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前世の記憶持ちの女伯爵は、嫁ぎ先の国で夫を皇帝にすることにした  作者: 針沢ハリー


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【閑話12】元王妃の叫び

おはようございます!

こんにちは!

こんばんは!



 こんなはずではなかった。


 クリスナー侯爵夫人を使って、ディレイガ帝国の次期皇帝となる可能性の高い人物の母親に取り入る所までは上手くいっていたはずだ。

 あの女の部下、いや元愛人と言おう。あの美貌の騎士団長もこちら側に引き入れて。


 そして、新たな皇帝が即位した暁には、賓客であるナシオ王国の王妃として帝国に滞在し、より高みを目指すはずだったのだ。


 しかし……。


 次期皇帝に間違いがないと思われた第八皇妃の息子は、母親と共に新皇帝の手によって失脚したという。


 嫌な予感がしたのは、クリスナー侯爵夫人からの文がぱたりと届かなくなった時だった。

 クリスナー侯爵夫人の最後の報告では、皇太子が廃嫡され、次の帝位を巡る争いが起きかけているが、勝者となり得るのは一人しかいないと伝えてきていた。

 帝国議会の選挙でもこれまで通りの派閥が多数の議席を獲得したのだから、それは揺るがないはずであった。



 またあの女に邪魔をされたのだと、その地位を剥奪された元王妃は思った。


 彼女に罰を言い渡した時の、愛してもいない夫の顔を思い出してドレスを手が痛むほどきつく握りしめる。

 普段はおどおどとした頼りない男だ。

 第三騎士団長に、その後ろでまだ影響力を持っていたのであろうあの女に、上手く操られでもしない限り、あのような振る舞いが出来るはずがない。


 彼女の人生はことごとく、女だてらに騎士を気取る、あの女に可能性を潰されてきたのだ。

 しかも、その当の本人はそのような器でもないのに大帝国の皇后の地位についたという。

 あり得ない事だった。


 自分ならばともかく、なぜあんな女が?


 末端の帝位継承権など無いに等しい男に嫁いだのではなかったか。

 それすらも腹立たしかったというのに……!!


 その夫が運良く皇帝の地位を引き継いだばかりに、あの女は皇后に成り上がった。

 王家の生まれでもない、淑女とも言い難い、あんな女が。




 調度だけは豪華だが、窓の外側にも内側にも鉄格子がはめられ、たった一つの扉は外側からしか鍵の開閉が出来ない狭苦しい部屋の中、彼女は怒りの叫びを上げた。


 もう侍女もいない。食事は扉の下から差し込まれるだけ。着替えも満足にありはしない。


 こんな生活を送るなど、彼女の矜持が許さなかった。


 彼女は、自分の狭められてしまった未来にばかり気を取られ、自身の子の事など考えもしなかった。

 それまでも考えた事など、ほとんど無かったけれど。



 毎日のように突然起こる、部屋の中で荒れ狂う女の形をした嵐は、部屋の外に待機していなければならない兵士たちを怯えさせた。

 その部屋を見張る当番兵は、交代時間をひたすら待ち焦がれる日々を過ごす事になったのだった。



             おしまい。

 お読みくださり、ありがとうございました!

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