プロローグのようなもの1
とある酒場──
ここは朝から晩まで誰かが騒いでいる。
それは今も。
だが、入口の扉が開き入ってきた人物を見た者達から次々と黙っていく。
入ってきた人物は灰色のスーツのような服を着ており、その瞳と肩甲骨あたりまである髪、そして口紅の色が緑色の男エルフ。
「おや、いらっしゃい。
いつものでいいかい?」
「ええ」
そうしてカウンター席に座る。
すると女性が隣に座って話しかけてきた。
「今日はいつもより早いじゃん」
「今日は特に遠くにに行く依頼は無かったからね。
というか、もう飲んでるの?」
「今日は弟子たちと一緒に来たからね。
ほら、あそこ」
そう言って親指で指をさされた方向に、三人の女性だけがいる机があった。
しかし、チンピラ達に絡まれている最中だった。
「あいつ等知ってる?」
「多分最近こっちに来たばっかりの奴よ」
そう言ってエルフは立ち上がりチンピラ達の元へ向かっていく。
その間ほかの客達から「あいつ等終わったな」や「この店で騒ぎ起こすのはバカだろ」といった会話が聞こえてきたが気にせずに話しかける。
「ちょっとあんた等、なにその子たちに絡んでるのよ!」
「ああ?
んだてめえ、邪魔すんじゃねぇ!」
そうして振り向きざまに殴りかかってくる。
しかしその拳はエルフの胸にあたるが、エルフの表情は変わらなかった。
(何だこいつ。
まるででっけぇ岩を殴ったぐらいの硬さだぞ)
「なっ何なんだて」
「殴っていいのは殴られる覚悟がある奴だけ」
そうしてエルフは振りかぶり……
「あ?
なっ、ちょっ、まっ」
……殴る。
「ぬん!」
殴られたチンピラは店の石壁を突き破り大通りまで吹き飛ばされて気絶した。
「さて、あんた達はどうする?」
そう残ったチンピラ達に指の骨を鳴らしながら聞くと「し、失礼しましたー」と走り去っていった。
そして店内では歓声が巻き起こっていた。
「お疲れー。
流石【無敵】のクルス」
そう酒の入ったコップを持ち女性が話しかける。
「貴女がやればよかったじゃない。
流石にあいつ等も【拳王】テトラの名前は知ってるでしょう?」
「女がいったらもっとめんどくさくなるじゃん?
ああゆうのは。
それより弟子達も含めて一緒に飲もう!」
「全く、しょうがないわね」
そうしてクルスはテトラ達のいる席に座り酒を飲んだ。
とある路地裏──
男が傷だらけながらも何かから逃げていた。
(クソッ、聞いてないぞあんな奴がいるなんて)
そう思いながら走っているが、その先は行き止まりだった。
「鬼ごっこはもう終わり?」
後ろを振り向くと、赤色の瞳で、髪は左半分は白色で右半分は黒色、そして少量の赤色の髪、その長さは頭の左右に一ヶ所ずつ結んでいる状態でも踝くらいまであり、膝くらいのところでまとめている女性がいた。
「まっ待ってくれ、何でもっ何でもする、だからt」
男はそうして命乞いをするが、途中で女性に遮られる。
「何でもしてくれるの?」
「あ、ああ」
男は一瞬安堵するが……
「じゃあ、死んで」
「え」
そうして彼女に切り刻まれて死亡する。
「今日も殺ってるのか?【罪人狩り】」
帰ろうとする女性に声がかけられ、上を見ると如何にも貴族っぽい服を着た赤色の瞳に白色の髪の青年が屋根の上にいた。
「そうだよ、後はよろしくね【血魔】」
そう言いながら【罪人狩り】は闇に溶け込み消えていく。
「ハイハイ」
とため息交じりに言いながら【血魔】は屋根の上から降り死体へと向かう。