迷い
1-
殿はたいそう迷っていました。
武官はいいました。「殿、早急にご決断を。A国を落とすのは今をおいてほかにありません」
文官はいいました。「殿、策あっての戦でございます。いましばらくお待ちくださいますよう」
殿はどうしたものかと上段の間をいったりきたりなさっています。
武官はいいました。「それがしに2千の兵をお預けくださいますれば、時をおかずしてα(A国城主)の首を持ち帰ってみせまする」
文官はいいました。「おやめなされ。あちらにはβという策士がいることをお忘れか」
殿は天を見上げ、どうしたものかと決めあぐねておいでのようです。
武官はいいました。「殿、この戦で万が一にも敗れるようなことがあれば、この腹を切りまする」
文官はいいました。「なにをいわれるか!そんなことになれば輪をかけて相手に利するだけです。殿、一晩お時間をくださいませ。策を練って明朝ご報告に参上いたしまする」
殿は二人を見下ろして告げられました。
「よしわかった。迷ったが今日は岐阜の酒にしよう!」