第22話 心霊林に突入せよ!
あれから、私はほとんど自分から2人に話しかけなくなっていた。
あの時のことが、どうにも恥ずかしくて。不甲斐なかったからだ。大口を叩いたくせに、結局は凜華に助けられることになった。
もしあの時、彼女が来てくれなかったら――私はきっと、もうこの世にいなかった。そう思うと、彼女の存在の大きさが胸に沁みた。
でも、私は多分、凜華に甘えすぎている。苦手なことがあったくらいで弱音を吐くようじゃ駄目だ。
――もっと強くならなきゃ。
そう、心に誓った。
「つまり...ネガティブな感情を実体化できる、ってことですか?」
遥は凜華の言葉に目を丸くした。
「そう。ひかりによると、その女の名前は“ルシフェリア”っていうらしいの。かなり厄介な敵よ。ひかりも、私が駆けつけなかったら危なかったみたいだし。遥も気をつけなさいよ。」
「うぅ……その節は本当にごめんなさい……」と私。
「分かりました。」
遥は小さく頷いた。
学校に着くと、私と凜華は2年の教室へ、遥は1年の教室へ向かった。
教室に入ろうとしたその時、見知らぬ女子の声が聞こえた。
「早乙女さん、だよね?」
声の方を見ると、他クラスの女子5人が立っていた。先頭にいた、目立つ雰囲気の子が一歩前に出る。
「私は清水天音。私たち、早乙女さんにお願いがあるの」
「お願い?」
「うん。学校から少し離れた“朽ノ木林”って知ってる?」
「知ってるけど?」
「実は……そこ、出るらしいの」
「出る? 何が?」
「……幽霊、だよ」
「はぁ?」
「今日、私たちその林に行くつもりなの。だから、早乙女さんにも一緒に来てほしくて」
「ふん、馬鹿ね。幽霊なんているわけないじゃない。付き合ってられないわ」
「待って!」
「まだ何かあるの?」
「早乙女さんって、本当に綺麗だよね」
「……それが何?」
「うちのクラスで噂になってるの。早乙女さんには“不思議な力”があるって...」
凜華は、天音の瞳を静かに見つめた。
「実はね、うちの親戚のお兄ちゃんが、その林に行ったきり帰ってこないの...」
天音の話はこうだった。――半年前、彼女の兄が、亡くなった恋人が林の中で手を振る夢を見て、そのまま林へ向かった。それ以来、行方不明。
警察が捜索を行ったものの、彼は見つからず、捜索に入った警察官たちまでが行方不明になったという。
天音は兄が生きている可能性が低いと分かっていながらも、せめて何が起きたのかを知りたいと訴えた。
凜華は、その想いを無視できなかった。
「……分かったわ。ったく、しょうがないわね。」
朽ノ木林――そこは予想通り、ただならぬ気配に満ちていた。
木々のざわめきの奥に、何かが潜んでいる。
ルシフェリアが生み出したモンスターが、そこにいたのだ。
それは怨霊の集合体。恋人に会いたい、上司が憎い、自分をいじめた相手を許せない――そんな死人たちの未練が絡み合い、巨大な怨念の塊となっていた。しかも厄介なことに、実体を持たないため、コンパクトでは反応しない。
天音たちと凜華は、恐る恐る林の奥へ足を踏み入れた。
その瞬間――一本の木から、白い手が何十本も生えてきた。
それが彼女たちの身体を掴もうと襲いかかる。
「きゃあっ!」
「みんな、下がって!」
凜華はコンパクトを握りしめ、叫ぶ。
「光よ、私に新たな力を――プリズ・ルミナス・ブレイク!」
眩い光に包まれ、凜華は変身した。
「早乙女さん……今の、何!?」
「話はあと! プリズルミナスブレイク!」
放たれた水色の弓矢が、白い手を切り裂いていく。
だが、手は何度倒しても再生し、やがて呪いが一点に集まり、黒い霧のような塊となって禍々しい殺気を放った。
凜華は冷静に状況を見極めようとする。
この敵には弱点がない――いや、あるとすれば“林の外には出られない”ことくらい。
正面から戦っても勝ち目はない。
「みんな、早く逃げて!」
天音たちが逃げ出すのを確認すると、凜華は弓を構え続けた。
しかし次の瞬間、足元から無数の手が飛び出し、凜華の足を掴む。
「くっ……!」
悲鳴を上げた瞬間、彼女の中の何かが弾けた。
凜華の瞳が、不気味な赤に染まる。
「私は――神に最も近い存在。神に逆らうな」
低い声でそう呟くと、凜華は闇の塊に向かって矢を放った。
同時に、怨念の塊も憎悪の光線を放つ。
互いの光が空中で激しくぶつかり合い、林全体が震えた。
どれほど時間が経ったのだろう。
目を開けると、天音たちが心配そうに覗き込んでいた。
「早乙女さん、大丈夫? 林から出たところで倒れてたの」
「……私、どうなってたの?」
「みんな、すごく心配したんだよ」
「そ。ありがと」
「でも本当に、早乙女さんって特別な力を持ってるんだね。驚いちゃった」
「そのこと、他の人には言わないでくれる?」
「分かった。親戚のお兄ちゃんのことは結局分からなかったけど……命を助けてもらったし、それくらいのことは約束するよ」
凜華はうなずきながらも、心のどこかで引っかかっていた。
――林を出るまでの記憶が、まるでない。
私は、どうやってあの林から出たんだろう……?
【次話予告】
現れたモンスターの標的は幼い子ども!?
弱い者ばかり襲うなんて、絶対に許せない。
モンスターの元へ急ぐ私たちの前に、ルシフェリアが姿を現す。
彼女の真の目的とは――?
第23話 ルシフェリアの目的
必ず、読んでね!
最後までお読み頂き、本当にありがとうございました。
この作品が面白いと感じられました方は、評価やブクマなどくださると大変励みになります。




