第28話 楽しい文化祭と新たなる脅威!
私たちの学校――虹ヶ丘中学校で、待ちに待った文化祭が開催された。
教室の飾りつけ、模擬店の準備、ステージ発表のリハーサル。
校舎全体が華やかな笑い声と色とりどりの飾りに包まれ、まるで今までの戦いが夢だったかのように思えた。
――この期間だけは、余計なことは考えず、全力で楽しもう。
そう、心に決めていた。
けれど、やはりどうしても気にかかることがあった。
凜華。
あの事件のあと、彼女は特に変わった行動をしていない。
いつものように冷静で、勉強もできて、頼れる存在。
けれど――その笑顔の奥には、どこか“別の何か”が潜んでいるような気がした。
遥とも話し合って、しばらく様子を見守ることにしたけれど……私の胸のざわめきは消えなかった。
それに――凜華の顔立ちは、日に日に整っていくように見えた。
元から容姿端麗な彼女だったが、今はもう「綺麗」なんて言葉では足りなかった。
教室の光を受けるたび、その肌が淡く輝き、髪の一本一本までもが柔らかく光を反射している。
笑うたびに空気が澄んで、まるで周囲の世界ごと凜華に引き寄せられていくようだった。
――それは、人が踏み込んではいけない領域の美しさ。
神様という言葉が、自然と脳裏に浮かんだ。
「……ねえ、遥。最近、凜華ちょっと変じゃない?」
私が言うと、遥は少し考え込むように首を傾げた。
「そうですね……確かに、前よりも“完璧すぎる”気がします。」
「完璧、ね」
「でも、あの時のことは本当に覚えていないみたいですし……無理に刺激するのは、やめた方がいいと思います。」
遥の声は穏やかで、どこか諭すようだった。
その冷静さが、逆に私の不安を強める。
もともと勉強も運動もトップクラスの凜華。
それなのに最近では、そのどちらも“次元が違う”ほどの結果を出していた。
誰も敵わない――そんな雰囲気さえ漂わせていた。
そして迎えた文化祭当日。
凜華が担当するクラスの模擬店は「メイド喫茶」。
彼女は黒と白のメイド服に身を包み、完璧な所作で客を迎えていた。
「いらっしゃいませ、ご主人様。こちらのお席へどうぞ」
その一言だけで、教室中の空気が変わる。
男子たちは赤面し、女子たちでさえ見惚れるほどだった。
長蛇の列ができるのも当然だった。
ケーキもジュースも、凜華が差し出すだけで“特別な味”になる。
他のクラスメイトが驚く中、凜華は少しも慌てず、微笑んでいた。
その微笑みを見た瞬間、私は――なぜか背筋がぞくりとした。
その笑顔は、確かに優しく、美しい。
けれど、どこか“人間らしさ”が抜け落ちているような気がしたのだ。
――まるで、彼女がこの世界の理を超え始めているような。
***
一方その頃、文化祭の喧騒の裏で、ひとりの男が静かに動き出していた。
マルバス――本名、狩野颯真。
かつては天才科学者と呼ばれたが、その異常な研究への執着ゆえに追放された男。
今は、オルフェウスの手によって再び“暗い舞台”へと引き戻されていた。
「――“彼女たち”の力、実に興味深い」
薄暗い研究室のモニターには、シャインブレイブの戦闘映像が映し出されている。
光の軌跡、波動パターン、そして変身時のエネルギー反応。
それらを無表情で見つめながら、颯真はゆっくりと笑った。
「光があるなら、影もある。
神がいるなら、悪魔もまた存在する。
均衡を崩すのは、いつだって“人間の好奇心”だ。」
机の上に置かれた培養カプセルの中で、黒い液体がゆっくりと波打つ。
その中で人の形をした“何か”が、まぶたを震わせた。
金属のような冷たい光が、わずかに瞳の奥で瞬く。
「――いい子だ。
お前が“闇の中で輝く者”、ダークブレイブだ。」
液体の表面が弾け、空気を切り裂くような低い唸りが響く。
そして、薄暗い研究室に少女の声がこだました。
「……ここは……どこ?」
「お目覚めかい? 自分の名前を言ってみるといい。」
「……私の名前は……月影ルナ。」
「いい名だ。――お前の使命はひとつ。シャインブレイブを、倒せ!」
「……分かったわ。」
その瞳には、まだ迷いがあった。彼女の中にも、愛や正義、思いやりや優しさと言った人間の持つプラスの感情が宿っていたのだ。
【次話予告】
「お目覚めかい? 自分の名前を言ってみるといい。」
「私の名前は……月影ルナ。」
「シャインブレイブを倒してこい。」
「分かったわ……」
マルバスの命を受け、シャインブレイブ討伐に向かうルナ。
だが、何と――凜華に一目惚れしてしまう。
第29話 実験の失敗?
――必ず、読んでね!
最後までお読み頂き、本当にありがとうございました。
この作品が面白いと感じられました方は、評価やブクマなどくださると大変励みになります。




