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シャインブレイブ!  作者: finalphase
第4章 最終決戦!!
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第51話 世界が祈る

 眩い光が凜華の身体を包み込んだ瞬間、空気そのものが震えた。

 耳の奥で、透明な“何か”が揺れる。

 鈴のようで、涙のしずくのようで、ひとりひとりの祈りが混ざり合ったような、不思議な音だった。


 私は光に溶けていく凜華の背中を、ただ呆然と見つめるしかできなかった。


「凜華! やめてってば!!」

「お願い……戻ってきてよ……!」


 喉から絞り出した声は震えて掠れ、光の奔流に吸い込まれていく。届かない。


 そのとき——。


「……愚かだな、凜華」


 低く冷たい声が世界を切り裂いた。

 空間がひずみ、黒い靄が渦を巻き上がる。

 そこから姿を現したのはオルフェウス——凜華の父。


 いつもの神のような威厳は、欠片もなかった。

 今浮かんでいるのは、焦り。動揺。どうしようもない怒り。


「その光……まさか人間たちの祈りまで取り込んでいるだと? 馬鹿な……!」


 彼が一歩踏み出すだけで大地が悲鳴を上げ、深い亀裂が走る。


「やめるんだ、凜華。今すぐだ」


 けれど凜華は動じなかった。

 肩を震わせながら、静かに空だけを見つめている。


「……お父様。私は、もう……あなたの操り人形じゃない」


 震える声なのに、芯が折れる気配はまったくなかった。


 オルフェウスの表情が歪み、怒号のような声が空を割いた。


「この私を封印するつもりか……? 娘の身で……!」


 雲が裂け、風が荒れ狂い、世界そのものが軋む。

 だが、それでも凜華は一歩も退かない。


「みんなを苦しめる存在なら、私が……終わらせる」


 その言葉を聞いた瞬間、私は膝が震えた。

 怖い。怖すぎる。

(だめだよ……そんなの……)


 だけど言葉が喉に貼りついて、一音も出てこない。


 そのとき、私の肩を誰かが掴んだ。


「ひかりッ……!」


 浩平だった。

 息を荒げ、涙を流しながら、それでも凜華から目を離さず歯を食いしばっている。


「凜華ぁッ!! やめろよ……! そんな顔すんなよ!!」


 その叫びは、私よりもずっと、凜華の心を揺らすはずなのに——

 凜華は振り返らない。

 ただ祈り続ける。


 光はさらに強まり、空へと逆巻くように昇っていく。

 その光は周囲の人々の胸に触れ、祈りを呼び覚ましていった。


 目覚めたばかりの老人が崩れるように手を合わせ、

 子どもが泣きながら祈り、

傷だらけの青年が震える声で何かを天に叫ぶ。


 洗脳から解放された遥は、涙で顔をくしゃくしゃにして胸に手を当て、

 鈴木さんは静かに目を閉じ、空を仰ぐ。


 見渡す限りのすべての人が——凜華へ祈りを送っていた。


 その祈りが光となり、凜華を包み、彼女の背を押し、そして“奇跡”を形作っていく。


「……馬鹿な。人間が……こんな力を……!」


 オルフェウスが後退した。

 恐れている。

 神である自分が敗れる未来を。


「凜華ァァァ!!」


 浩平の叫びは枯れ、血を吐くように続く。

 そのたびに、胸がちぎれそうになった。


 でも——凜華はほんの少しだけ、微笑んだ。

 その横顔は綺麗すぎて、儚すぎて、目をそらしたくなるほどだった。


「ありがとう、浩平……ひかり……」


 その声の奥に、別れの覚悟が滲んでいた。


 私は反射的に手を伸ばした。


「凜華!! 行かないで!!」


 涙で視界が揺れ、伸ばした指先が光に触れた瞬間——

 すり抜けるように弾かれた。


「ひかり、だめだ!」

「戻れ!」


 浩平が私を抱き止め、後ろへ引き寄せる。


「離してよっ……! 行かなきゃ……凜華が……!」

「あれは……凜華が望んだことなんだ……ッ!」


 浩平の腕は震え、力は弱く、今にも崩れそうだった。

 それでも、その腕の必死さだけが、私を止めていた。


 凜華の祈りが最高潮に達し、風が逆巻き、

 轟音が世界を引き裂き、そして——一瞬の静寂。


 オルフェウスが光に引きずり込まれるように膝をついた。


「やめろォ……! 凜華……! 貴様……私を滅ぼす気か!」


「……お父様。私、もう迷わない。」


 その瞬間、黒雲が砕け散った。

 凜華の光が世界へ溢れ、眩しくて、温かくて、痛いほど美しかった。


 視界が白く染まり——

 そして光が薄れたとき。


 オルフェウスの姿は、もうどこにもなかった。

 空へ舞い上がる粒子が、静かに消えていくだけ。


 そして。


「……凜華……?」


 凜華の身体もまた、光の粒へと変わり始めていた。

 肩から、腕から、髪の先から——

 彼女は世界に溶けるように消えていく。


「嘘……嘘だ……やだ……やだよっ……!」


 駆け寄りたくても足が動かない。

 重力が倍になったみたいに、身体が震えて前へ進めない。


 代わりに、浩平が一歩進んだ。


「……凜華…」


 声は低く震え、涙を堪えている。

 それでも彼は微笑んでいた。

 恋人として、最後まで彼女を送り出すために。


「ありがとうな。」


 その言葉で、凜華は初めて振り返った。

 涙をこぼしながら、それでも幸せそうに笑って。


 私は知った。

 ここからが——本当の別れだ。


「みんな……ありがとう。」


 その一言が、彼女の最後の言葉になった。


 光は風に乗って空へ吸い込まれ、凜華の姿は完全に消えた。


 だけど私は胸に手を当てて思う。


(まだ……消えてない。あの子の光……ここにいる……)


 世界は静まり返り、風だけが優しく吹いていた。




【次話予告】


シャインブレイブ・最終話


 私、雨宮しずく。

 地元で一番頭が良いと言われる東雲しののめ高等学校に入学したものの、勉強は最下位。

 運動も音楽も全然だめで、周りに迷惑ばかりかける、情けない私。


 そんな私の一番の友達が、綾瀬由梨。

 彼女は勉強も運動もそつなくこなし、音楽は誰よりも得意。

 でも家庭は複雑で、心の奥には大きな闇を抱えている。


 そんな私たちには、どうしても“眩しくて手が届かない”存在がいた。


最終話 絶望の先へ


絶対、読んでね!

最後までお読み頂き、本当にありがとうございました。

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