四
「…うっ……!?」
「キッキュウ………ミーュ………」
その瞬間。
壇上の姫の父上は、自身の座っていた玉座を右腕1本で軽く持ち上げた。美しい装飾も入れて2メートルはある、金、銀、宝玉に飾られた大きな玉座は、乱暴に上下を逆にされ、煌く石の輝きを濁らせた。
「……フッ……!?」
これには角も驚き、そちらを注視してしまった。
その一瞬を逃さないように、姫は腕をすり抜け、走られた。
「あ」
角が姫の走っていった方向を思わず見て小さく叫んでしまった、その直後。
ドゴォンッッ!
角の体は玉座ごと廷の外へふっ飛ばされた。…いやぁ、廷の外どころか、廷の前の手すりや柱も一部道連れにして庭まで飛んでいた。
…と、そこまできてやっと、私はハッとなった。
「あ! みんな! 捕まえて! あの! たぶん怪我してるから! えっとー、大事に捕まえて! 後で取り調べるから! やって! やって!」
オォ――!
テメェコノヤロ
マッテマッテ、モウイイッテ
タンカ!
そうして、事件はやっと片付いたのだよ!
……私は何も手柄がないどころか、失態を犯しただけだったがね。
……
……いや、しかし。
ここからだよ、私が君たちに1番教えてあげたい昔話はね。




