The two of three
「ごらんよ、火だ」
青年が指差すと、少女は大きな麦わら帽子を少しだけ上げてその先を見る。
「『魔女狩り』だよ」
青年の声色は楽しげで、言葉を紡いだ口元は酷薄な笑みを浮かべていた。
傍らの少女はそんな青年をちらりと見やり何も言わない。
「今回は大物に挑んでいるようだね。なかなか卑怯な手を使っている」
二人のいる高台からは建物を燃やす炎は見えず、真っ黒な煙が上がるのが見えているのみだ。
しかし、青年はそれでも何かが見えているようだった。
「『彼女』は…」
「――――――――」
少女がぴくりと反応した。それを横目で確かめて青年はふっと笑う。
「狩られてしまうかな、『彼女』は」
「…さあ」
「今の『彼女』はとても弱いよ。これではどちらが元なのか分かりゃしない」
「……興味がないわ」
淡白な少女に青年は方をすくめる。
「そうだね、僕らには関係の無いことだ。――――だからさっさと『彼』を探しにいこうか」
「…はじめから、それしかないのに」
「いいじゃないか、少しは寄り道も。どうせすぐに見つかるんだから」
「……」
少女はくるりと踵を返して歩き出した。その動きに合わせて三つ編みが揺れる。
そんな様子に楽しげなため息をつき、青年は少女の後を追った。
弱く風が吹く。
青年の銀色の髪が少しだけ揺れた。