第15話 驚異の力とMHシステム
ルシフェリア――その正体は八重森綾乃。
彼女には、“他人の精神に干渉する”という、恐るべき力があった。
他人の心に入り込み、善と悪の境界を揺るがせ、世界そのものを自分の理想の姿に書き換えること。
それが、彼女の歪んだ夢だった。
ある夕暮れのこと。
一人の男子高校生が下校途中、何気なく立ち寄ったコンビニで、いつものように買い物をしていた。
レジへ向かおうとしたその時――ふと視線の先に、ずっと楽しみにしていた人気漫画の最新刊が目に入る。
しかし、財布の中身は心もとない。
どうしても欲しい気持ちが膨らんでいく中、頭の片隅に悪魔のような囁きが浮かぶ。
(……今なら誰も見てない。お金を払わなくてもバレないんじゃ……?)
だが、すぐに自分の頬を叩くように心を振り払う。
「なにバカなこと考えてんだ、俺。万引きなんて最低だよな……」
その瞬間――。
耳元に、甘く、そしてどこか妖しい声が響いた。
「やっちゃえばいいじゃん。」
「……誰だ?」
「あたしが、世界の秩序を乱してあげる。」
その言葉と同時に、少年の身体が突如苦しみによじれる。
次の瞬間、彼の体からどす黒い煙のようなものが噴き出し、それが形を持ちはじめた。
歪んだ顔、膨張した腕――そして、巨大な口。
コンビニの中で、少年の心の“邪悪”が現実の怪物となって顕現したのだ。
モンスターは、店の商品を次々と吸収し、咆哮を上げた。
——それこそが、ルシフェリアの力。
人の心の奥底に潜む「悪意」を引き出し、実体化させる“精神具現化能力”。
同じ頃、街の別の場所では――。
帰宅途中の私と凜華、そして家にいた遥のもとで、同時にコンパクトが強く光を放った。
モンスター出現の警告だ。
新たな“ルミナスモード”の力を得たことで、コンパクトにも新しい機能が追加されていた。
モンスターの位置を、光のマップで正確に把握できるようになっていたのだ。
「行こう!」
「うん!」
「はいっ!」
3人はほぼ同時に走り出し、現場へと急行する。
夜の街に到着した瞬間、3人のコンパクトが一斉に輝いた。
「光よ、私に新たな力を! マジカルミナスブレイブ!」
「光よ、私に新たな力を! プリズルミナスブレイブ!」
「光よ、私に新たな力を! ミラクルミナスブレイブ!」
光が弾け、3人の身体が新たなフォームへと包み込まれていく。
それぞれの衣装は以前よりも煌びやかに、そして力強く輝いていた。
現場では、モンスターが吸収した商品を無差別に投げつけて暴れている。
爆発音と悲鳴が響き渡り、街は大混乱だ。
「ミラクルミナスバリア!」
遥が咄嗟に防御壁を張る。透明な光の壁が瞬時に形成され、飛来する物をすべて弾き返した。
その隙を逃さず、私と凜華が息を合わせて飛び出す。
「マジカルミナスブレイク!」
「プリズルミナスブレイク!」
光の奔流が交差し、爆発的な閃光が夜空を切り裂く。
モンスターは苦痛の叫びを上げ、やがて爆散。残ったのは静寂と焦げた匂いだけだった。
「やりましたね、先輩!」
遥の明るい声に、私と凜華は顔を見合わせ、自然と笑みを浮かべた。
だが、戦いの裏で、別の場所ではすでに新たな動きが始まっていた。
——警視庁捜査一課。
「この映像を見てくれ。……面白いだろ?」
暗い部屋のモニター前で、鈴木祐介課長が意味深な笑みを浮かべていた。
映っているのは、モンスターと戦う私たち、シャインブレイブの姿だった。
「鈴木課長、それはいったい……?」
「決まってるだろ。あの“化け物”と互角に戦っていた少女たちの映像だ。」
彼は指で画面をトントンと叩きながら、興奮を隠さず語る。
「これを参考にすれば、一般人でもモンスターと戦える“バトルスーツ”が作れる。
名付けて――Magical Human System。略してMHシステムだ。」
課長の目が、獲物を見つけた猛獣のように光った。
「もう半分は完成したも同然さ。なにしろ、俺は天才だからな。
……にしても、こいつら、面白い連中だ。会ってみてぇな。」
その視線の先には、私たちシャインブレイブ三人の姿が映っていた。
【次話予告】
下校中、突然光を放つコンパクト。
クラスメートのピンチに駆けつける私と凜華。
モンスターとの激しい戦いを終え、ほっとしたその時――
「動くな!」
振り返ると、そこには警察官たちが。
そして私たちは、なぜか手錠をかけられ、連行されてしまう!?
「えっ、私たち……何か悪いことしたの!?」
一体どうなっちゃうの――!?
第16話 私と凜華の取り調べ
——必ず、読んでね!
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第16話は明日21時に投稿します。




