第44話 作戦会議!
「ところで姫さん、オルフェウスが今までの敵と違うってのは、どういうことだ?」
鈴木が腕を組み、難しい顔で凜華に問いかけた。けれどその声音には、いつもと変わらない飄々とした軽さが混じっている。怖がらないんじゃない、怖がれないだけだ。鈴木という男は、そういう不器用な優しさを持っている。
対して――凜華は、僅かに眉を寄せていた。
「圧倒的な力を感じます。すべてを滅ぼしかねないほどの……」
彼女の声は珍しく低く、重い。不安を隠さず、でも弱さを見せまいとするような硬さが滲んでいた。
「具体的に言えば、ファイティング・グロー10体の“100倍”はあります。正面から戦えば、誰一人として無事では済まないでしょう。あの戦いですら、大切なものを失ったのに……」
凜華は拳を握った。沈黙が落ちる。
「それに、彼の弱点を分析しましたが……明確な弱点はありません。攻撃力・防御力・耐久力、すべてが規格外です。」
「……んじゃどうすんだよ。」
鈴木の言葉は、あまりにも素朴で、だからこそ胸に刺さる。
凜華は一瞬だけ視線を落とし、唇を噛んだ。
こんな彼女は、本当に珍しい。普段は誰より強く、誰より真っ直ぐで、誰より先頭に立つ。なのに今は――迷っている。
その姿が、逆に私の胸をざわつかせた。
「まずは、みんなで正面から立ち向かうことを考えようよ。」
勇気とも無謀ともつかない言葉を口にすると、凜華は呆れたようにため息をついた。
「はぁ……ほんと、あんたらしい発想ね。」
呆れてるくせに、ほんの少しだけ笑ってる。
その後、真剣な目になり――
「けど、今の私たちじゃ、一斉に挑んだところで勝率は0%に近いわ。」
静かに、はっきりと断言した。
鈴木が、ぽんと手を叩く。
「じゃあさ、寝てるところを後ろから襲うってのはどうだ? いくら強くても睡眠は必要だろ。」
アホみたいな案――だけど、誰も即否定できなかった。いや、むしろ私はちょっと「確かに……」と思ってしまった。
そんな空気を破るように、遥がくすっと笑う。
「ふふっ……如何にも鈴木さんらしい発想ですね。」
「遥、あんた、なんでそんな余裕そうなのよ。」
凜華が鋭い声でツッコむと、遥は慌てて手を振った。
「す、すみません。つい……! でも……こういう時こそ、空気が少し軽くなるのって、悪くないじゃないですか。」
その一言に、理由の分からない安心感が広がる。
遥は、笑ってくれるだけで救われる――そんな人だ。
凜華は気を取り直すように姿勢を正し、言葉を続けた。
「確かに、奇襲はありえるわ。けれど――もし仕留め損ねたらどうなると思う? オルフェウスは怒りのままに世界中を――すべての人間を滅ぼしかねない。」
背筋が冷えるような静けさが走った。
「それに、彼は常に“オートバリア”を張ってるの。敵意を向けた瞬間、自動で防御が作動する。」
「早乙女先輩、やけに慎重ですね。何か作戦を考えているんですか?」
遥の問いは穏やかだけど、本質を突いていた。
凜華は言葉を詰まらせ――小さく息を吐く。
当然だった。
ファイティング・グローとの戦いで、凜華は大切な人――ルナを失った。
そして今、意識がオルフェウスに支配されていないのは、シャインブレイブの私と鈴木の二人だけ。
凜華の家族も、恋人の浩平も、仲間も。
みんな、敵の支配下にある。
少しでも判断を誤れば、彼らの命が消える。
慎重にならざるを得ない。
「……私は、人間たちを守ることを最優先に考えたい。だからまず、どうにかして“みんなの意識を取り戻したい”の。」
その声は、震えていた。強がりでも威勢でもなく、本物の「恐れ」と「願い」が同居した震えだった。
「お嬢さん、どうしちまったんだ。ずいぶん大雑把な言い方するじゃねえか。もっと理知的な人間だと思ってたんだがな。」
鈴木が肩をすくめる。だがそれは責めているわけじゃない。
むしろ――励ましだ。
「でも、気持ちはわかるよ。凜華にもいるんでしょ、大切に守りたい人が。」
私の言葉に、凜華は一瞬で真っ赤になった。
「そ、そんなんじゃないわよ!!」
その反応の可愛さに、場の空気がふっと緩む。
ほんの一瞬だけど、息がしやすくなった気がした。
――そんな空気の中で、私たちは改めて顔を見合わせた。
そして、作戦を固めた。
それは――あえて“洗脳されたフリ”をすること。
その裏で少しずつ人間たちの意識を取り戻し、
支配が完全に解けたその先で――
私たちと全人類、総力戦でオルフェウスに挑む。
無謀。
場当たり的。
希望を見たいだけの作戦かもしれない。
でも。
私たちは、その方法しか選べなかった。
いや――
たったそれだけでも、全員の目が前を向いていた。
私たちは互いを見つめ、静かに頷いた。
この作戦に――すべてをかける。
【次話予告】
「君たちの作戦は――すべて読み切っている。」
不気味な笑みを浮かべながら、オルフェウスが私の前に現れる。
洗脳を解こうと奔走する私。
その前に現れた彼の狙いは――“コンパクト”。
逃げ場はない。
そして戦うには、あまりにも力が足りない。
それでも私は、立ち向かう。
第45話 私vsオルフェウス!
――必ず読んでね!
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