25話
光陰矢のごとしで、またたくまに一年の月日が経とうとしていた。
その間、エフィムたちはクエストを受注しまくっていた。
今もまた、森林の迷宮中階層でオークの心臓収集クエストをこなしている最中だった。
「グルオワア!」
エフィムの金棍棒でまた一匹のオークが肉塊へと変わる。
迷宮の森林の中階層では、主な敵がオークへと変化している。
そのため、慎重深いパーティなどは他のパーティと組んで収集系クエストを受注しているのが常道だった。
しかし、エフィムたちのパーティはソロで中階層までやってきていた。
この一年で随分と成長し、学年内にはエフィムたちのパーティを知らぬものはいないほどのパーティと化していた。
「エフィム君、そろそろ数が溜まって来たよー」
オークを殲滅した後にエリクが口を開く。
「む、もうそんなに倒したか……どれ、休憩に弁当でも食べるか」
エフィムはそういうとその場にどっかりと腰を下ろした。
「賛成だね。お腹がペコペコだよ」
「ふん、朝から狩り続けていれば当然だ」
ラインとゼルブもそういってその場に腰を下ろす。
「あー、僕も食べる!」
魔素に還っていったオークから心臓を採取していたエリクも続いた。
今日の弁当は日替わり弁当だった。から揚げがメインの美味しい弁当だ。
「エリク、心臓の数は規定数に達したか?」
弁当を食べながらエフィムはエリクに問うた。
エリクはその言葉に道具袋を暫くあさっていた。
「……うん、規定数に達してるよー」
エリクの返答にエフィムは満足そうに頷いた。
「それじゃあ、弁当を食べ終わったら帰還するか」
賛成の声が唱和された。
中階層ともなると出現する魔物やモンスターもそれに応じて強くなる。
エフィムたちは中階層からの帰還の途中にそのモンスターに手を焼いていた。
「グルルル」
低い唸り声を上げてモンスター――迷宮狼を威嚇しているのはゼルブだ。
迷宮狼は全長三メートルほど。体の大きさに似合わぬ俊敏性で初心者殺しの異名をとるモンスターだった。
その迷宮狼の群に運悪く当たってしまったのだ。
「グオオオ!」
ゼルブが気合一閃バスターソードで迷宮狼を切り裂く。
「キエヤ!」
ラインも負けじと神速突きで迷宮狼を穴だらけにしていく。
意外にも苦戦しているのはエフィムだった。
「くそ、いい加減当たれよな!」
エフィムが金棍棒を振るうが迷宮狼はひょいとそれを避けてしまう。
「だあああ! エリク、魔法で援助を頼む!」
「りょーかい」
エリクがファイアーボールで迷宮狼の足を焼く。
それに併せてエフィムがその頭を金棍棒で粉砕する。
「くそ、すばしっこい奴は苦手だ」
エフィムが思わず愚痴をもらす。
「それもそうだよね。エフィム君攻撃遅いもん」
エリクがそういいながら魔法で迷宮狼を焼き殺す。
「しょうがなかろう。俺だって改善できるものなら改善したい」
エリクの言葉にエフィムが返す。
丁度そこで迷宮狼の殲滅が終わった所だった。
「ふうー、俊敏なやからはどうにも苦手だ」
エフィムは愚痴った。
そして場は低階層に移る。
その時だった。
「た、助けてくれえ!」
男の叫び声だった。
ラインが鋭く槍を構える。
「エフィム、どこだい?」
鼻をフゴフゴさせるエフィム。
すると、直ぐに血の臭いが鼻を突いた。
「こっちだ!」
エフィムを先頭に四人は駆け出した。
暫し後、エフィムたちが駆け寄ってきた場面は凄惨を極めるものだった。
蟻とゴブリン種に挟み撃ちにされたのだろう。初等部のパーティらしき面々が捕食されているところだった。
「エリク! 魔法を頼む!」
「うん! ファイアストーム!」
エリクの魔法が炸裂する。
可哀想なことだが、捕食され生還が絶望てきな生徒も一緒に焼き殺される。
「ライン、ゼルブ、いくぞ!」
おう、と二人は唱和した。
エフィムたちは先ずは三十匹はいるであろうジャイアントアントの群から殲滅することにした。
「グルオアア!」
エフィムの金棍棒が振るわれる度にその数を減らしていくジャイアントアントたち。
「ケエヤ!」
「グアアア!」
ラインやゼルブも後に続く。
最早ジャイアントアントなどはエフィムたちの敵ではなかった。
「ファイアーストーム!」
エリクはゴブリンたちを焼き払っている。
「た、助かりました」
憔悴しきった顔で言うのはどうやら先ほどの助けを呼んだ生徒らしい。
「礼なぞ後でいいからさっさと逃げろ」
エフィムはジャイアントアントの頭を潰しながら言う。
「は、はい。お前達、撤退だ!」
生き残った数名を引き連れて場を後にする初等部の生徒たち。
さて、格好付けはしたが大丈夫かな?
エフィムたちも中階層の連戦で疲れがたまってきている。
いくら最早格下とはいえ、油断や慢心は死を招く。
「グオオオ!」
「ケエヤ!」
「アイシクルエッジ!」
だが、そんなエフィムの心配もどこ吹く風でパーティメンバーたちは獅子奮迅の活躍で敵を殲滅していく。
杞憂だったな。
エフィムは一人安堵するのであった。
俺も集中するか。
エフィムの金棍棒が振るわれる。
クエストが終わり、夕食時のこと。
その場で驚くべき単語が飛び出ていた。
「大海嘯だって?」
ラインが驚いた用に口を開いた。
「うん、何だかまた魔物の動きが活発になってるらしいの」
話題を提供したエリクが不安そうに言う。
「だからって、ついこの間大海嘯を未然に防いだばかりじゃないか?」
ラインが尤もなことを言う。
確かに初等部の折に大海嘯を未然に防いだばかりだ。
それが十年と経たないうちに再び起きるとは考え辛い。
「時期が重なったんじゃないのか?」
会話にゼルブが混じる。
「大海嘯は五十年や百年に一度の災厄だ。それが時期悪く重なっておきたのなら納得できる」
エフィムはその言葉に納得した。可能性の高い話だ。
「エリク、その話はどこで?」
エフィムがエリクに問いかける。
「職員室に用があったときに小耳に挟んだんだ」
教官たちの話か、益々現実味を帯びてきたな。
「皆、ありえる話だ。明日は講義を聴きに行こう。ついでにリリー教官から情報を引き出せれば御の字だ」
エフィムの言葉に三人は頷いた。
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