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フリーアドレス

そんな時、ちょうど会社で大きな模様替えがあった。

コロナを機に出勤スタイルが大きく変動したので。


それまでは9時15分スタートの17時45分が定時だったのが、出勤も退勤も各自が決めれば良いし、働く場所も問わない。

在宅でも職場でも。流石にセキュリティの問題でフリーWi-Fiを使ったカフェとかはNGだったけど。

出勤→在宅もOKだし、その逆も大丈夫。要は一日8時間労働を出勤日分働けば良くなった。

例えば、月の営業日が仮に22日なら8時間✖︎22日分の176時間働けば大丈夫。

だから、今日は16時まで、明日は20時までとか終わる時間も勤務開始時間も自由で、超過分はもちろん残業扱い。

但し、女性事務スタッフは9時か9時15分からの出勤を週に半分とする人が多かった。

こういうところは良いところだったけど、ちょっと甘いなぁとは思っていた。

後にハゲタカファンドに会社は買収される訳だけど、多分他の会社に比べて働かない人が多くなってきたのは感じていたので。

特に金曜日の女性事務スタッフの会社出社率が極端に低く、金曜日はガラガラだった。本当は会社に来ても仕事がたいしてなんじゃないかと疑ってしまうほど。


また、席もフリーアドレス化して個人の机が廃止になり、各自ロッカーに荷物を入れて、好きな席に座って仕事をして帰るときは荷物をロッカーにしまう。


執務室の机は5人掛けのロングテーブルが向かい合わせにあり、アクリル板で仕切りを入れて基本的には蜜を避けるため隣は空ける。

そんな机の島が執務室に10島あり、窓際にも一人用テーブルが並んでいる。


だいたいの島はそれぞれ暗黙で使う部が決まっている。

河内さんとは課は違えど同じ部なので、これをきっかけに河内さんの席の近くが空いていれば近くに座っても不自然ではなくなった。

こうして、お弁当は一旦辞めたけど話す機会は増えていった。


その後もふいに河内さんから

「この英語のテスト受けてみて」とかメッセージ来たり、独身アラフィフなので将来のお金のことも気にしてるようなので、こちらから利回りの良いドル建ての一時払い生命保険の話しとか、ようやく「普通」にやり取りが出来る様になっていった。


そして、年末の最終営業日の前日のこと。

その日も河内さんと向かい合わせの席でした。

向かい合わせといっても間にアクリル板があるから距離は感じるけど。


河内さんの方が先に仕事が終わり帰ろうとした時にこちらから

「明日も来る?」

と聞くと

「明日は在宅だから、今日で今年は最後なの。じゃあ、またね〜」

そう言って帰って行った。


だいたい、社内なら「お疲れ様」みたいな言葉だけど、河内さんから「社内用語」と違う言葉を掛けられるとなんかちょっと心が暖かくなる。


こうして、2021年は特に進展はなかったけれど初めて一年間通じてネガティブなメールもなく気持ちが後退することなく「普通の同僚」として無難に過ごすことが出来た。当時はまだコロナ禍なので、なんかこの程度で充分だった。

独身時代は彼女がいても取引先とかで仲良しの人はいた。


今は涼葉がいるけどオリンピックより頻繁に定期的に消息不明になる。

甲子園によく出る強豪校みたいに。

直近だと2019年の3月、あの河内さんから奢ってよって言われた時。

そして、コロナの1回目の非常事態宣言が起きた2020年5月。

この間隔が1年2か月。

となると、今年はなにもなく過ぎたがそろそろ危ない時期になってきた。


だから、河内さんとはこんな感じでずっといれば良いなぁって、そう思っていた。


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