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とある国が滅んだ理由  作者: 御嵩散華
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プロローグのようなもの2

プロローグとエピローグを間違えて書いていたので訂正しました

 冒険者ギルド──



 夕方、それは冒険者ギルドでは最も忙しい時間。この()の冒険者はほとんどが成人しており、夜は仲間達と酒を飲む者も多い。

 そのため夕方の受付には長い行列ができている。

 一ヶ所を除いて。


 五か所ある受付の真ん中、そこだけ誰一人として並ばない。

 だが、たった今ギルドに入ってきた二人だけはそこへと向かった。


 一人は、金髪で青色の瞳、白銀の鎧を着て背中に大剣を背負っている高身長の青年。

 もう一人は、白髪で青色の瞳、黒色のローブを被っており肩に小さいポーチを下げている少女。


 そして二人は受付にたどり着く。


「”付与魔法(エンチャント)”、対象は空間、”音声断絶(ボイスシャットアウト)”」


 受付に着いた途端少女がそう呟くが、受付の女性や青年、周囲の冒険者達も特に気にする様子もなく会話を始める。


「サブマスター、依頼終わりました」


「では、何か証明できる物はございますか?」


 そうサブマスターと呼ばれた女性は依頼達成の報告をくれた青年に聞く。

 その直後、受付の机の上に大きな牙が現れる。

 そして女性は牙に触り、少しした後に口を開く。


「ふむ、確かに。赤竜(レッドドラゴン)の牙ですね。

 改めて、依頼達成おめでとうございます」


「ありがとうございます!

 やりましたね師匠!」


 と少女に話しかける。


「僕とエクスが組んだんだから当然でしょ。

 終わったから帰るよ」


「それもそうですね。

 では」


「お待ちください。

 まだ話は終わってませんよ」


 と牙を回収して帰ろうとするが女性に止められる。


「もしかして【魔女の集会】のこと?」


「そうです。

【加護の魔女】アリス・シントン様、何時になればいらして下さるのでしょうか?

 お弟子様の【英雄】エクス様と共に出席してもいいのですよ?」


「嫌だよ。

 どうせ全員揃わないから。

 僕以外の六人が揃うのなら出るけど、【拳の魔女】はともかく、【剣の魔女】や【構築の魔女】は仕事優先来ないでしょ?

