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3.ありし日の王妃様との出会い

おはようございます!

こんにちは!

こんばんは!



 カリーナは会場の出口付近で、近くにいた使用人に休憩に使える部屋はあるかと聞いた。

 カリーナの顔を知っていたらしい使用人は、先ほど広間に登場する前に使っていた待機室が用意されていると言う。カリーナは王宮の気遣いに感謝を伝え、その使用人の案内に従って先程の部屋へ向かった。

 あの仰々しい部屋は好きではないが、広間にいるよりはよほどましだ。


 王宮の廊下を歩いていると、先程目が合った、ような気がした、王妃との出会いの時を思い出す。

 散々な日々だったが、結局は大多数の権力者が納得する形で決着がついた。

 だがしかし、本当にこれで良かったのか、いつもカリーナの心と頭に(もや)をかける。そして、その後の王妃からの冷遇も、その靄を濃くし続けている。

 王妃からしても、自分の味方を減らされたと、カリーナに対して悪感情を抱いたとしても不思議はなかったから、それは仕方がない。

 現在ではそれを甘んじて受け入れている。

 たまに嫌味を言うくらいは我慢してもらおう。


 王妃と初めて会ったのは、互いにまだ十代の頃のことだった。

 その頃は王妃と騎士団長ではなく、これから王妃となるべく教育を受けている、国王の婚約者である隣国の王女様と、変わり者の伯爵夫人である見習い騎士という関係だった。


 婚姻が成った後、王妃は二人の王子と、三人の王女を産んだ。

 ナシオ王国は、私生児は、王位であれ爵位であれ継ぐことが出来ないという慣習のある国である。

 国王には、結婚前も後にも、幾人かの身分の低い愛妾とその子どもがいたが、その者たちは適当な爵位を与えられるだけで、その子が王位を継ぐ事はない。

 だから、王妃はその義務を十分に果たしていると、高く評価されていた。

 しかし……。とカリーナは思ってしまうのだ。あの人に忠誠を誓う事は決してあり得ないと。

 それは、出会いの時からそれほど時間をおかずに、カリーナが下した判断だった。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 あれは、カリーナが見習い騎士になってすぐのことだった。

 そして、隣国のオルテガ王国からやってきた王女様、つまりは後の王妃が、国王と婚姻の儀を控え、王宮で生活を始めてから数ヶ月の時が経った頃のことでもあった。


 カリーナは訓練が終わって一息ついていたところを急に呼び出され、騎士団長に連れられて、宰相の執務室に初めて足を踏み入れた。

 そこで、宰相は、「カリーナの語学力を国のために活かすことが出来る仕事をやろう」と恩着せがましく言った。

 さらには、近い未来に王妃となる女性とお近づきになる良い機会をくれてやるのだから、感謝しろと言わんばかりの態度で、彼女にとある任務を命じた。


 何かと軋轢が起こりがちな、王女様が自国から連れてきたメイドたちと、王宮の使用人たちとの円滑な意思疎通が図れるように尽力しろと言うのだった。

 まだ婚約者に過ぎないとはいえ、未婚の他国の王女に無闇に男性を近づけるわけにもいかず、語学に堪能な男性文官たちを差し置いての抜擢だと言う。

 まったく抜擢されたくなかったカリーナだったが、当然父にも話は通っており、彼女に断る術はなかった。


 その時、カリーナは、自身が辺境伯領を出る前のことを思い出した。

 「これくらいしないとお前を送り出せない」と、父がわざわざ彼女を伯爵位につけたのだが、年若い娘にするには、明らかにやり過ぎだとカリーナは思った。せめて正式に騎士になってからでもいいのではないか、と首を捻って尋ねても、父は何も言わなかった。

 その父の行動の理由がようやく分かった。

 騎士団、歩兵部隊も含めて広く軍隊と呼ぼう、の中で彼女に無礼を働こうとする不埒者がいたとしても、それは辺境伯令嬢の肩書きで十分に抑止出来る。

 そして、平民たちも多くいる軍の中においては、下手な肩書はカリーナを孤立させかねない。

 正直言って邪魔な肩書きが増えてしまったとカリーナは思ったものだった。

 だが、他国の王女が相手となれば話は別だ。

 父はカリーナの軍での立場を憂慮したのではなかった。宰相から、彼女に課される任務について打診という名の命令を受けた父は、カリーナが王宮内で軽んじられないように、彼女を伯爵家の当主にしたのだ。



