真実とは
――――ユキ。
助けられなかった悔み、ユウは深き闇の底へと落ちる。奴の言うとおり世界を救えば、ユキも救えるのだろうか。
それが正しいのだろうか。
それが真実なのか?
――――俺は、お前を……!
主よ。
闇の底で声が聞こえる。
ふと眼を開ければ、闇の底に光がさして、ユウは眩さに目を見開いた。そこには真っ白な何かが暗闇に浮かんでいた。
それは、どこかなつかしかった。
――――ハク……。
主よ。お前が望んだのは、世界を救う事か?
――――違う。だけど、アイツが世界を救う事で、ユキを救えるのなら、俺は。
そうではない。
かつて告げたはずだ。
この世界に真実などはない。
お前の言う世界を救う事と、あの男がいう世界が救うということ、全て本当に同じことか?
本当に、あの男は世界を救うのか?
あの男が、お前の言うマナを見捨てたと、本当に考えるのか?
お前が間違っているのか?
どちらかが正しい、そんな事が存在しえるのか?
――――あ……。
問いただせ、お前は本当に間違っているのか。そもそも正解の基準など存在するのか。
――――俺は……。
お前は単に相手の価値観が、自分より劣っていると、自分を否定したんだ。
でもそうではない。
誰もが独立した生き方をしている中、どちらかが正しことなんてありえない。なぜなら誰もが全身でこの宇宙で生きているからだ。
ならば彼の者が見ている世界と、此の者が見ている世界は、全く違う。
それなのに、お前は相手の世界に自分自身を置く。
自分自身が死に物狂いでみつけ出した【真実】を捨て去って。
女を見捨てた?
違う。
お前は自分自身の意志で一人の女を選んだ。
それがお前の罪?
違う。
それは他者が決め付けた言い訳に過ぎない。
お前はお前自身の【眼】で世界を見てきた。
そうして積み上げた記憶と思い出は、お前にとっての全てだ。
それこそがお前の【世界】だ。
他人の入る余地など、どこにもない。
お前はようやく、この世界をこの【眼】で見たんだ。
―――――ユキ……大好きなユキ。いつも一緒で、いつも手を繋いで。
他人の価値観に依りすがるな。
それは甘えだ。
自分の価値観を相手にぶつけろ。
どれだけ打ちのめされようと、どれだけ否定されようと、バカにされて下を向くようなことをするな。
戦え。
相手を圧倒しろ。
自らの為すべきことを、相手よりも強く前に進んで行え。
お前に敷かれた道はない。
あるのは獣道。
そしてその道に立つのは、たった一人。
お前だけだ。
――――ユキ……ユキッ!
あの男が、その女を救うのではない。
誰でもない、お前自身がその拳を掲げるのだ。
――――俺が……俺がユキを助ける!
さぁ行け。
その身体が滅びるのなら、我が真なる身体を貸そう。
立ち向かえ。
我が力と共に世界を滅ぼしてでも、自らが選んだのなら、その暗き孤独の道を進め。
行く道を退くな。
壁を砕け。
突き進め。
戦え。
奏夜ユウ……!
「グォァアアアアアアアアア!」
暗闇にこだまする咆哮が、真なる獣を呼び覚ます。
さぁ神よ。
かつて死した旧き神よ。
見よ。
お前がかつて否定した【獣】が眼を覚ますぞ――――――
―――――グォオオオオオオオオオオオオオオオッ