 だから出ない。 

 そう伝えといて、【癒しの魔女】キュリー」


「いえ、今回は全員出席なされますよ」


 再び背を向けて帰ろうとしたとき、キュリーの言葉を聞き立ち止まり、振り返る。


「それほど重要な議題なの?」


「はい。

 今回の議題は【解剖の魔女】に関することと耳にしました」


「……エクス。

 先に帰ってて。

 ちょっと遅くなる」


「分かりました。

 留守は任せてください。

 では」


 そうしてエクスは冒険者ギルドを後にする。




「ここが尊様が仰っていた酒場ですか?」


「そうじゃ。

 ここが美味い酒とつまみを出す酒場、ばあぴえろじゃ」


 そう人気の少ない裏道りで、BAR.PIEROと書かれた看板を掲げている店の前で会話しているのは人間ではない。

 彼女たちの額には二本の角が生えており、一人は厳つい金棒を手に持ち、もう一人は自身の背丈と同じくらいの高さの瓢箪を引きずっている。


「それじゃあ入るかの」


 そうして尊、大きな瓢箪を引きずっている鬼の少女は扉を開け中に入っていく。

 それに続きもう一人の女性も入っていく。



 BAR.PIERO──



 落ち着いた雰囲気の店内には少数だが人がいる。

 カウンターの奥、立ち位置的にマスターらしき人物が従業員の少女と客と思われる女性と会話をしていた。


「さっき絡まれてたけど、大丈夫かい?」


 とマスターらしき人物が少女に話しかける。

 マスターの見た目は、ピンクと青色の髪に、白く塗った顔、右目の下に涙のマーク、頬まで書いた口紅で、白いスーツを着ている。

 ちなみにBARの名前は彼の姿からつけられたものである。


「大丈夫です、慣れてますから。

 それに、リオンさんが助けてくれましたし」


 と答える少女。

 少女の見た目は、クリーム色の髪は腰のあたりまで伸びており、緑色の瞳、そして頭の上にハムスターが乗っている。

 このハムスターは、ただのハムスターではない。

 ジャンキュールハムスターとゆう、れっきとした魔獣である。


「なら良かった。

 リオンちゃんもおつかれ」


「べつに疲れてないよ。

 このお店好きだし、チョムちゃんも可愛いし、お酒も美味しいし、マスターも何だかんだで無料にしてくれるし、お酒も美味しいから」


 と酒を飲みながらリオンは答える。

 リオンの見た目は、金髪のツインテールで、紫色の瞳、黒色を基調としたドレスを着ており、彼女の横には大きな鎌がカウンターに立てかけられている。


「酒が美味いを二回言ったね。

 それだけうちの酒を気に入ってくれたって受け取っとくよ」


 そのようにして会話していると、カウンターの奥の扉が開き、大きな箱を抱えた一人の男性が入ってきた。


「来たぞ~、ジャック!」


 入ってきた男性、ゲンの見た目は、この世界の一般的な農家と変わらない普通の格好であり、実際、()()農家である。


「やあ、ゲンさん。

 今日はずいぶん早いね」


「そりゃあ今日は飲み会だからな。

 早めに来ていろいろと準備してぇよ。

 そういやぁ、裏口に若造たちが倒れてたが、何かあったか?」


「あ~、あれね。

 あいつらチョムちゃんに絡んでたから、たたき出して出禁にしたのよ。

 ま~だ起きてないのか~」


「ほーん。

 ちょっと、どつきまわしに行ってくるわ」


「いやいや、あんたがやると死んじゃうから!

 あいつらDランク冒険者だよ!

 しかも今は、身体能力が五分の一くらいになってるから!」


「なら仕方ないか」


 裏口前に倒れている冒険者たちをどつきに行こうとするゲンを止めることができて、店内には安堵の沈黙が訪れる。

 そして、その沈黙を破ったのはチョムだった。


「そういえばゲンおじさん、今日は何を持ってきてくれたの?」


「あ~、今日は……家で採れた野菜とちょっとしたつまみに、酒と果実水だな」


 と箱の中から出しながら説明した。


「まだ人がそろってないけど始めちゃう?

 もう一人はすでに飲んでるし」


「これで、全員じゃねえのか?」


「そうか、ゲンさんは知らなかったね。

 この前ここに来てくれた鬼のお嬢ちゃんも誘ったんだ。

 鬼の国には美味い酒があると聞いたからね」


「なるほどな~。

 ん?

 噂をすればか?」


「そうみたいだね」


 とゲンとジャックが会話をしている間チョムとリオンは疑問に思っていた。

 チョムは、おつまみがいつもより豪華なことに。

 リオンは、噂をすればと言っていたが、一人だけ来ると聞いていたのに()()の気配が入り口のドアの前にあることに。

 そうしていると、ドアが開き二人の鬼の女性が入ってきた。


「わらわが来たぞ~」


「いらっしゃいミコトさん、待ってたよ」


「うむ、ちゃんと言われたとおりに酒とつまみを持ってきたぞ」


「そうかい。

 ところで一つ聞きたいんだが……あんたの後ろにいる殺気を出してるお嬢ちゃんは誰なんだい?」


 そう質問しながら笑顔のまま殺気を送り返す。


(この程度の殺気には動じないか)


 とジャックは内心思っていた。

 そして殺気を強めようとしたとき、尊が鬼の女性に話しかける。


「茨木、殺気を収めんか」


 すると、茨木と呼ばれた鬼の女性は殺気を収め、それに続きジャックも殺気を収める。


「うちの者がすまんのう。

 こやつは茨木、わらわの従者のようなものじゃ」


「なるほどね。

 ちなみに、俺たちに殺気を向けてきた理由はなんだい?」


「有り得ないとは思うが、もし尊様が酔いつぶれて寝てしまったときに、不埒なことをされない様にだ。」


「なるほどね。

 そういうことならこちらも警告しておこうか。

 もし、チョムちゃんを傷つけたりした場合は、誰が相手でも許さないから」


「そのへんにしとけ、お前ら」


 どんどんと重くなっていく空気の中、ゲンが二人の会話に割り込む。


「ずっとそんな感じだと、見てるこっちの酒がまずくなっちもう」


「そうじゃぞ茨木。わらわ達はここで楽しく酒を飲むために来たことを忘れとらんか?」


「いえ……そういうわけでは……」


「なら、今するべきことはわかるな?」


「はい……ジャック殿」


「なんだい?」


「先ほどはすまなかった」


「こちらも似たようなことをしたからお互い様だよ。

 とりあえず友好のしるしに一杯どうだい?」


 そうしてコップに酒を注ぎ茨木に渡す。


「感謝する、いただこう」


 そうして二人は少しずつだが会話を始める。

 その様子を見たほかの者達も思い思いに酒を飲み(チョムだけはジュースだが)楽しい夜の時間が過ぎていく。

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