第30話 友達って何だろう。
私、月影ルナは、ひかりと凜華に「人間の生活」というものを見せてもらうことになった。最初、凜華は強く反対していたけれど――結局、ひかりの勢いに押し切られる形で了承してくれたようだ。
とはいえ、私が人間の世界にいられるのは放課後か朝だけ。2人は“学校”という場所に通っているらしい。私は放課後、2人が校門から出てくる時間を見計らって学校に向かった。
「ルナちゃ~ん!」
ひかりがいつものように大きく手を振る。
その明るさがまぶしくて、つい笑ってしまう。
一方の凜華は、相変わらず私に話しかけてくれない。でも、整った横顔はやっぱり美しい。
「2人とも、今日も学校だったの?」
「そうだよ~!」
ひかりは満面の笑みで答えた。
「そっかぁ。学校って、何をするところなの?」
「勉強したり、友達と遊んだりするためだよ!」
そして彼女は続ける。
「ねぇ、もしよかったらこのあと公園で遊ばない?」
ひかりの提案に私は小さく頷く。ひかりは続いて凜華の方を見た。
「ったく、しょうがないわね。」
結局、3人で遊ぶことが決まり、一度家に帰って着替えなどを済ませたあと、午後5時に近所の公園に集合することになった。
「来たのはいいけど、何して遊ぶのよ?」と凜華が腕を組む。
「うーん、まずは『だるまさんが転んだ』しようよ!」
「はぁ? 何を言い出すかと思えば……そんな子どもっぽい遊びに付き合ってられないわよ。」
呆れ顔の凜華に、ひかりが明るく笑って言う。
「まぁまぁ早乙女さん、そんな怖い顔しないで楽しみましょうよ!」
「まったく……」
そう言いながらも、ちゃんと参加してくれる凜華だった。
ひかりがルールを丁寧に説明してくれて、いよいよ3人で“本気のだるまさんが転んだ”が始まった。
意外にも、一番全力で動き回っていたのは――凜華だった。
ひとしきり遊んだあと、私たちは草の上に寝転がった。
「はぁ~疲れたぁ。もう動けないよ。」
ひかりが笑いながら息をつく。
「てか凜華、めっちゃ張り切ってたじゃん。子どもっぽいとか言ってたのに!」
「はぁ? べ、別に私は楽しんでなんかないわよ。ただ、あんたたちに捕まりたくなかっただけ。」
「嘘つけ~。ほんとは楽しかったくせに!」
「楽しくない!」
「楽しかったよね?」
「楽しくないったら!」
「あーもう、変なとこで意地張っちゃって。」
「楽しくないもん!」
そんな2人のやり取りを、私はただじっと見つめていた。
「ん? ルナちゃん、どうしたの?」
「2人って、どうしてそんなに仲良いのかなって。」
「あぁ、それはね――私たち、友達だからだよ!」
「友達?」
「そう、友達!」
「友達って、何?」
私は素直な疑問を口にした。
友達――それは人間にとって、どんな存在なんだろう。
「友達っていうのはね、自分にとって“大切な人”のことだよ。ね、凜華!」
ひかりは眩しいくらいの笑顔で言った。
「そっか……大切な人、か。」
私は静かに呟いた。私にとって“大切な人”って、誰だろう。
凜華はひかりに見つめられ、少し目を逸らした。心の奥がくすぐったくなる。
「わ、私は別に……あんたと友達ってわけじゃ……」
言いかけて、自分で「あっ」と思った。言わなきゃよかった――そう思った時にはもう遅い。
「ひどーい! 私は凜華のこと友達だと思ってたのに、凜華はそうじゃなかったの?」
「いや、その……そうだけど……」
「うんうん、でしょでしょ!」
ひかりが勢いよく抱きつく。
「ちょ、ちょっと! 離れなさいよ、うざったい!」
「もう、相変わらずだなぁ凜華は~。」
私は2人を見つめながら、胸の奥から自然に言葉がこぼれた。
「私も……2人の友達になりたい。」
人間の常識も、社会のルールも知らない。けれど、この気持ちだけは本物だった。
「やだなぁ、ルナちゃん。もう私たち、友達じゃない。」
ひかりが柔らかく笑う。
私は嬉しくて、胸があたたかくなった。けれど――
「私は絶対嫌よ。あんたなんかと友達になるわけないでしょ。今日もひかりに呼ばれたから来ただけ。それじゃ。」
凜華は冷たく言い放ち、その場を去っていった。
「凜華、そんな言い方しなくても……」
ひかりの小さな声は、もう彼女には届かなかった。
でもその胸の奥で、凜華もまた思っていた。
――月影ルナは、そんなに悪い子じゃないのかもしれない。
だけど彼女は敵組織が作った存在。これが罠かもしれない――。
そう考えると、完全に心を許すこともできなかった。凜華は迷いの末、彼女に対して“警戒を続ける”という選択をしたのだ。
俯く私の肩を、ひかりがそっと叩いた。
「ルナちゃん、落ち込まなくていいよ。凜華はね、ああ見えて優しい子なんだ。ただちょっと、人と関わるのが不器用なだけ。だから……凜華とも仲良くしてあげてね。」
私は、彼女の言葉に小さく頷いた。
【次話予告】
マルバスによるダークブレイブ製造計画・第一弾は失敗に終わった。
だが、彼はまだ諦めてはいない。
月影ルナを作った時には、邪悪の心を注ぐ量が足りなかった――。
そこで彼は、より強く、より純粋に“邪悪な心”を持つ人工生命体の製造を試みる。
しかし、その実験は予想外の事態へと進展していく――。
第31話 邪悪な戦士
必ず、読んでね!
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