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さくらとけなり

外で会った沙良はいつも通りに化粧っけが全くない。

ほとんどすっぴんだけどまだ20代前半で充分通じ、服装もフリル付きのミニスカートでとても似合う。

どうみても熟女系の店で働いているようには見えない。

メイド喫茶のバイトが似合うほど可愛い容姿と服装である。


その日は5月下旬だったのでお店に入るまでの道中の19時少し前はまだ明るい。

いつも暗がりでしか見ていない沙良をまじまじと見てしまう。


その視線に気が付いたようで

「イヤだ・・・恥ずかしい・・・」

と伏し目がちになるのだがその表情も可愛い。


「将来の夢って何?」

沙良に思わず聞いていた。

夜職をしているのは何か訳でもあるのかなって思ったから。


「今は・・・彼と一緒に住むことかな。

田舎に住みたいの。名古屋は落ち着かなくて・・・

彼はバツ一で養育費の問題もあって結婚は出来ないって言われているけれど・・・」


インターネットのゲームサイトで知り合った彼は隣県に住んでいるとは聞いていたけれどバツ一だとは知らなかった。

可愛いから他にいくらでも彼など出来ると思うのだけど・・・


「じゃぁ、もうすぐ辞めるの?」


「ううん、暫くはいるよ。少なくとも秋まではいるから。辞めるときも連絡するね。突然辞めたりはしないから」


「ねぇ、結婚しないなら・・・辞めても会える?」


「うん、いいよ」


そんな会話をしながら店に入った。


その日は栄と伏見の中間ぐらいにある本町の韓国レストランの「さくらとけなり」を予約していた。ここにした理由がもう7年ほど前のこと、当時は名古屋市港区にある「ステーキワン名古屋南陽店」の店長をしていたのだけどいつも喧嘩ばかりしてくるバイトの波多野くるみが急に「奢ってよ」と言ってきたのをきっかけに一緒に食事に行くようになってから4回目に一緒に行った店だった。

あの時とは場所は移転していたが個性的なカップルシートが印象に残っていた。


7年前のカップルシートはシートというかモンゴルのゲル風の個室であった。

今にして思うと当時18歳のくるみはこんな個室に来て内心びっくりしてたかもしれないけど、見た目は平然としていた。

お店に行く前に一緒に歩きながら昔の彼女のことを聞かれ、その後に「今は・・・誰が好きなの?」とくるみから聞かれて、間もなく「ステーキワン名古屋南陽店」を閉めることが決まっていたので

「今は・・・店をきちんと終わらせて・・・落ち付いてから・・・かなぁ。

なんかきっちりけじめをつけてからでないと・・・ね」って答えていたけど、あの個室でそれを言われたら二人きりの狭い密室だったからちょっと危なかったかもしれない。


今度のカップルシートはバリ島のホテルや王様の寝室に出てきそうな天蓋付きベッド(貴人の寝台や玉座、祭壇・司祭座などの上方に設ける織物のおおい)のような薄いカーテンで覆われたベンチシートでだった。

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