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煙草一本  作者: 若旦那
初等部編
5/45

4話

遅々として進まない展開

 エフィムたちが講堂に行くと、既に多くの人達が集まっていた。

 どいつもこいつも一癖ありそうな輩ばかりだった。

「入学生は一列に並んで下さーい」

 ここでも学生と思しき人物が人員の整理をしている。

「アイルさん、凄い人の数ですね」

「ええ、誰も彼も冒険者に憧れて来ている人たちですからね。それに、冒険者育成所は王都にしかありませんから、必然的に数が増えるんです」

 そういうものかと納得しながら、エフィムは列に並んだ。

「それではこれより講堂に入ります。皆さん着いて来て下さいね」

「私も準備があるのでこれで」

 アイルはそういうとエフィムの傍から遠ざかって行ってしまった。

 暫く待つといよいよエフィムの番になった。

「お待たせしました。席は自由になっていますから自分が座れそうな位置に座って下さいね」

 受付の女の子からそう言われるとエフィムはいよいよ講堂の中に入るのだった。

 だがここで問題が生じた。基本的に人間用に作られている講堂内の椅子に、キングオークのエフィムが座れないことが判明したのだ。

 仕方なしにエフィムは立っていることにした

 暫く待つと、講堂の中に声が響き渡った。

「諸君、よく来てくれた。冒険者養成所は諸君らを歓迎する」

 その声と同時に講堂の教壇の上に一人の老人が立っていた。

「私の名前はディソバン・コーラルと言う。いわばここの責任者、校長と思ってくれていい」

 校長か、いよいよ学園ぽさが抜け切れていないな。

 エフィムは立ったままでディソバンの話を聞いていた。

 内容はありきたりなもので怪我に注意すること、魔物との戦闘の際の注意事項などが述べられるに留まった。

「後はおいおい慣れておけばよい。諸君らの前途に幸多からんことを」

 ディソバンはそういって教壇から降りた。

「はーい、それでは皆さんクラス分けを行いますので暫く座っていて下さい」

 その声につられて、エフィムは立ったままでいた。

 クラス分けか。どういった面子と組むことになるのか、エフィムは内心胸を躍らされていた。

「準備が整いましたので前列の方から順番にクラス表を見てください」

 その声と同時に講堂内が活気付く。皆も内心楽しみにしていたのだろう。

 エフィムは講堂の最後尾で立っていたためクラス表を見るのは最後のほうだった。

「エフィム・トォバ、エフィム・トォバっと……」

 エフィムは初等部のクラス表を見ていた。そこで自分の名前を見つける。

「第一組か。さて、それでは次に行くとするか」

 エフィムはそう一人ごちて一組のクラスに向かうことにした。

 わいわいがやがやと言う擬音が付きそうなほど第一組は混沌としていた。

 人族の割合が多いようで、亜人種は数人しか見かけなかった。

 そのため人よりも遥かに身長の高いエフィムはよく目立った。

 まだ成長期とはいえ、キングオークは人族の子供二人分に相当するかのように大きい。

 それがいきなり教室に入ってきたのだから、場は混沌から混乱へと様相を変えていた。

「おっきいね。僕の名前はエリク・ハンプトン。これからよろしくね、キングオークのお兄さん」

 そんな中でも肝は据わっている奴もいるようで、エフィムは自己紹介された相手を見遣る。

 身長は百七十センチ程だろうか。歳の割には随分と身長が高い。

「ああ、俺の名前はエフィム・フォン・トォバ、以後よしなに頼む」

 自己紹介が終わると、丁度いいタイミングで教室前方の戸が開いた。

「おらー席に着けぇ。ホームルームを始めるぞ」

 入ってきたのは見るからにやる気のなさそうな女冒険者だった。見れば隻腕で、それでが原因で冒険者をやめたのだろうと推測できた。

「おいそこの木偶の坊。ぼーと突っ立ってないで席に座れ」

「教官殿、まことに残念ながら俺が座れるような椅子が無いのだ」

 ッち、面倒くせえと悪態をつきながら、女性教官はまた教室を出て行った。

 暫くして戻ってくると、隻腕ににも拘らず巨大な椅子を持ってきてくれいた。

「暫くはそれで我慢しろ」

