"A girl" become "two girl"
半年…どころじゃないですね。申し訳ありません。続きです。
それからのことをよく覚えていない。
燦々と刺す陽射しに煌めいた刃物を突き付けられて散々に痛めつけられて、彼らの住処に連れていかれて。
成人の儀の為に普段より倍に着飾った衣装は剥ぎ取られ、宝石は引き千切られ、身を守ろうと握りしめたフレイアは重すぎて簡単に払われてしまった。そして――――――――
「っぁあ!」
もう何度目かも分からない星が飛ぶ。痛みに呻いたけれどもう、頭を押さえられるほど手に力が入らなかった。
「うるせえ!とっとと仲間の居場所を吐けってんだよ!」
ひげ面の男が顔を赤らめてだらりとしたルルの襟ぐりを掴みあげる。
「お前みたいないいとこの餓鬼が一人で砂漠を渡る訳がねえ。仲間とはぐれたか?素直に言えば俺たちが連れて行ってやるぜ?え?」
「…ら…ない…」
仲間なんていない。たった一人で落とされた。
これから自分がどうなってしまうのか全く見えなかった。
「頭ァ、こいつマジで仲間の行き先しらねえんじゃねえですか?」
「どうやらそうみてえだな、畜生。仕方がねえ。他は諦めてこいつで楽しむとするか」
「ひゃあ!まじっすか?」
え、とルルは痛みにぼやける視界を凝らした。
頭と呼ばれたひげ面と、その手下らしき男が下品に笑ってルルを見ている。
―――あくまでこの時のルルには知識は無かった。けれど、直感が、本能が、痛み以上にがんがんと頭を鳴らす。
「…っ…!」
逃げなきゃ。でもどうして身体が動かない。
逃げないと。逃げなければ。ああでも動けない。
「楽しませてくれよお、嬢ちゃん」
どうしようもなくて咄嗟に目を瞑った。
「お邪魔しまーす」
能天気な声がその空気をぶち破る。
「だ、誰だお前は!」
ひげ面は虚を突かれて後ろを振り向いた。その向こうに誰かがいる筈なのに、ひげ面が邪魔で何も見えない。
「こんにちは、強盗に来ましたー!」
明るい少女の声がする。彼らの知り合いではなさそうだ。
「てめえ、ふざけんな!俺らの縄張りを荒らすたあ、どいつだ?」
ひげ面が声の主に迫る。危ない。そう叫ぼうとした矢先、
「『どいつ』?うーん、そうだな――――――」
少女の声が一瞬途切れた。そして。
「『魔女』かな」
痛いほどの熱が頭上を駆け抜けた。