第33話 決闘! 遥vsダークブレイブ!
マルバスは、前回の実験を静かに反省していた。
完成したダークブレイブ――神崎沙羅は、命令を聞かず暴走。結局、彼女を倒すためにシャインブレイブの力を借りることになってしまったのだ。
失敗の原因は明白だった。邪悪な心を入れすぎたせいだ。
ならば次は、その量を減らしてみればいい。単純な話だ。
「名前を考えるのも面倒だし、今回も“神崎沙羅”でいこうか。」
培養カプセルの中で、黒ずんだ液体がうねるように蠢く。やがて、それは人の形を取り、ゆっくりと息を吹き返す。マルバスは彼女の身体を解放し、穏やかに問いかけた。
「お目覚めかい? 君の名前は?」
「私の名前は、神崎沙羅。」
「よし、いい子だ。――君が何をすべきか、分かっているね?」
沙羅は黙って頷くと、低く呟いた。
「シャインブレイブと、月影ルナを……倒すこと。」
「その通りだ。では、さっそく出発しなさい。」
「分かったわ。」
その声は冷たく、従順そのものだった。沙羅は静かに研究室を後にし、標的のもとへと向かっていった。
一方その頃――。
放課後の夕暮れ、高野遥は一人で帰り道を歩いていた。
学校では相変わらず差別やいじめが続いている。それでも、彼女の表情はどこか穏やかだった。星川先輩や早乙女先輩と過ごす日々が、遥にとって大きな支えになっていたからだ。
早乙女先輩の様子も気にかかっていた。朽ノ木林での出来事以来、彼女に変化は見られない。けれど、遥の心のどこかで、不安は拭いきれなかった。
――あの戦いのあと。
星川先輩が改めて紹介してくれた少女、月影ルナ。
彼女はマルバスによって生み出された人工生命体であり、オルフェウス教団の一味――のはずだった。
しかし、ルナの瞳は不思議なほど澄んでいて、まるで小学生のように純粋な光を宿していた。
彼女が「悪」だとは、とても思えなかった。星川先輩が仲間に引き入れたくなる気持ちも、今ならよく分かる。
ただ一人、早乙女先輩だけはルナを警戒していた。
――無理もない。彼女は敵の手によって作られた存在なのだから。
人は往々にして、特定の属性で他人を判断する。
もしルナがオルフェウス教団の一味でなかったなら。
もしマルバスに作られた存在でなかったなら。
きっと早乙女先輩も、彼女と笑い合っていたのかもしれない。
遥はそんなことを思いながら、ふと自分と彼女を重ねた。
自分もまた、“黒羽部落の出身”というだけで、畏れや偏見の目を向けられてきたからだ。
そう考えていると、前方に見慣れた姿が現れた。
「遥、学校終わったの?」
振り向くと、月影ルナがあどけない瞳で立っていた。
「はい。今、帰るところです。」
遥は丁寧に答える。
「ねぇ、遥。友達って、何?」
唐突な質問に、遥は少し戸惑った。
「友達……ですか。うーん、難しいですね。でも、そうですね……“自分のことを大切に思ってくれる人”のこと、かな。」
「ふぅん。ひかりも同じこと言ってたよ。」
ルナは少し考え込むように言葉を続けた。
「私のことを大切に思ってくれる人って、誰なんだろう……?」
その時だった。
ヒュッ――!
空気を裂くように、一本の矢が飛んできた。
「危ないっ!」
遥は反射的にルナの身体を抱き寄せ、地面に転がった。
そのすぐ後ろを、鋭い矢が通り抜ける。
「……ああぁ、外しちゃった。」
声のした方向に視線を向けると、そこに立っていたのは――この前倒したはずの神崎沙羅。
「あなた、生きていたんですね?」
遥は息を呑むように問いかける。
だが、沙羅は怪訝そうに眉をひそめた。
「生きてた? 何の話? あんたと会うのは初めてでしょ。」
――その言葉で、遥はすぐに悟った。
彼女は、以前の神崎沙羅とは別の個体なのだ。
その瞬間、遥の心に、奇妙な優しさが芽生えた。
「あなた……もし良ければ、人間の世界を見てみませんか? きっと楽しいですよ。私たちを倒すのは、それからでも遅くありません。」
自分でも苦笑してしまうほどの提案だった。
(……ああ、私も星川先輩の影響を受けてるなぁ。)
しかし沙羅は、冷たく首を横に振った。
「悪いけど、その気はないわ。あたしの役目は、あんたたちを倒すこと。」
「そう言わずに――」
言い終える前に、沙羅は弓を引き絞り、ルナに狙いを定めた。
「ルナさん、下がっててください!」
遥はルナの前に躍り出て、光をまとった。
「ミラクル・ミナス・ブレイク!」
眩い黄色の光が遥の身体を包み込み、シャインブレイブが誕生する。
対する沙羅も、ためらいなく弓を放った。
「ダーク・ブレイク!」
「ミラクル・ミナス・ブレイク!」
光と闇の矢が空中で激しくぶつかり合い、炸裂音が響く。
力比べの末、勝ったのは遥の光だった。
沙羅の身体が吹き飛び、地面に叩きつけられる。
苦痛に顔を歪めながらも、彼女はまだ立ち上がろうとした。
だが、遥は追い打ちをかけることなく、ただ静かに見つめていた。
彼女はルナの方へ振り返り、優しく声をかける。
「大丈夫……ですか?」
「うん……ありがとう、遥。」
ルナは小さく頷き、かすかに微笑んだ。
「遥って、なんだか……お姉ちゃんみたいだね。」
その言葉に、遥は照れくさそうに微笑んだ。
【次話予告】
「生命体を作れば、それ自体が“意志”を持つことになる。
ならば――“意思を持たない兵器”を作ればいい。
シャインブレイブを倒すには、その方が合理的だ。」
マルバスの新たな計画が始まる。
彼が生み出したのは、防御力に特化した“無敵のロボット”。
私たちの攻撃は一切通じない――!
第34話 厄災のロボット
――必ず、読んでね!
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