第4話 お似合いカップル!
私の名前は早乙女凜華。自分で言うのも変だけれど、世間一般で言うところの“お嬢様”らしい。
家は昔から続く由緒ある家系で、何かにつけて格式や礼儀を求められてきた。だからなのか、学校では「姫」とか「姫さん」とか、最近では「お嬢さん」なんてあだ名までつけられている。
周りは勝手に持ち上げて、勝手に憧れて、勝手に期待してくる。……まあ、スタイルはいいし、顔も整ってるって言われるしね。自覚はある。悔しいけど。
でも、そんな外見をほめられる度に、胸が少しだけ冷たくなる。
人って、可愛いとか綺麗とか、そういう“見てすぐにわかるもの”にしか注目しないのよね。
私の人間性までちゃんと見てくれる人なんて、本当に少ない。
そういう人がいるとしたら――彼氏の浩平くらいだ。
浩平は、イケメンで背が高くて人当たりも良くて、運動神経も抜群で、勉強までできる。まるで少女漫画から抜け出してきたみたいな男の子。
時々空気読めないけど、そんなところも含めて私は彼が大好き。
ちゃんと、私の“中身”の方を見てくれる。甘えられる私を、呆れながら受け止めてくれる。
……これ、普通に幸せ者じゃない? 私。
今日は久しぶりに彼と一緒に帰れる日で、しかも雨。
傘ひとつで肩寄せ合って帰るなんて、もう……胸がずっときゅうってしてる。
滴る雨の匂い、彼の制服についた柔軟剤の香り、傘の下で響く静かな雨音――全部、私だけの特別な空間だった。
そんな時だった。
道の真ん中に、白い子猫がちょこんと座っていた。まだ子どもみたいで、細い尻尾を揺らしながら私たちを見上げてくる。雨に濡れた毛が小さく震えていて、その姿が愛らしすぎた。
「この猫、可愛いな。ずっと見てたいくらい。」
浩平がぽつりと言った。
……待って? ちょっと? 彼氏の前で可愛い猫を見せられる彼女の気持ち、分かる?
「ねぇ、浩平くん……?」
「ん?」
「あのさー、あんた、彼女の私と猫どっちが大事なのよ?」
「猫!」
「……」
……はぁぁぁ!?
涙目でふくれっ面をしてアピールすると、浩平は苦笑して肩をすくめた。
「分かった分かった。泣くことないだろ。少しからかっただけだっつーの。」
「もうっ!」
「ほんとに甘えん坊だなー、凜華は。」
「はぁ? 誰が?」
言い合いしながら歩く時間が、たまらなく愛しい。
付き合ってもう1年近いのに、いまだに彼と話すと胸がドキドキしてしまう。
甘えん坊って言われたけど……まあ、否定はできない。彼の前だと、どうしても素直になれなくて、逆に甘えてしまうんだ。
こんな幸せが続けばいいのに。
そう願った瞬間――世界がきしむような、嫌な気配が走った。
視線を向けると、緑色のバッタのような形のモンスターが雨の中に立っていた。
足をカチカチと鳴らし、こちらをじろりと見据えている。
「凜華、下がって。」
浩平が咄嗟に私を庇うように前に出る。
突然のモンスター出現なのに、怖がりながらも私を守ろうとする姿勢に胸が熱くなる。
……ほんと、ズルい男。好き。
けれど、そのままじゃ彼が危ない。
「ごめん、浩平君……下がって!」
私は彼の制服の裾をぐいっと引っ張った。
戸惑う彼を背中に押しやり、ポケットからコンパクトを取り出す。
「光よ、私に力を! プリズムシャインブレイブ!」
光に包まれた身体は、いつもの私ではない。
水色の装飾が揺れる、美しい戦士――プリズムシャインブレイブ。
驚きで固まっている浩平を背に、私はモンスターに向かった。
「プリズムシャイン――ブレイク!」
弓矢が水しぶきのように輝きながら放たれ、モンスターの中心を貫く。
爆散した光の破片が雨に溶けて消えた後、変身を解除して彼の方を向いた。
「その……」
不安で震える声が、自分でも分かった。
軽蔑されたらどうしよう。怖がられたらどうしよう。
そんな弱さが胸を締め付ける。
だが、彼は優しく笑って言った。
「たとえどんな秘密があったとしても、俺は凜華のことが大好きだ。」
……ああもう。反則。
「はいはい。分かったよ。ほんとに仕方ない子だなぁ、凜華は。」
照れ隠しでそう言ったけれど、次の瞬間には彼の胸に飛び込んでいた。
「凜華、周りの人目もあるし、そろそろ……」
「んん。もう少し。」
「しょうがないなぁ。もう少しだけだよ。」
雨音が優しく打ちつける中、彼の腕の中は驚くほど安心した。
変身して化け物と戦う私を、全部ひっくるめて受け止めてくれる――
そんな彼氏がいる私は、本当に幸せ者だ。
【次話予告】
「早乙女さん、提案って何?」
「今度から一緒に帰らない? モンスターは多分、コンパクトを持ってる人間を狙ってる。」
早乙女凜華と帰ることになった私の前に、またもやモンスターが現れる。
「そんな……私たちの攻撃が、全く効かないなんて……!」
「あのモンスターのカマは、何でも切り裂いてしまう!」
第5話 現れた強敵!
――必ず読んでね!
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第5話は3分後に投稿します。




