1 プロローグ
楽しんで頂けたら幸いです。
鋭い痛みが頭を走る。
特に何をされたというワケでもなく、本物の痛みが襲っていた。
「があっ!?」
そんな呻き声を上げながら、俺は廊下に片膝をつけた。痛みに耐えて周りに視線を向けると、同じようにうめき声を上げながら廊下に横たわっている幼馴染のマツリがいた。その隣では、担任の小麦先生駆け寄ってマツリに呼び掛けている。
俺は奥歯を強く噛み、這いずるように近づいた。
そして、俺も呼び掛ける。
「おい、マツリ大丈夫か!?」
「うぅ……いた……い……」
思っていたよりも重症だったことに、苦悶の表情を浮かばせた。
――クソッ! 無理もないか。
マツリは俺よりも強い力を持っている。それは同時に、強い感受性を持っているともいえるのだ。だから、これほど苦しそうにしていても可笑しくはない。
例えるなら俺の痛みが刃物で体を貫かれるような痛みだとしたら、マツリの痛みはハンマーにでも叩かれたような痛みだ。これくらいの差はおそらくあるだろう。
「か、活字くん……?」
いつもはへらへらとしている小麦先生にしては珍しく、気が動転した声を掛けてきた。痛みに耐えることが精一杯で頭のまわらない俺だったが、何時までもそうしているわけにもいかず見えない痛みに逆らい立ち上がる。
――妖気はあそこからか。
力の発生源を感知すると、精いっぱいの笑顔を小麦先生に向け告げた。
「俺が何とかしますから小麦先生、マツリのことを頼みます!」
「え、どういうこと活字くん!?」
校則である『廊下を走らないこと』を無視して、この痛みを与える夜兜矢怪談がいる、体育館を目指して走り出した。
読んで頂きありがとうございました。
修正中ですので、物語との矛盾がありますことをご了承ください。