表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

高校教師の恋(1)

 失恋で死ぬことになるとは、思わなかった。臼井道長はそう思った。生まれてから28年、俺は本当に女にモテていなかったのだと気が付いた。

 小6のとき男としての本能が芽生えてから、好きな女子には積極的にアピールしてきたつもりだ。優しく接して、話を聞いてあげたり、ときにはお願い事もちゃんと聞いてあげた。自分からデートに誘うこともあった。

 顔も不細工ってほどでもないし…頭も悪くない。

 俺は高校教師だ。

 いわゆるエリート。

 でもまあ…スタイルが悪いのは自覚があったから、服には少し金をかけていいのを着ることにしていた。太らないようにも気をつけた。最近、少し腹が出てきたが服でなんとかごまかせる。

 つまるところ俺は…自分ではまあまあイケてると思ってたんだ。


「え…カフェ…いいよ、じゃあ臼井がおごってね」

 テーブルに肘をついていた彼女は、甘えた声で言うと、上目遣いに俺の目を見つめ返した。

 彼女が目を伏せる度に、マスカラを塗ったまつ毛にドキッとさせられる。斜め前髪の顔を包むような、ボブヘアが小さい顔をより小顔にみせている。

 小柄だが色白で肌が透き通るように白い、同級生だけど22、3くらいにしか見えない童顔だ。今日は体のラインがはっきり出るレモン色のセーターに白いふわふわのシフォンスカートで、その服はアイドルのような可愛い彼女によく似合っていた。

 大学のゼミの飲み会だ。

 社会人になってからも、年に2、3回くらいは、こうして集まったりしている。

「臼井って、おしゃれだよね…このシャツも可愛い~、似合ってる!」

「ああ、これよく行くセレクトショップで買ったんだ。今度一緒に行こうよ!」

 彼女はにっこり笑って頷いた。

 首を少し傾けて、小動物のような瞳で俺を見つめている。

 かわいいな…。

 俺は彼女との未来を想像する。

 ――はじめてのデート。

 ――はじめての夜。

 ――彼女へのプロポーズ。

 両親には、どんな風に…紹介しよう。

「私さあ~あの人と気が合わないんだよね、あの顔みると…なんかムカつくし…ゼミの飲み会にも来ないでほしいよ」

 彼女はゼミの仲間内で癒し系美人と評判の、長身の女を見た。両脇に男がいて、身振り手振りをまじえて楽しそうに話している。

「さっさと結婚して、子供でも産めばいいのに~」

 その女は昔から人気があったが男みたいな話し方の女で、俺にはどこが癒し系なのかわからない…と常日頃から思っていた。

 俺が冷めた目で、その女を見ていると、俺の視線に気づいたのか、こっちに顔を向けて女は、にこっと微笑んだ。

 それを見た隣に座る愛する彼女が、その女から…さっと視線を外すのを見て、彼女の敵だと心得た。俺は…無表情で女を見つめ返す。

 バカ女め! 俺はお前を軽蔑しているんだ。

 敵は不思議そうに首をかしげていたが、すぐに顔を背けて、また周りに連中と楽しそうに話しはじめた。

「私、今度はカクテル飲みたいな。ねえ、臼井のコップも空いてるよ。次、何飲む?」

 彼女はドリンクのメニューを開いて、俺に見せる。

 白い頬がキラキラ輝いている。

 彼女は天上より舞い降りた…天使だろうか?

 彼女は可愛い。

 ――結婚したら……新居はどこにしようか?


 初めてのデートの日は、映画やドライブではなく、

 彼女の家の近所の、居酒屋だった。

 二人で美味しい料理を食べながら、おいしいお酒を飲んだ。楽しい時間だった。お酒が入って、彼女の頬や首、鎖骨の辺りが、ほんのり赤く染まっている。

 胸が熱くなって、ぎゅっと締まるような感覚に襲われる、彼女に触れて抱きしめたくなった。


 店の外に出ると、夜の冷えて湿った空気が、体の熱を奪っていく。

「うわぁー! 寒い~!」

 彼女は甲高い声をあげて、体を縮めてコートの前を両手で合わせる。

 胸の鼓動が、速くなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