第39話 美少女の覚醒
マルバスの剣が凜華に向かって振り下ろされる――その刹那。
凜華の全身が、夜空の半月よりも強く、神々しい光で包まれた。
光は一瞬にして爆ぜるように広がり、マルバスの手から剣を弾き飛ばす。
鋼鉄の刃はくるくると宙を舞い、泉脇の地面に突き刺さった。
その異変を離れた場所から見ていたオルフェウスは、静かに目を細めた。
「……ついに神の力に覚醒したか。やはり、私の娘だ。」
皮肉にも、マルバスが凜華を“本気で葬ろうとした”その圧倒的殺意が、彼女の潜在力を強引に目覚めさせてしまったのだ。
光が収束する頃には、凜華は自らの力をある程度制御できるほどに覚醒しており――次の瞬間、風を切る轟音と共に、彼女は私の前へ瞬間移動していた。
そして、私の首を締め付けていたファイティング・グローへ、躊躇の欠片もない強烈な拳を叩き込む。
金属音を響かせてロボットは怯み、伸ばしていた腕を緩めた。
その瞬間、私は地面へと崩れ落ちる。
「凜華、ありがとう……。また助けてもらっちゃったね……」
「当たり前でしょ。あんたに死なれたら困るんだから。」
お互い息が荒いまま笑い合い、ハイタッチを交わす。
その温もりに、命が戻ってきた実感が湧いた。
一方その頃。
鈴木祐介は少し離れた地点で、別のファイティング・グロー複数体と激戦を繰り広げていた。
すでに息は限界、体力は底をつきかけている。
しかし彼は――折れなかった。
「……人間の力を、侮らない方が良い。」
渾身の気迫でライフルの引き金を引く。
ババッと連射された弾丸が、ファイティング・グローの頭部と胸部の要所を正確に撃ち抜く。
システムはデータ更新中で無防備だったのだろう。
火花を散らして2体が崩れ落ちた。
魔法でもなく、変身能力でもなく――
純粋な“人間の武器”で突破したのだ。
鈴木の呼吸は荒いが、決意だけは鋭く輝き続けていた。
「やっと本気を見せてくれたみたいだね。」
マルバスが落ちていた剣を拾い上げ、ゆっくりと立ち上がる。
その背後では、新たな8体のファイティング・グローが起動音を鳴らしながら並び立っていた。
「ひかり、行くよ!」
「うん!」
私たちは距離を詰め、また肩を並べる。
ファイティング・グローたちが迫ってくる――その瞬間。
凜華が静かに、ただ鋭く睨みつけた。
次の瞬間、空気が揺れたかと思うと、ロボットたちは一斉に後方へ吹き飛ぶ。
「なっ……」
マルバスが咄嗟に剣を凜華へと投げつける。
高速で回転しながら飛ぶ刃は、普通なら避けられない。
私は反射的に叫んだ。
「凜華、危ない!!」
しかし彼女は逃げず、怯まず――
飛んできた剣を、ただ“睨む”だけだった。
刹那、剣が凜華の目の前でぴたりと停止し、重力に勝手に従うようにストンと真っ直ぐ地面へ落下した。
「バ、バカな……。これが……オルフェウス様の血を引く者の力……!」
これまで冷静だったマルバスでさえ、本気で目を見開いた。
凜華はまっすぐ前に歩き、手を翳す。
すると、残っていたファイティング・グローたちが次々と後方へ吹き飛ばされる。
その勢いのまま、凜華は弓を構えた。
「プリズルミナスブレイク!」
放たれた光の矢が三条の軌跡を描き、ファイティング・グロー3体の上半身を一瞬で粉砕した。
金属片が夜空に散り、その後で――凜華は振り返って私の手を取った。
その手は、驚くほど暖かい。
指先が触れるだけで、不安が消えていく。
凜華が静かに私の目を見る。
その視線に込められた“意図”を、私は自然と理解した。
深く頷くと、私たちの繋いだ両手が淡い光を放ち始める。
光は強まり、やがて――
虹色に輝く弓矢が空中に形成された。
「ひかり、せーのでいくよ。」
「うん……行こう!」
私たちは並んでその弓を構える。
魔力が放たれる瞬間、風が舞い上がり、夜空まで震えた。
「スペシャルレインボーブレイク!!」
虹色の矢が一直線に放たれ、残るファイティング・グローを次々と貫き、爆発の連鎖を生み出した。
鋼鉄の身体は、触れることすら許されなかったように粉砕される。
爆発が静まり返った時――マルバスの姿は、どこにもなかった。
「逃げた……?」
「ちょっと、離れるね。」
凜華が照れ隠しのようにそっと手を離す。
それが妙に可愛くて、私もつい笑ってしまう。
ふたりで無意識に跳ねるように喜んだ。
――しかし。
すぐに、大事なことを思い出す。
私たちは勢いよく振り向き、声を揃えて叫んだ。
「遥は!? ルナはどこ!?」
戦場の空気が一気に緊張へ戻り、私たちは必死に二人の姿を探し始めた。
【次話予告】
マルバスの言葉は、ただの脅しだと思っていた。
だけど――あれは“半分だけ”本当だった。
そして、その半分が残酷すぎる。
第40話 希望の光と深い絶望
必ず、読んでね!
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