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#死にたいのはじまり

 いつからだろう。

 僕が、つらいときに「死にたい」とつぶやくようになったのは。


 あれは10歳の、アブラゼミのけたたましく鳴く、7月のじめりと暑い夕暮れだった。

 一人で帰った長かった帰り道。


 僕は死にたかった。


 小学校のクラスのリーダー的ポジションの女子にきらわれた。ただ、それだけで。


 結局、その子が僕に想いを寄せていて、僕と少しでも近づくために、「ちょっかい」を出しただけだと分かったのは、クリスマスの数日前におこなわれた「総合」の授業中のクリスマスパーティーの最中だった。迷惑な話だ。


 ありがたいことに、いや、残念なことに、僕はよくモテる。


 はっきりとした目鼻立ち、くっきりとした二重、丸太ロールのように太い眉。

 

 ニンニク醤油顔イケメンとでも言うべきか、とにかく僕はモテるのだ。


 しかし、天は二物を与えず、とはまさにこのこと。

 僕は、性格には恵まれなかった。

 僕は根暗で、臆病で、声も高く、ヲタクだった。


 ちまたでいうチー牛とは、僕の代名詞だと、深夜2時、ファミマで買ってきたチョコクロワッサンを食べながら僕はふるえた。

 ベットの上には、同じくファミマで買った、「週刊プレイボーイ」の中で絶賛売り出し中の若手女優が輝いていた。

 フランツ・ベッケンバウアーが皇帝なら、僕は童貞だった。


 そして僕はまた、死にたかった。


 大学のクラスのリーダー的ポジションの男子にきらわれた。ただ、それだけで。


 もしかしたら、その子は僕に想いを寄せているのかもしれない。クリスマスパーティーが楽しみだ。

 

 不安ごとの9割は現実にならないし、悪手のあとに最悪手がくる。


 だから、落ち込んだ時ほど冷静に。


 僕はちょっとだけ楽しくなった。


 「もう少し、生きてみよう」。



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