第12話 失敗作の末路
ネメシスは、ついに――自分が長年追い求めてきた「生物実験」の最終段階へと踏み出そうとしていた。
これまで彼は、ネズミ、昆虫、鳥、爬虫類、海の生き物……そして、ときには人間までも材料にし、無数のモンスターを生み出してきた。試行錯誤の結果、失敗した個体の残骸は山のように積み上がり、実験室には常に血の匂いと薬品の臭気が漂っている。
しかし、その果てに得られた答えが、彼の狂気をさらに加速させた。
一つ目の結論――どんな生物でも、モンスターへと変えることができる。
二つ目の結論――複数の生物の能力を“融合”させればさせるほど、そのモンスターは異常な強さを持つ。
この単純にして絶望的な事実を前に、ネメシスは狂気じみた笑みをこぼしていた。
「ならば……地球上の生物すべてを材料にすれば、完全なる兵器が生まれる……!」
そして彼は、地球規模の大計画に着手する。
対象は、微生物、昆虫、魚類、哺乳類――あらゆる生物を“3体ずつ”。小さなウイルスの集合体から、海の王者シロナガスクジラに至るまで。
そして、そのリストの中には――何の迷いもなく「人間」も含まれていた。
やがて、試作段階としてひとつの「最終兵器」が誕生した。
その怪物は夕暮れの街に姿を現し、咆哮とともに暴れ始めた。家屋を破壊し、道路を引き裂く。しかし――その行動には、これまでのモンスターにあった“シャインブレイブを狙う”意志が一切なかった。
ただ、苦しむように暴れまわっていた。
「……こりゃ失敗だな。まだ、神経の接続が甘い。もう少し調整が必要か……」
ネメシスは、まるで壊れた機械でも見ているかのように冷静に呟いた。
***
放課後。
私と凜華は、帰り道でその怪物と鉢合わせた。
「光よ、私に力を! マジカルシャインブレイブ!」
「光よ、私に力を! プリズムシャインブレイブ!」
光が弾け、私たちは変身を終える。
しかし目の前のモンスターを見た瞬間、息が止まった。
体の構造が明らかにおかしい。骨格が複数の生物由来でねじ曲がり、足は4本とも形が違う。
背中には魚のヒレのようなものが揺れ、皮膚は細胞レベルで不安定に脈打っている。
そして――頭部の右側に、明らかに“人間の頭”の形をした肉塊がついていた。
「り、凜華……あれって……」
「ええ。あのモンスターを作るために、人間が使われた。間違いない。」
凜華は、表情ひとつ変えずに事実を受け入れていた。
でも、私は胸が苦しくて息が吸えなかった。
「……苦しそう。」
モンスターの目は焦点を合わせることすらできず、ただ痛みに怯えるように震えていた。
「ひかり、あれを助けることはできない?」
そう問うと、凜華はしばらく沈黙した。
彼女の瞳が赤く光り、怪物の全身を分析するように見つめる。
筋肉の動き。神経の流れ。細胞の乱れ。
そのすべてを彼女の視界は見通していた。
「……無理よ。」
「そんな……」
「神経が複数の生き物のものを無理やり繋げられてる。自分の身体を自分のものだと認識できていない。このままだと、痛みに狂いながら暴れ続けるだけ。」
凜華は静かに弓を構えた。
「だから、せめて――私が楽にしてあげる。」
「プリズムシャインブレイブ!」
光の矢が、苦しむ怪物の心臓を正確に貫いた。
モンスターは最後に震えるような声で呻くと、静かに爆散した。
残ったのは、わずかな光の粒だけだった。
「……容赦ないんだね、凜華は。」
思わずそんな言葉がこぼれた。
「……優しいあんたに、こんな役目を背負わせるほうが残酷よ。」
彼女は背を向けたまま、小さく付け加えた。
「その分は、私が全部やる。」
「凜華……ありがとう。」
「な、何よ急に!? ……べ、別にいいわよ……!」
そのツンとした態度に、思わず私は微笑んでしまった。
しかし、その裏側では――ネメシスの狂気が、すでに“最終段階”へ突入していた。
***
「ふはははははっ! ついに完成したぞ……!」
研究室に響く、狂った笑い声。
巨大な肉塊が、ドクン……ドクン……と心臓のように脈打っている。
無数の生物の神経や筋肉が混ざり合い、もはや“生命”と呼んでいいのかすら分からない存在。
ネメシスは陶酔したように、その中央に手を添えた。
「後は……俺と融合すれば……完璧だ……!」
だがその瞬間。
「あばぁ……ばぁぁばぁああッ!!」
肉塊が突然、彼を呑み込むように蠢いた。
悲鳴すら言葉にならず、彼の身体は引きずり込まれ――
細胞が壊れ、神経が溶け、骨が変形し、モンスターの一部へと組み込まれていく。
やがて。
人間の意志を持った“それ”が、狂気に満ちた目でゆっくりと立ち上がった――。
世界終焉の音を奏でながら。
【次話予告】
ついに動き出した“最終兵器”。
その暴走は町を飲み込み、政府は緊急事態宣言を発令。
学校も会社もすべて閉鎖され、街は一瞬でゴーストタウンと化した……。
それぞれの家に戻った私と凜華は、何を選び、どんな決断を下すのか――?
第13話 シャインブレイブ、大ピンチ!?
――必ず、読んでね!
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第13話は明日21時に投稿します




