第5話 現れた強敵!
私の放課後は、だいたい決まっている。
チャイムが鳴ったあと、荷物をまとめて、人がいなくなった廊下をひとりで歩いて帰る。
誰かを嫌っているわけでも、避けているわけでもない。ただ、気づけばいつもひとりだった。
その日も同じように下校しようとした瞬間――。
「ねぇ、あんた、ぼっち?」
まっすぐな声が背中に突き刺さった。
振り向くと、そこには早乙女凜華さんが立っていた。
光に照らされた横顔は相変わらず整っていて、近づくだけで緊張するくらい綺麗だ。
「……うん。」
言葉に迷って、素直に頷くしかなかった。
すると彼女は、胸の前で腕を組みながら、少しだけ悪戯を考えているような顔になった。
「あんたに提案があるんだけど。」
「提案?」
「そうよ。」
それだけ言って、彼女は一歩つめ寄ってきた。
香水じゃない、自然な香りがふわっと鼻をくすぐる。
「今度から一緒に帰らない?
モンスターは多分、コンパクトを持ってる人間を狙ってる。一緒にいた方が何かと安心だと思うの。」
「で、でも…」
「ただし、火曜日と木曜日は無理。彼氏と帰りたいから。」
彼女はさらっと、とても大事なことのように言う。
私は思わず、なんとも言えない声を洩らした。
「う、うん……」
早乙女さんの彼氏・浩平は、月・水・金は部活で遅い。
だから、彼女と帰れるのは火曜と木曜だけ。
それ以外の日は、私と帰ってくれるらしい。
――そんな日が、本当に来るんだ。
胸がじんわり熱くなる。
そして迎えた金曜日。
私は人生で初めて、早乙女さんと並んで校門を出た。
少し緊張していたけど、隣を歩く彼女は思ったより自然で、静かな距離感が心地よかった。
……が。
その穏やかな時間は、ほんの数秒しか続かなかった。
「出た……!」
緑色の甲殻、鎌のように鋭い腕。
巨大なカマキリのようなモンスターが、私たちの目の前に突然現れた。
「ひかり、行くわよ!」
「うん!」
私たちは息を合わせるようにコンパクトを構えた。
「光よ、私に力を! プリズムシャインブレイブ!」
「光よ、私に力を! マジカルシャインブレイブ!」
光が弾け、全身が熱に包まれる。変身が解除されるまでのあの数秒が、いつも少し怖くて、少し誇らしい。
✦✦✦
「行くわよ!」
「負けない!」
モンスターはすぐに鎌を振りかざしてきた。
空気を裂くような鋭い音。
その一撃を、私たちはギリギリでかわす。
「プリズムシャインブレイブ!」
早乙女さんが繰り出した光の矢。
だが――。
シャキィン!!
モンスターは鎌で容易く切り裂いた。
「嘘……!」
私も続けて弓を放つ。
「マジカルシャインブレイブ!」
しかし――。
シュッ!
またも切り裂かれた。
「そんな……私たちの攻撃がまったく効かないなんて……!」
「このモンスターの鎌、何でも切り裂くみたいね……!」
モンスターはさらに勢いを増し、こちらを追い詰めてくる。
私は必死に攻撃し続けた。
だけど、どれもこれも通じない。
すると――。
カッ。
早乙女さんの瞳が赤く輝いた。
彼女の特殊能力、“分析眼”。
視界には敵の弱点が色で浮かび上がる。
「……見えた。」
早乙女さんの声はとても静かで、逆に頼もしく聞こえた。
「ひかり、もう一度必殺技を放って!」
「う、うん! マジカルシャインブレイブ!」
光の矢を放つ。
モンスターはまた鎌で切り裂こうとする――その瞬間!
「そこよ!」
早乙女さんは音もなく背後に回り込み、弱点“背中”へ狙いを定めた。
「プリズムシャインブレイブ!!」
ドォン!!
光が弾け、モンスターは断末魔とともに爆散した。
✦✦✦
変身解除後、私は溜まっていた息を吐き出しながら近づいた。
「ねぇ、早乙女さん……」
「何かしら?」
「今思ったんだけど……私のこと、おとりに使ったでしょ?」
「何のことかしら?」
「ひどいよ! 仲間をおとりに使うなんて!」
「でも倒せたんだからいいじゃない。作戦通りよ。」
彼女は涼しい顔で歩き出す。
だけど、数歩進んだあと――ふと足を止めた。
しばらく沈黙。
そして、振り返って。
「……ねぇ、あんた。今度、うちに遊びに来ない?」
「えっ!?」
「別に嫌ならいいけど。ほら、一応、仲間なんだし……」
あからさまに素直になれていない言い方だけど、ちゃんと優しさが滲んでいる。
「行く! 行きたい!!」
「……ほんと単純ね、あんた。」
でも、その口元はほんの少しだけ緩んでいた。
【次話予告】
「早乙女さんちに行くの楽しみだなぁ!」
「楽しみにするのは勝手だけど、大したものなんてないわよ。」
――その言葉を信じて訪れた私が見たものは。
天井から下がる巨大なシャンデリア。
高級ホテルみたいな玄関。
ずらりと並ぶブランド物のドレス。
机の上には宝石みたいに輝くお菓子。
どう見ても“大したもの”しかないんだけど!?
ミステリアス美少女・早乙女凜華の私生活。
その正体は……やっぱりお嬢様だった!
第6話 お嬢の家!
――必ず、読んでね!
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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第6話は明日21時に投稿します。




