黒澤家に到着 猫と会話!?
東京駅から約2時間、あっと言う間に「飯山」に到着。
「まだココから遠いの?タクシーで行くの?」
「あはは!タクシーで行ったらとんでもない距離だよ。姉貴が迎えに来てるはずなんだけど……あっいたいた!」
黒澤が手を振る方向を見ると?ワゴン車の横で手を振っている女の人が「とおる~!元気だった?まぁまぁ皆さんこんな田舎によくいらっしゃいました」とニコニコしながら素敵な笑顔で出迎えてくれた。
「初めまして、お言葉に甘え大勢で押しかけてしまって申し訳ありません」
「……」
なんだろう?お姉さんが私をじーっと見てる。
「あなたが花南さんねっ!すぐにわかったわ、透の言っていた通りの女の子だわぁ♪と言う事はそっちがまみちゃんで?んーと……熱血ボーイの秋月くんに、そちらの癒し系イケメンさんが藤咲くんねっ!」
(待て待て黒澤!あんたお姉さんに私達の何を言ったんだ?)
それぞれが挨拶をすませ車に乗り込もうとした時だった、お姉さんがこっそり私に耳打ち。
「花南さん、どうこんな田舎?うちの方はもっと田舎なんだけどイヤじゃない?大丈夫?」
「えっ?」
「これからも透のこと宜しくね?花南さんが義妹になってくれたらホントに嬉しいわ♪」
(はい?なぜ私が義妹という設定になる?)
鼻歌交じりでとても楽しそうに運転するお姉さんの横でこれまた黒澤君も楽しそう、二人の会話は漫才そのものだった。後部座席からその光景を見ていた私達はコソコソと……
「なぁ、さすが黒澤の姉ちゃんって感じだよな?」
「ですね、遺伝子というのは凄いものだと改めて感じました」
「それにとっても優しそうだよねー!あんなお姉ちゃんが欲しいなぁ、ねぇ花南?」
「えっ!?あぁ……そうだね……うん」
私はどうにもさっきのお姉さんの囁きが気になっている。義理の妹って?それって私と黒澤がってことだよね?お姉さん!とんでもない誤解してますけどっ!
「わぁ!タチシオデはっけーん!ちょっと採ってくる」
突然お姉さんは車を止め、遠くを指さしながら嬉しそうに駆けだした。
「タチシオデって何?」
「山のアスパラって呼ばれている山菜だよ。味もアスパラに似て美味しいんだ」
美味しい食べ物と聞いた途端まみの目がキラキラと輝き『私もいってみるー!』と元気にお姉さんの後を追いかけて車外に出た。がヒールであの斜面を登るのは無理と断念したのか?悲しそうにトボトボ帰ってきた。
「あはは!午後から探検ツアーに連れていくから。ここよりもっといい景色が沢山ある」
「うんっ、ちゃんと山歩き用の着替え持ってきたから大丈夫!楽しみだなぁ、何が食べられるんだろう」
『食べ物かいっ!』
全員の突っ込みが入ったとこでお姉さんが両手にいっぱい山菜をかかえてニコニコしながら戻ってきた。こんな小さな山菜の群衆を運転しながら見つけるなんてお姉さんはどんだけ目がいいんだろう!と全員心の中で思ったがもちろん口には出さなかった(笑)
野を越え山を越え、道中は黒澤君とお姉さんの漫才コンビにみなお腹を抱えて笑い、通り過ぎていく景色は自然がいっぱいで木々が輝いて見える、まさに『森の中探検ツアー』そのものだった。そして着いた所は私達の想像を絶する風景だったのだ。
「黒澤くんっ!庭に、庭に池があるっ、鯉までいるよぉー!」
「おぃ、何処からどこまでが自宅の敷地なんだよ!まさか裏の林もお前んちか!?」
「凄いですねぇ、あの蔵は年代ものですよ?中にはお宝が山ほどあるのではないでしょうか?」
田舎の本家というものを私達は口をぽかーんと開けたまま見続けていた。とにかくスケールが大きい!周りにある田畑や山も黒澤家の敷地内のようだし、古民家風の建物は横にドドーンと広がっていて「ここは旅館ですか?」と尋ねたくなるほどだった。
「黒澤の家って大金持ちなの?」
「なんで?」
「なんでって、この広さ半端ないよ」
「あははっ!確かに東京でコレ考えたら何十億だろうけど、ここら辺の家はみんなこんな感じだよ。ほらあの田んぼの向こうの方に見える家あるだろ?あれが分家」
(隣の家がとても小さく見える距離なんですけど……回覧板クルマで届けるのかな?)
と中から少し腰を曲げたおばあさんがニコニコしながら近づいてきて開口一番こう言った。
「ようこそ、ようこそ、どちらが透の嫁さんなのかのぉ?」
(はい?嫁ですか?)
「ばぁちゃん何言ってんだよ!みんな俺の大切な友達、わかる?と・も・だ・ち!嫁じゃねーよ」
「よう来たよう来た、なぁーんもないけんど楽しんでって下さいよぉ」
「スルーかよ、ばぁちゃん……」
『はいありがとうございます、お世話になります』みなで頭を下げながら元気に挨拶するも心の中はハテなマークが飛び交う4人なのだった。家の中に入ると二匹の猫が怪訝そうな顔で私達を出迎えてくれた。黒いのが『ちまちゃん』で白いのが『ハク君』
≪アンタ達だれ!?≫
「わぁーハクにちまだっ!こんにちはー♪私まみ宜しくね?」
≪よそ者のくせに馴れ馴れしい女だわね≫
「やん♪そんなこと言わないで?仲良くしましょうねー」
≪この女が噂のおにぃの嫁?アタシは認めないわよっ≫
「ちま、久しぶりだなぁ!お前またいい女になったぞぉ」
≪おにぃ!おかえりっ♪最近ハクが生意気盛りのやんちゃ坊主で困っているのよ≫
まみと黒澤君のネコ会話を茫然と見つめる3人であったが、まず秋月君がちまにちょっかいを出しだし、藤咲君が当たり前のようにハクに話し掛けている。どうにも不思議な空間に入り込んでしまった気がしてならないのは私だけだろうか……