「ご好意忝い」

 エフィムは渡された椅子に座った。

「よし、今度こそ問題ねえな。それじゃあ自己紹介と行きますか」

 女性教官は今度こそと教壇に上がった。

「あたしの名前はリリー・ポミュテス。見ての通り片腕を失っちまったせいで今じゃここの教師兼教官をやっている。何か質問は?」

 質問は特に出なかった。

 当然だ、ここにいるのは殆どがエフィムと歳の差が狭い。

 まだ色々と悩んだりしている最中だろう。

「無いなら次に進むぞ。ここはさっきの校長から説明があったように冒険者を育成する学校だ。訓練中に命を落とす奴もいるし、ギルドの依頼で死ぬ奴もいる。生半可な覚悟じゃやっていけねえ」

 リリーはそこで一端言葉を切った。

 そうして全員を見渡した後、満足そうに頷いた。

「よしそれじゃあ誰もビビッていないことだし、ホームルームは終了とするか。全員起立!」

 その言葉に弾かれた様に皆が立ち上がる。

「明日は朝八時半にこの教室に集合だ。各部屋に魔道式時計があるから、アラームセットし忘れんなよ」

 そこまで言ったリリーは教室から出ようとして、忘れもんだと一人ごちた。

「言い忘れた。飯はバイキング制。場所は各施設塔の一階にある。朝食に限ったことじゃないけど、戦争だからな。気をつけろよ」

 今度こそ用事が無くなったのかリリーは教室を後にした。

 三々五々に散って行く生徒たちを横目にエフィムも椅子から立ち上がった。

 早速部屋に戻ろうとすると、先ほど話しかけてきた少年? 少女? が近寄ってきた。

「お話らしいお話じゃなかったね」

「それもそうだが、どうして俺に話しかけて来るんだ?」

「だって、キングオークを目にするなんてめったに無い事だもの」

 要は珍しいから寄ってきただけか。エフィムは変な頭痛に見舞われた。

 初等部の学生らは成年期までの時間を過ごす仲間だ。

 それが珍しいからという理由だけで傍に纏わり付かれても困る。

 ここははっきりしないといけない。

「用が無いなら俺は行くぞ」

 丁度胸の辺りまで身長があるエリクはその言葉にわたわたし始めた。

「ちょ、ちょっと待ってよ。興味本位から近づいたのは分かるけどさ、別にそれだけが目的じゃないんだ」

 何か他にも理由があるそうだ。

 エフィムは夕食まで時間もあるしエリクの言葉の続きを待つ気分になった。

「他の目的とは?」

「ああ、僕とパーティを組んでくれないかな」

 パーティとは冒険者が数人で組む集団のことをさす。専ら前衛職と後衛職のバランスをとって組むことが多い。

「まだ出会って初日だぞ? もっと吟味した方がいいんじゃないか?」

 エフィムの言葉にエリクは恥ずかしそうに俯いた。

「ほら、僕はこうなんだ。だから同じ亜人種にパーティを組んでもらいたくてさ」

 エリクが髪で隠れていた耳を出すと、そこには尖った長耳が隠されていた。

「それに僕は魔法使いを目指してるんだ。前衛職の君とパーティを組みたいと思うのは自然なことだろう?」

 前衛職を目指しているなんて一言も言っていないんだがな。

「返事を聞かせてもらってもいいかな?」

 エフィムは数瞬悩んだ。

 だが長耳族は魔法使いとして大成しているものが多い。それだけ精霊に愛されている種族ということになる。

「構わんが、一つだけ尋ねたいことがある」

「いいよ、何でもいって」

「お前は女の子か? 男の子か?」

 エリクはその言葉に傷付いたような顔をした。

「一応女の子なんだけど――」

「そうか、それなら気をつけろよ。余りほいほいと知らない男に声をかけるものじゃない」

「何で?」

「何でも何も、誰もが俺みたいに紳士然としている訳じゃないんだぞ。長耳族は高く売れるからな。奴隷商にでも売りつけられたら目も当てられん」

 自分で言っておいてなんだが、紳士然などという言葉を使う日が来るとは思わなかった。それもオークである俺が長耳族の女性に対して!

 エフィムは用が済んだとばかりに教室を出て行った。

 残された形のエリクはといえば、奴隷商に売りつけられる未来でも想像したのか、赤くなったり青くなったりと一人百面相をしていた。

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