【背徳ノ街】―---脆ク崩レル事象平行線
短めです
――――ユウ君。これから帰るの?
何も残らなかった。
街は崩れ始め、景色は夕焼けのまま固定された。道路に人はおらず、車はいくつも横転したまま動かなくなった。
――――私? 私は紫苑院ユキッ。変な名前でしょ。
――――よろしくね奏夜ユウ君。ユウ君って呼んでいい?
「……ああ」
人の気配はない。
アスファルトには人がいたであろう、無数の影が焼きついていた。
聞こえるのはビルの倒壊していく音。
そして、俺の足音だけ。
「……皆」
――――おらんよ。最初からどこにも。
「……」
――――この世界は最初から作られた世界だ。世界を滅ぼし、新たに一人の男の意志によって生み出された宇宙。
「造り物……」
――――全ての存在、全ての事象はもろく、簡単に消えさる。それは【死】という事象すら奪い去って、全て消え去っていく。
「だから、誰もいない……」
―――――【人】が望んだ世界だ。やがてお前の一呼吸で、宇宙は崩壊を始めるだろう。
「どうすれば……」
―――――お前はこの世界に何を望む?
「……」
思い出すのは、大切な幼馴染の声。
―――――エヘヘェ、じゃあ私の事もユキって読んでユウ君ッ。
―――――家どこ? 一緒に帰ろうッ、私の家案内するねッ
「ユキ……」
記憶が溢れだして胸を締め付ける。
心が吐き出されそうだった。
悪夢だった。
崩れ始める街を見つめながら、崩壊する景色を見つめながら、とめどなく涙ばかりが溢れた。
誰かがやってくるのを、誰かが助けてくれるのを。
―――――あ、ユウ君。今日ケーキ作ったんだッ。
―――――ユウ君……勉強見てよぉ。これじゃ同じ高校入れないんですけどぉ。
―――――え、えへへぇ……で、デートみたいだねッ。
―――――奏夜ユウッ、私紫苑院ユキは今日ここに……貴方に告白しますッ
―――――わ、私の……私の恋人になってくださいぃ!
―――――へ? へ、へ、へぇええええええええええ!?
―――――う、嬉しいっす……その、そのぉ……。
―――――こ、今後とも……よろしく、ユウ君。
「ああ……ユキ」
夕焼けが心に染みて、涙で溢れそうだった。
ユキ。
お前はずっとこんな景色を見続けたんだな。
お前は……ずっと俺を待ち続けているんだな。
誰もいない家に帰れば、リビングに三つの置手紙が置かれていた。
『今日は遅くなります。母より』
『今日は遅くなります。父より』
『今日は遅くなります。妹より』
三つの文鎮に乗せられ書かれたその置き手紙は、暗いリビングの中にあってまるで墓標のように見えた。
―――――言葉は残したか?
「ああ……いつ帰ってきてもいいようにな」
―――――なれば、行こう。
『いってくる。兄より』
言葉は残した。
最期だ。
ユキ。
―――――助けて、ユウ君……。
今、会いに行く。
次長いです