 本来、外国からの要人が来た際には、その国に通じたメイドや従僕がつけられる。それは迎え入れる側として当然の配慮である。

 もちろん、今回もそうした措置が取られた。

 しかし、のちの王妃が自国から連れてきた五人のメイド、その中でも年嵩の二人があまりにも酷すぎた。

 ほんの些細な物事を捉えては、「お可哀想な王女様」と言って、配置されていたナシオ王国側の人間に難癖をつけ続け、ついには一人残らず追い出してしまったのだ。

 そして、言葉が通じる者がいなくなると、手当たり次第にオルテガの言葉で難癖をつけ始めたという。

 流石の宰相も頭を抱え、ちょうど騎士団への入団を控えていたカリーナに白羽の矢を立てたという事らしかった。


 そうして、カリーナは伯爵夫人の肩書きのもと、王宮内の、オルテガの王女一行のために用意された一区画に、度々足を運ぶことになった。

 言葉の習得も不十分な、のちの王妃はもちろん、彼女が連れてきたメイドたちが、王宮の使用人と揉め事を起こすたびに呼び出された。

 そういった揉め事の最中も、当の「王女様」は、お人形のように微笑んで、自分のメイドたちの行動は当然とばかりに、穏やかにお過ごしだった。

その時からカリーナの彼女に対する評価は変わらない。


 カリーナが、その語学力を駆使して問題を解決する過程で、彼女らの出身国である、隣国のオルテガ王国の知識や作法も身につける羽目になったのは、いつか役に立つかもしれないと思い、まだ耐えられた。

 彼女らにナシオ王国の言葉はもちろん、歴史や習慣、礼法を教えるのにも耐えられた。それくらい自国にいる間にも学ぶ機会はあっただろうと言いたかったが、それにも耐えた。

 カリーナにも向けられる、彼女らの嫌味や横暴にも、もちろん耐えた。

 だが忍耐にも限度というものがある。そして、カリーナはどちらかと言えば、気の長い方ではない。


 当然のことながら、これまで騎士となるべく励んできたカリーナが声を張ると、窓ガラスが共鳴してしまうほどの大きさと迫力が、その声にはある。

 そして、ある時、堪忍袋の尾が切れたカリーナはその声で、彼女らを激しく叱責した。

 それは空気が肌を刺す、冷たい夜のことだった。



 まだ子どもと言っても良いくらいの年齢の下働きの少女がいた。彼女は平民であり、決して貴人に姿を見られてはならなかった。それが下女というものだ。

 王宮に仕事を得て、喜び勇んでいたのは、しばらく前のことだった。今となっては、多少給金が落ちても、どこかの貴族の屋敷で働いた方がまだ良かったと思っていた。

 だが簡単に辞めては、紹介状は書いてもらえないだろう。次の仕事を探すためにも、きちんと仕事に打ち込んでいた。


 彼女は、外国のお姫様が暮らす棟の、彼女の実家が何十戸も入りそうなほど広い廊下の、床拭きをしなければならなかった。

 本来、昼間にしても構わない仕事だった。誰も好んで、それはそれは寒く薄暗い中、床を拭きたくなんてない。

 しかし、ここで暮らすお姫様は、まだこのナシオ王国の言葉が上手く話せないらしく、教師を呼んで部屋にこもっていることが多い。

 そうなると、この廊下を、お姫様や、そのメイドだという偉そうな外国人貴族や、お姫様の教師を務める貴族たちが、いつ通るか分からないのだ。

 場合によっては、国王様が自らが婚約者のもとに、ふらりと出向いてくることすらある。

 とてもではないが、昼間床拭きをすることなどできる状況ではなかった。


 早くお茶会にでも行ってくれるようになることを願いながら、少女は懸命に働いた。

 しかし、その日はあまりにも手がかじかんで、赤切れもいつになく痛んでいた。だから、ついうっかり、絞り終わった雑巾を広げた時に、指や手に走った痛みに身体を縮こまらせてた。そして、その膝が運悪く、バケツにぶつかってしまったのだ。


 ガタン、ゴトン、バシャン、という音が響いて、そして消えていった頃には、少女は蒼白になり、今にも倒れそうだった。

 近くのドアが開いて、鬼の形相をした外国人のメイドが、彼女には分からない言葉で何か捲し立て始めたからだ。

 彼女は息を呑んだ。もう一人出てきたメイドの手に鞭のような長い布が握られていたから。

 そしてそれは、彼女の予想通り、彼女に向かって振り下ろされた。


 カリーナは足音をたてないように気をつけながら、夜中の王宮の廊下に駆けつけた。

 騎士団の宿舎は各所に点在しているが、カリーナのような特別に配慮が必要な立場にある人間が使う宿舎は、王宮のほど近くにあった。

 だから、事が起こってからそれほど時間をおかず、そこに到着したはずだった。


 しかし、もうそこには人垣が出来ていて、その向こうからヒステリックな喚き声と、鋭く何かを打ち付ける音が聞こえてくる。彼女は大急ぎでそこに割って入った。

 思った以上の惨状だった。


 水浸しの床に倒れているのは、年端もいかない少女だった。いや、年齢はもしかしたら思っているよりも上かもしれないが、何よりも肉付きの悪い体が、彼女をより一層、儚く、幼く見せていた。

