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第1話 社会に出たらわかること

プロローグ

 社会人になって、仕事を始めて、5年も経つと、色々とわかってくることがある。

 社会の仕組み。金を稼ぐことの大変さ。

 

「金の重みは、自分自身で働いて、初めてようやく身に染みるようになるんだ。俺がこの1円稼ぐのにどんなに苦労してると思ってる」


 子どもの頃、父親からそう言われ続けたことを覚えている。

 決して、裕福ではなかったから。


 違う。そんなことじゃない。

 わかったのは、


 例えばそう、自分がいかに平凡な人間か。

 そういうこと。


 例えばそう、組織の中では個人のできることなんて限界があって、そしてその自分の限界点がいかに低い場所にあるか。

 そんいうこと。


 社会に出て、

 得られたのは信用と金。

 失ったのは自信と夢。


 歳を重ねるごとに、仕事の経験を重ねるごとに、後悔と虚しさが自分の心に降り積もっていく。まるで、白雪のように。深々と。深々と。


「また、転職でもするか」

「転職して何をするんだよ。まだ一年だぞ。今の会社で十分だろう」


「お前は一生サラリーマンでいいのか、そうじゃないだろ」

「給料もらえるだけ有り難いと思わなきゃ、このご時世」


「でも同年代のあいつは、海外勤務で年収も1,000万突破したって噂だし」

「人と比べてもしょうがないって、お前はお前。上を見るとキリがない」


「でも、下を見たってキリがない。俺はもっとできるはずなんだ」

「できるはずつったって、だからお前は結局何をやりたいんだよ」


 答えの出ない問いを繰り返すようになり、白雪は時々吹雪に変わる。けれど、いつだって決して止むことはない。


 今日も帰りに最寄りのスーパーで出来合いの惣菜を買い、

 家に着いてはそれを食い、少し休んで床につき、明日また駆け足で会社へ向かう。


 きっと明日もそうなんだろう。

 今日が昨日想像したのと同じだったように。


 そんなことを考えていた2月の終わりに、懐かしい相手から携帯にメッセージが届いた。


〈雪哉、久しぶりだな。来週の金曜、空いてるか?〉

〈久しぶり。突然どうしたんだ〉


 学生時代の親友、新之助だ。俺と同年齢のはずが、今や大手企業の部長職。


〈また、ヒロと一緒に3人で飲まないか〉

〈了解〉


 男同士だから、顔文字も何も使わないけど、俺の心は必然と弾む。どうやら、明日は、明日だけは、昔の気分に戻れそうだ。


 あいつらが、この雪を止めてくれるといいのだが。そう思いながら、晩冬の空気に晒された凍える両手に俺は白い息をふっと吹きかけた。

続きはカクヨムでご覧いただけると嬉しいです。※コンテスト参加中

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882852618

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