表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/101

月曜日の週末

少し古いマンションで3~4人乗れば満員になりそうな小さなエレベータに二人で乗り込む。

そして彼女の住むフロアーに着き一番奥に案内された。

「何もない部屋だけど・・・」

沙良はそう言って少しはにかみながら部屋に招き入れてくれた。


一人暮らしの彼女の部屋に興味深々だったが思わず息を飲み込んだ。

目の前に現れた光景は・・・

沙良のルックスからして綺麗好きで可愛らしい部屋を予想していたのだが見事に覆されてしまった。


部屋は2LDKと一人暮らしでは充分過ぎる広さなのだが、LDKにあったのは僅かに冷蔵庫とガスコンロと鍋が一つとフライパン、そしてゴミ箱代わりにダンボールが二箱置いてあり、それぞれ不燃と可燃のゴミ袋に覆われている。

食卓はおろか食器・調理道具が見事に何もない。


他にあるのは電気掃除機とお風呂の前に洗濯機がポツリと存在している。


LDKから続いている部屋には服がいっぱい並んでいるがその他には飼っている猫用のペットフードが置いてあるだけ。

そして、その隣の部屋で生活しているようでそこにはテレビと小さなテーブルの上にパソコンと固定電話。

更に小さなステレオがあり、その上には写真立てがあり彼との写真や猫の写真がある。

その他には照明のスタンドと扇風機が床に置いてあるだけ。

大袈裟でなく本当に家具はこれだけしかなかった。


これほど生活臭がない部屋は初めて見た。

ある意味すごい衝撃が走った。

着いたのは18時30分ぐらいで初夏の一番陽が長い時期なのでまだ明るい。

それでもやがて日が沈んで薄ら明りになるのだが、この時になって初めて家に照明器具がないことに気が付いた。


正確に言うと風呂場とトイレ・洗面所には備え付けの電球があるのだが、キッチンや部屋には小さなスタンドが一つあるだけである。


そして、つい彼の写真をまじまじと見てしまった。

「この人が彼?」


そう聞くと沙良は「ごめんね・・・まだ片付けてなかった・・・」

そう言ってしまい込んだ。


「ううん、いいよ」


なんか不思議な感覚である。

結構嫉妬深い方かなと思っていたけれどとても冷静に彼と沙良の写真を見ている自分がいる。

ゲーマーでよく喧嘩するって言っていたから今時のチャラチャラした感じかなと思っていたら、優しそうで落ち着いた感じで悪い印象ではなかった。


“俺と沙良の関係は一体なんだろうか?”

思わず自問自答していた。答えは見つからないけれど。


沙良の仕事は夜職である。

当然誘ってくる勘違い野郎も多いだろう。


そんな気持ちを見透かしたかのように

「お客さんで家に呼んだ人はいないから・・・」

そう沙良は言ってきた。


心境はとても複雑である。

明日からは沙良はお店に復帰する。


普通なら

「明日から仕事頑張ってね」

となるところだがそんなこととても言えない。

まぁ、そこのところはあまり考えないように心掛けた。

取り敢えず街で偶然見掛けて一目惚れした女性だったけれど、今は一人の女性としてこの腕の中にいる。


“時間が止まれば良いのに・・・”

久し振りに心からそう思える人に出会えた。

こうして本当なら週末に沙良と一緒に過ごす予定がずれ込みながらも達成できた。

この月曜日が週末代りとなっていた。

ただ、土日に家を抜け出して沙良に会うことは難しい。


「これからも月曜日に会える?」


「花谷さんなら・・・いつでも良いよ」

沙良は猫のように小さく腕の中で丸くなって囁いた


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