 そしてその少女は、先ほどから振り下ろされる帯紐のようなもので打たれ、血が滲んでいない場所を見つける方が困難な有り様だった。

 カリーナが、喚きながら少女をいたぶる女の手を掴み引きずり倒すと、もう一人、近くにいた女がオルテガの言葉で抗議する。

 寝巻きにガウンを羽織っただけで、髪も下ろしたまま、という出立ちのせいで認識するのが遅れたが、この二人は「王女様」のメイドだった。

 カリーナは、先ほどから近くで仲間の少女の心配をしているらしき下女たちに声をかけた。早くこの娘の治療をしてやらなくては、と。

 彼女たちは涙を流したり、苦しげに顔を歪めながら、倒れている少女のもとに駆け寄り、傷ついた少女を運んでいった。

 カリーナは、後で、彼女が適切な治療を受けられたか確かめなければと、冷え切った頭で考えていた。

 すぐ目の前、身長差があるのでやや下から聞こえてくる喚き声がうるさい。


 カリーナはいつになく怒っていた。ここまで強い怒りを感じたのは、いつぶりか思い出せないくらい怒っていた。

 だからカリーナは、「あの下賤な子どもが、皆が寝静まっている夜中に、何をとち狂ったのか大きな音を立てたのだから、鞭をくれてやるのは当然だ」と喚くメイドを睨みつけずにはいられなかった。

 音を立ててしまったのは何故なのか、大人が寝静まっている時間に、子どものような歳の少女が働いていたのはなぜなのか、カリーナには想像がついた。しかし、この女達には全く分からないか、分かっていてもそれが当然だと思っている。

 許せなかった。

 国際問題に発展するだとか、カリーナの身が危うくなるだとか、そんな事はどうでも良かった。


 我知らず、怒気を発しながら彼女らに迫るカリーナに、彼女らは怯えの表情を浮かべた。

 カリーナは、まさに少女を打っていた、そのメイドの右手を掴んで力を込めた。うめき声が聞こえたが知ったことか。

 カリーナは言った。彼女らに伝わるように、オルテガの言葉で。


 「そなたらの国の国母となるべき方が他国から来られたとする。

 その方が、自分達の国の文化や人間を粗雑に扱ったとして、さらには、その使用人が、懸命に仕事を全うしようとする少女に対して、酷い仕打ちをするのを目にしたとして、そなたは、その他国から来られた方を、自国の国母と思えるか!」


 カリーナは、廊下に響き渡る、まだ少女らしさを残した声を張った。

 メイド二人は、反論のしようもないのか、気圧されているのか、悔しそうに目を細めたきり固まっている。


 カリーナらの周りには一定の距離を保ちながら、人が集まったままだった。

 本来ならばこの場に姿を現すことを禁じられている下働きの者や、騒ぎを聞きつけて顔面を蒼白にしながら、右往左往している女官らの姿もあった。

 彼らの中に、カリーナが使った、オルテガの言葉を理解する者はほとんど居なかっただろうが、彼らはカリーナに同調するように、メイド二人を睨みつけている。

 さぞ、これまでも煮え湯を飲まされていたのだろう。


 カリーナが怒鳴った声の反響が完全に消えた頃、王宮の下働きから上級の女官まで、女性使用人全てを統括する立場にある女官長が、一分の隙もない姿で現れた。

 何事が起こったのか聞かれたが、カリーナは、自分自身が到着する前からここにいて、先ほど傷ついた少女を連れて行き、また様子を見に戻ってきたという年嵩の下女が説明を始めてくれたので、彼女にそれを託した。

 カリーナはあまりにも怒りすぎていて、冷静に話が出来る状態ではなかったから。

 目の前で小刻みに震え出した、二人の女を殴りつけるのを堪えるだけで精一杯だったから。


 「フォイラー伯爵夫人」

 女官長の硬い声がカリーナを呼んだ。

 「どうぞ、お手をお放しください。もう十分していただきました。あとはこちらでいたしますゆえ」


 カリーナは、奥歯を噛み締めながら、乱暴に掴んでいた、か細い腕を、押しやるように放した。

 小さな悲鳴が聞こえたが、下を確認する事はなかった。


 女官長はホッとした顔をして、辺りに留まっている下働きの者達にも、持ち場に戻るように声をかける。


 「この騒ぎは、すでに国王陛下にも伝わっております。じきに近衛部隊から人が参ります。あなた方はここにはいませんでした。良いですね」


 決して急かすわけではない、穏やかな大人の女性の声に、カリーナは母代わりの叔母たちを思い出し、少しだけ落ち着きを取り戻していった。


 「私も戻った方がよろしいでしょうか。それとも、こちらで裁きを待つべきでしょうか」


 カリーナが聞くと、女官長は「こちらで、ご一緒にお待ちいただけますか?」と顎に指を当てて考えながら言った。


 そして、女官長は、カリーナの前で呆然と立ち尽くして、または座り込んでいる二人の外国人に向かって、ゆっくりと簡単な言葉で、「服装を整えて戻ってくるように」と言った。心持ち厳しさを感じる声だった。

