♯1僕、バイト中。
空は青く澄み渡り、雲は白く悠々と流れ、お日様は素晴らしく程良い今日。
緑豊かで小さくて可憐な野の花が咲いてたりするピクニック日和な森に、僕、雨宮磨白はいた。
何をする為か?バイトをする為である。
どんなバイトか、いやいやそれより前に4人の素晴らしい、ええ本当に素晴らしく頼りになるバイト仲間だ。
「優しい俺様がもう一度だけ言ってやろう」
口調も目付きも大変素敵、黒髪赤目、銃刀法完全無視両刃大剣所持俺様男ブラッドさん(中二病的偽名、多分)、
「大変申し訳ないんだけど、ね」
モデル真っ青、素敵スタイルの金髪青目、やっぱり銃刀法完璧無視の二本レイピア装備胡散臭い美形男アサギさん(偽名と自己申告されづみ)、
「ぼくたちお仕事しに参らせていただきました」
花の顔、小鳥のさえずり、亜麻色の髪に菫の瞳、だけどファンタジーな杖から科学じゃ説明できないいかがわしい何かを出してる美少年シオン君(本名はひーみーつーだそうで、つまりは偽名)、
「よっし、ましろん!あばれるぜ!!」
黒白メッシュ頭にピンクの目、西部のガンマンも真っ青な二丁拳銃ぶっ放し僕を某かゆみどめみたいなあだ名で呼ぶパンク男アッシュ(一応といっていたからこれも偽名)、
とまあ個性豊か、かつミステリアスな合計4人。
だからどんなバイトか?
お客様が毎日違って・・・・・・まあ今日でいえば目算20人、皆様明らかに堅気ではいらっしゃらないお顔立ちで、ついでに言えば斧やら鉈をおもちな方々。
だからどんなバイトか?
正直に言いましょう、なにしてるんだかまったく分かりません!
分かっているのは、何故かいつも大剣薙ぎ、レイピア刺突し、杖から何からぶっ放され、拳銃どんぱちし始めること。
「行け!下僕1号、シャイニングウィザードっ!!」
と暴君な先輩の指示には、
(どうせその、)
例え沢山の他のお客様が襲いかかってこようとも、その間を右に左に避け時にいなしながら駆け抜け、
(技の名前の)
指示通りのお客様が繰り出してきた両手持ちの大斧の斬撃が怖くてもサイドステップで避けかわし、
「ごめんなさいっ!」
(響きが気に入っただけでしょう!ブラッドさん!!)
と内心は不満を、口では謝罪を口にしつつ、
「シャイニングウィザード!!」
即座に対応すること位。
それが例えプロレス屈指と名高い必殺技にして大技のシャイニングウィザード、平たく言えば真空飛び膝顔面蹴りで、「行け」の時は一番強い奴を狙えと言われていて、ついでに手加減なしな僕の一撃が相当痛いと知っていても、だ。
顔面に膝がめり込む非常に生々しい音と嫌過ぎる感触に、
(僕は、普通の高校生…)
眉間にエベレストを作りながら、
(……だよなあ、多分今も)
誰ともなく、自分自身に問いかけた。
事の始まりは、3週間前である。