滅国の始まり
ヘルゼルク王立学園──
ヘルゼルク王立学園の職員室、そこには授業を終えた教師たちが帰ってきていた。
その中の一人にキュリーが話しかけた。
「お疲れ様です、オリバ先生」
「いえいえ、こちらこそお待たせしてしまって申し訳ない」
話しかけられた前髪で右目が見えていない男性教師、オリバが担当しているのは冒険者を目指している子どもたちの実技基礎で、様々な武器の使い方を教えている。
二人は向かい合ったソファーに座りながらも話し続ける。
「大丈夫ですよ、待っている間に色々な授業を覗いて来ましたから」
「そうですか。
それでどうでしたか?」
「そうですね~、能力的に有望な人が六人ほど。
しかし、その全員が深い闇を抱えていました。
六人ほどではないにしろほとんどの生徒が闇を抱えています。
そしてそれは生徒だけではない。
教職員の中にもおり、その中には六人を超える闇を抱えている人がいます」
「生徒や教職員の中から数人だと思っていましたが……そこまでとは」
冒険者ギルドのサブマスターであるキュリーが学園にいる理由はオリバからの依頼である。
もともとは少し違和感を感じる程度であったが、日がたつにつれ違和感が増していったためキュリーに依頼したのである。
「それで治療は出来そうですか?」
「申し訳ありません。
まだ浅い方ならできるのですが、深い方は私ではできません。
私の魔法は主に身体的な傷を治すものなので、精神に纏わりついている闇を払えたとしてもごくわずかにしかならないのです。
なので、この件はアリスさんに割り振ろうと思います。
アリスさんの魔法なら、精神に纏わりついた闇を何とかしてくれるはずです」
「それでかまいません。
依頼料は弾むのでお願いします」
「分かりました、それでは早速──っ!」
二人が話し終え立ち上がろうとしたとき、それは突然起きた。
大きな揺れのせいでキュリーはバランスを崩し、ソファーにオリバを押し倒す形で倒れこんでしまう。
「す、すみません」
そう言いながらも立ち上がろうとするが、オリバに腕をつかまれソファーにに座らされる。
「今は立たない方がいいですよ」
オリバはそう言いながら、”魔法収納”を開き、薙刀を取り出した。
しばらくすると地震は収まり教員達は生徒の安全を確認しようと動こうとするが、指一本動かすことができなかった。
そして全員の脳内に声が直接語り掛けてきた。
『やあやあ皆さんこんにちは!
突然だけどこの国はついさっき僕のゲーム会場になって、君たち国民はそれに参加することができたんだ!
これはとても名誉なことだよ~?
だって、神であるこの僕のゲームに参加できたんだから!
ということで、これから君たちにはゲームをしてもらう!
内容はいたってシンプル、殺し合いだ!
ルールは二つ!
一つ目は、最後の一人になるまで殺しあうか、僕が用意した駒を全て行動不能にするかで、その時点で生き残っていた者たちを解放するということ!
二つ目は、一日たっても終わらなかったら僕が皆殺しにすること!
でも、それはつまらないから、頑張って終わらせてね!
ああ、もちろん逃げられないように結界を張ってあるからおとなしく参加にてね!
じゃあ、言いたいことも言ったし始めるよ!
よ~い、スタート~!』
???──
「今回も成功。
しかし、油断は出来ませんね。
彼らが気付く前にすくすくと成長して、彼らをも糧としてほしいものです」
仮面の神父は、緑色の液体に沈んでいる少女が入ったカプセルを撫でながらそう呟いた。