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大人の振る舞い

結局、木・金曜日とメールは来なかった。

念のためにランキングが発表される週明けの月曜日まで様子見を決め込んだがやはりなにもない。

そして10月度もやはりランキング入りしていない。

もしかして辞めてしまったのだろうかと嫌な予感が走り、HPでの出勤状況を見てみたが今週の出勤は未定であるが在籍はしているようだったので少しホッとした。


メールに返信がないと電話も掛けにくい。

ましてやノーアポで自宅に行くことなんか出来ない。

もう関わりたくないのだろうか・・・。

また、店に戻ったらしれっと店に行けば良いのかもしれないが、なにか反則をしている気にもなる。

どうして良いのか分からなくなってしまった。


翌週も沙良の出勤予定は出ていない。また、更にその翌週も。

もしかして、HPの更新が遅いだけで本当は辞めたのだろうか、そう思いついにお店に電話をしてしまった。


「沙良さんは今日出勤ですか?」


「現在沙良さんはお休みを頂いております」


「次の出勤はいつですか?」


「連絡待ちとなっています」


「最近、出勤していないようなんですが辞めてはないですよね?」


「辞めてはいませんが連絡を待っている状況です」


やっぱり、もう諦めた方が良いのかなという気持ちと最後にちゃんと会いたいなとの気持ちで揺れ動いている。大切な人とのお別れをする時に大人はどう考え、どう振る舞えば良いのだろう。もちろん、正解なんてないだろうけど。

平然と生きていくって実はとんでもなく幸せなことなのか、はたまた全くもって面白みのないつまらない人生なんだろうか。


なんて思っていた12月の初旬、お店のHPから沙良の名前が消えていたことに気が付いた。

心のどこかにいつかは沙良こと里江はいつもケンカになる彼とは別れないまでも少し距離を置く時間がまた来るかもしれない、その時はまた仲良しに戻れるのではと勝手に思い込んでいた。

だいたい、3か月~半年で女性から仲直りもしくは仲直りのサインをもらうことが今まで多かったので。


それに初めて二人で会った時に辞める時は教えてくれるって約束していた。

沙良ではなく、里江に戻った時には普通の一人の人間としてお互い会えるのではと一縷の望みを持っていたのは否めない。


9月の沙良の誕生日の時点ではまだ普通にやり取りが出来た。あの時にお店に行けば少なくとも『少し特別なお客さん』レベルなら戻れた可能性があったかもしれない・・・

いろいろな考えが浮かんでは消え、もうなにをどう考えればいいのか分からなくなってしまう。


「去る者追わず」

それは追いかけても仕方ないからと今までずっとそうしていた。

でも今回は無意識に沙良、既にもうお店を辞めたのだから江藤里江の家に向かってしまった。

微かな、そして淡い期待ともういないだろうと不安な気持ちを抱えたまま。


呼ばれてもいない彼女、既に里江は彼女ではないのだろうが・・・の家に約半年ぶりに向かう。


少し古ぼけた黄金の陸橋と名古屋高速沿いにある白い7階建てのマンション。

朝の通勤電車からも一瞬見ることが出来るマンション。

心臓がドキドキしている。里江はいるのだろうか?


もしいても、誰かと一緒にいるのだろうか?

例の彼とはそのまま続いているのだろうか?

それとも元お客の誰かとでも一緒にいるのだろうか。

果たして行くことが彼女にとって望ましいことなのだろうか。


自問自答が続く。



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