第37話 不穏な影
2体のファイティング・グローに追い詰められる。息は上がり、体は悲鳴を上げている。でも、ここで諦めるわけにはいかない。凜華に余計な心配をかけられないし、志乃や他の誰かのようにもっと強くならなければならない。もしここでロボットたちを止められなければ、マルバスにより人間界が乗っ取られてしまうかもしれない――それだけは絶対に阻止しなければならない。私の強い思いが、力をもう一度押し上げる。
「マジカルミナスブレイク!」
叫びとともに放った一撃は見事に1体のロボットを捉えた。ロボットはまるで電源が落ちたかのように動きを止め、そのまま地面に倒れこむ。私も思わず小さくガッツポーズを作ってしまった。――しかし、次の瞬間だった。
倒れたはずのロボットが、ふたたびゆっくりと起き上がる。目から光を放ち、攻撃を仕掛けてきた。レーザービームを辛うじてかわすが、防戦一方だ。凜華もまた、ファイティング・グローの猛攻に苦しんでいる。
「あんたたち、いい加減しつこいわよ」
凜華の目が赤く光り、力がみなぎる。彼女は息を整えると必殺技を放った。
「プリズルミナスブレイク!」
轟音と衝撃が周囲を震わせ、爆発が起こる。2体のファイティング・グローから光が消え、爆風とともに地に倒れた。やった——と、安堵のわずかな間だけ思ったのも束の間。再び同じ現象が起こる。倒れていたロボットたちに光が戻り、立ち上がって凜華へ反撃を始めたのだ。
「きりがないわね……こいつら、不死身なのかしら」
私は呟く。凜華も悔しそうに歯を食いしばる。
「けど、ここで負けるわけにはいかない!」
「ひかり、あんたに言われるまでもなくそのつもりよ!」
互いに目を合わせ、疲労を振り切って立ち向かう。その時、不意に周囲の空気が変わった。暗い人影が私たちの前に現れ、周囲にはさらに4体のロボットが控えている。
「やぁ、久しぶりだね。星川ひかり、早乙女凜華。楽しんでいるかい? 今戦っているファイティング・グローは、実はこの俺が作ったんだよ」
声の主はマルバスだった。薄ら笑いを浮かべ、余裕たっぷりにこちらを見下ろしている。
「マルバス……私たちは、あんたのへぼロボットに負けるほど弱くないわ!」
凜華は息を切らしながらも、あくまで余裕を装う。
「それはどうかな。君たちも薄々気づいているはずだ、そのロボットの“強さ”を。」
「どういう意味?」
私が問い返すと、マルバスはゆっくりと説明した。
「ファイティング・グローの最大の特徴は、学習能力の高さだ。戦闘で受けたダメージや戦術をデータとして吸収し、解析して強くなる。つまり、戦えば戦うほど成長する“処刑兵器”ってわけさ。君たちを処刑するために作られた――そう考えてくれれば分かりやすいだろう。」
その言葉に、凜華は眉をひそめる。
「バカにしないで。人間が機械に負けるなんて、ありえないわ!」
「それはどうかな。今、俺の周りにいるファイティング・グローたちは、君たちの大切な仲間を処刑し終えたんだよ。」
「何ですって?」
その一言で、凜華の表情が一瞬崩れる。私も思わず言葉を失った。信じたくないことを口にされる――それがどれだけ人を揺さぶるか、二人とも身をもって感じていた。
「それが嘘だったとしても、本当だったとしても、私たちはあなたなんかに負けない!」
震える心を隠しつつ、必死に強がる。凜華も私も、同じ決意を胸に戦い続けていた。だが時間は残酷で、二人は既に限界に近づいていた。戦闘はすでに二時間を越え、筋肉は震え、呼吸は浅くなる。
「これでわかっただろう。君たちがこんなに苦戦している間にも、仲間たちは来ない。それが、俺たちが彼らを倒した何よりの証拠さ。」
マルバスは嘲るようにそう言った。私の心臓が一瞬、強く打つ。
「じゃあ、鈴木さんは?」
私が問いかけると、マルバスは少し眉を上げて冷静に答えた。
「あの男は残念ながら、まだ倒せていない。相当しぶといやつだ。何時間もファイティング・グローと渡り合っている。あいつの持久力と忍耐力には、俺も驚かされるよ。」
鈴木祐介――彼は今もどこかで戦っている。勝てるかどうかはわからないが、少なくとも彼は諦めてはいないということだ。マルバスはそれを面白がるかのように目を細める。
「厄介だな、あの男。そろそろ潮時か。先に君たちの方を処刑するとしよう。」
マルバスは静かに、しかし確かな殺意を含んだ声で呟いた。
私たちは再び立ち上がる。絶望の淵であっても、手を抜くわけにはいかない。仲間を守りたい――その思いだけが、今の私たちを動かしている。
【次話予告】
マルバスと増援のファイティング・グローに追い詰められるひかりと凜華。彼らの目的はただ一つ――私たちの処刑。果たして、絶望の中に光は差すのか?
第38話 私と凜華の大ピンチ!?
必ず、読んでね!
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