君は、能の上半身の着物をやにわに脱がしていた。


 そして、彼が嘘をついていないことが証明された。


 白くなまめかしい皮膚に、たくましく筋肉が付いていた。私は本来驚くべき事象よりも、『頭だけ鍛えているわけではないんだな』と、そこに感心したものだ。



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