大人になるためにベッドから抜けだして
僕は両親に抗議した。
12月31日は12時まで寝ないから。
お母さんだってお父さんだって毎回起きているじゃないか。
お母さんが困った顔で、遅くに帰って来たお父さんが
「ダメだ。」
と一言いった。
「嫌だ。」
僕も言い返してやった。
僕は、どうしても夜更かししたかったのだ。
お母さんが子供だから早く寝ないとダメなのよと言うから、
「もう子供じゃないもん、だって。」
「だって、すっちーは、おおみそかじゃなくても夜更かししてるって。夜更かししたことないっていったら、子供だねって。おおみそかくらいいじゃんか。」
すっちーは僕のともだち。すっちーは僕が知らないことをいろいろ知ってて、今年のクリスマスのプレゼントもすっちーと一緒にゲームがしたくて新しいのを買ってもらった。お父さんはゲームなんかダメだっていうけど、お母さんがいいじゃないっていって、ようやく買ってもらえた。うちの家、考え方古いよな。結局お父さんも折れてくれたけど。
「まぁ、おおみそかぐらいなら。」
とお母さんがいってくれたからよっしゃって思ったのに。
「もう遅い。早く寝ろ。」
とご飯を食べていたお父さんが手をとめてこっちを向いていった。僕はだまるしかなかった。
僕は悔しかったけれど、二階に上がり、ベッドで布団にくるまった。
次の日、学校にいったらすっちーが話しかけてきた。
「よぉ、ゆうき、おおみそかどうなった?」
「おはよ。うちダメだったわ。お父さんがゆるしてくれなかったし。お父さん、考え方古いんよね。お母さんは許してくれてたのに。」
「じゃぁ、おまえ、今年も寝るんか。もったいないなぁ。夜更かしめっちゃ楽しいのに。」
「俺だって、夜更かししたいよ。でもさ、お父さんがね。」
「あのさぁ、寝たふりして二人で外に遊びにいかねーか?」
「えっ!?」
夜、子供だけで遊ぶのはお母さんが絶対許さなかった。だから、友達がまだまだ大丈夫といっても、18時になる前に家に戻っていた。おおみそか、二人で外に。
「何するん?外絶対寒いじゃん。」
やめようとは言わなかった。お母さんにばれたら殺されるけど、きっとバレないだろう。そう思った。お父さんは夜更かしすら許してくれないし、もういいや。
「公園でお菓子食べながらゲームしようぜ。ぶらぶら外歩いてもいいしさ。そのまま初日の出とかみちゃってよぉ。」
「初日の出!?」
僕は、生まれてまだ初日の出を見たことない。夜更かしっていっても12時少し過ぎたら寝るつもりだったし、初日の出っていつになったら見れるんだ。そんな時間まで外にいて大丈夫かな。怖いなと少し思った。でも僕はもうこれ以上すっちーになめられたくなかった。
「いいよ、またどうするか。話そう。」
「分かってるじゃん、ゆうき。オッケー。」
そうやって僕らのおおみそかの冒険の計画がはじまった。