2 夢うつつ
楽しんで頂けたら幸いです。
陰陽師にとって妖怪は『悪』。
自分たち陰陽師が『善』。
ある意味それは理であり概念である。事実、陰陽師の大半はそう言う。
だが、俺は本当にそうなのか? とずっと疑念を抱きながら過ごしてきた。
何故疑念を抱くのか。それは、俺の出会ってきた妖怪が簡単に『悪』だと割り切れない奴らばかりだったからだ。
確かに悪い奴はいる。救いようがないほどに邪悪な野心を抱き、それを叶えるために何を否定しようとする。そんな奴らを多く俺は見てきたが、それと同じくらい多くの妖怪は同族を――人を災い(わざわい)から救ってきたところを見たことがあった。
事実、俺の師匠は周りから甘いと罵りられていても俺に『善』なる妖怪がいることを教えてくれた。
だからだろう(・・・・・・)。
俺があの時、アイツを救ったのは。
アイツが俺を救ってくれたのは。
「ちくしょう……なんでだよ! 何でこんなことになっちまったんだよ! こんな最後なんて認めてたまるかよ!」
そう言って俺は、アイツを助けた。
何かに抗うかの様に。
いや、実際に何かに抗っていたのだろう。
目の前の現実を変えるために。
大事な『友達』を助けるために。
結局、手を差し出したことは間違いだったのかどうかは今も昔も『答え』が出ない。でも、きっと『答え』が出る時は来ると信じている。
ただ、それでも考え抜いて見つけ出そう。
自分なりの『答え』を。
そして、出来ることならば。
あの日を否定するような答えは出さないようにと願う。
でも、どこかの自分が語りかけている。
あの日の出来事は――、
「があっ! イッテ―!」
そんな断末魔に似た悲鳴を上げ、眠りから覚めた。
霞んだ瞳を右横に写すと、そこには握り拳を握った幼馴染である春野マツリがいた。可愛らしい容姿をしたマツリは、ポニテールにしてある髪を揺らしながら満面の笑みを浮かばせている。それが、本当に喜怒哀楽の『喜』の笑みではないことは、まだ寝ぼけている頭でもわかる。どちらかと言うと『怒』の方だ。
「おはよう、活字! やっと、起きたね!」
「おはよう、マツリ! お前のお蔭でな!」
「じゃあ、二度寝防止のためにもう一発叩き込んどいてあげるね! テレビの通販と一緒で、もう一パックのサービスみたいに」
「出来ることなら、それは勘弁して――って、本当にやるな!」
理不尽な、と心の中で叫びながら、二度寝ではなく気絶と言う眠りに入った。その後にもう一発叩き込まれたのは言うまでもない。