 半分くらいしか言葉を理解していないであろう二人に、カリーナは親切にも、「近衛の男性騎士がやって来るから、服装を整えて、またこの場に戻って来るように」と通訳してやった。

 二人はようやく自分たちの、寝巻きにガウンを羽織っただけの姿に気づいたようで、急いで部屋に消えていった。

 その頃には、下働きたちも姿を消し、この廊下は再び静まり返っていた。

 残っているのは、カリーナと女官長と、何人かの若い女官だけだった。


 カリーナは、王女様の部屋の扉が閉まったのに気づいた。

 先程まで、わずかにそれが開いていたのは確認していた。おそらく、部屋の主が、本日の不寝番だったメイドにでも、外の様子を確認させていたのだろう。

 下級使用人もいる場所に本人が出てくるわけにはいかなかっただろう。しかしそれでも、人に命じてでも何かすべきだったのではないか、と思うカリーナだった。


 やがて近衛部隊員三人が到着した。そのうちの一人は母親がオルテガ出身であり、言葉に通じていた。

 身なりを整えて部屋から出てきた「王女様」のメイド二人と、残っていたカリーナと女官長、そして、比較的早く到着し、この場での様子を見ていた若い女官たちは、その場から少し離れた、近衛部隊が使用する部屋に連れていかれ、一人づつ奥の部屋に通されて事情を聞かれた。

 被害の当事者である少女には、夜が明けて、体調に問題がないことを確認してから話を聞くという。


 聴取は、一番身分の高いカリーナから行われた。

 カリーナは、集まってきた使用人達についてのみ話をぼやかし、後は見たままを話した。

 そして、そのまま宿舎へ返されたので、他の人間が何を話したのかは分からなかった。 


 その夜は、今後の自分の処遇についての少しの不安と、そもそもこのような事態を招いた何者かに対する大きな怒りのため、一睡も出来なかったのだった。


 それからしばらく何の音沙汰もなく、カリーナは平常を取り戻すべく、訓練に明け暮れていた。

 そんなある日、思い出したかのように呼び出され、女官長と共に宰相の前に立つことになった。宰相は一言も発さず、説明をしたのは宰相の秘書官だったが。

 オルテガの、問題を起こした年嵩のメイド二人を、オルテガに送り返すことになったと告げられ、カリーナは探るように横にいる女官長と視線を交わした。

 彼女も何も知らされていなかったらしかった。

 その問題のメイドたちに追い出された、王女様のために集められたナシオ王国側の人材を、元の場所に再び配置することを王女様も快諾され、問題は解決したと言う。


 どこか上の方で行われた話し合いが全てが終わった後に、こんな風に告げられて、当事者だったはずのカリーナは自分の存在の軽さに失望した。

 だがそんな事はお首にも出さずに、「今回の騒動は決して口外しないように」という命令にも、「了解致しました」とはっきりと口にした。

 それ以外に出来ることはなかった。

 カリーナの暴力も無かったことになり、お咎めなしとなったのだから、他に何か言える事などない。


 だが、感情はそんな言葉だけで全てを無かった事には出来なかった。

 解決とは何か、とカリーナは思った。

 王女様は無傷で、このままここにいる。

 ()()が彼女のいるべき場所なのだろう。

 だが、()()()ここにいるべきなのか、それが国のためになるのかはまた別の問題だ。


 カリーナはこの先騎士になった時、国家に、ひいては国王に忠誠を捧げることになる。そして、その隣に座る国王の配偶者にも。

 カリーナは胸に去来する虚しさに蓋をした。その時はそうすることしか出来なかった。与えられた爵位以外に何も持たない、無力な存在だったから。

 だが、いつか。

 自分が心の底から忠誠を誓える相手を見つけたい。

 絶対的な力と、少なくとも何者かにとっては正義であるものを持った誰かを。

 その思いを胸に抱き、カリーナは満たされぬまま、騎士として過ごすことになったのだった。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 カリーナは、廊下を歩いている間に去来した、あの日の思いに蓋をした。

 目的の扉の前に辿り着いたからだった。


「どうぞ、こちらです」


 そう言って、先ほどの部屋の扉を指し示した使用人が、深々と頭を下げてから去っていくのを、カリーナは違和感を持って見送った。

 それはエヴァンも同じだったようで、彼はカリーナの前に進み出た。


 「扉を開けない使用人がいるか?」

 「いや、いないな」


 エヴァンはカリーナを背中に庇いながら、ゆっくりと扉を開いた。


つづく……


ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

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