血液型O型は他人と二人っきりで会話しない状況を気まずく感じないとか、あれ嘘だから
「よ、よろしくお願いします」
「んなかしこまらなくても、もっとフランクでいいぜ」
目の前にいる騎士が陽の者であることに気づいた俺は、軽くめまいがした。
ちなみにミラーというのはこの世界で生きていく上で俺がつけた名前だ。鏡だからミラーというのは安直かもしれないが、そのままカガミというのもなんか抵抗があった。なんというか、自分がバスケ選手なのではと思ってしまいそうだった。
いやそんなことより、こいつと一緒に任務を行うのはなんか嫌だ。失敗する予感しかしない。
というか今まで俺が単独行動を主としてきているのはマグロブさんも知っているはず。なぜに今回はペアで行動させようとするのだろうか。俺一人では難しいとさっき言っていたが、本当にそれだけだろうか。
それを訊こうとしたが、マグロブさんはこの後忙しいらしく、「よろしくたのんだよ」と言い残して、先に出て行ってしまった。
そして室内には俺とケルファーと名乗った彼の二人が取り残された。
やべえ気まずいぞ。
だがここでむやみに会話をしようとするのは下策だ。こういう時は向こうから会話を振ってくるのを待ったほうがいい。これまでそれで乗り切ってきた俺が言うんだ間違いない。
案の定、彼のほうから訪ねてきた。
「とりあえず、どうする? すぐにダンジョンに向かうか」
「まあここでじっとしてても仕方ないしな」
本当は気まずいだけだが。
「ああでも先にいって見張りと話をつけてきてくれないか。俺はギルドに行って何か情報がないか聞いてくる」
「わかった。先に行って待ってる」
そう言うと彼は部屋から出ていこうとしたが、扉の前で振り返ってこういった。
「頼りにしてるぜ、ミラー」
***
もう十時半ごろだってのに、ギルドは思ったより混んでいる。
ちなみに時刻はギルドに設置してあるデカい時計からわかった。街の中心にもデカい時計台があって、そこではしばしばカップルがイチャついている。クソが。
やや待って、空いたカウンターの一角に向かった。
「ありゃ、ミラーさんだ。どうしたんですか」
そう尋ねてきたのはナイル。このギルドで俺が最も信頼している受付担当である。見た目は可愛い。
「アンリエッタ伯爵の依頼を受けてな。ちょっと情報がいるんだ。ここ数週間で伯爵所有のダンジョンに関して、何か異変があったとかそういう情報があるなら教えて欲しいんだが」
「なるほど、そういうことなら」
そういうとナイルは受付の記録をあさりだした。そしてしばらくすると、
「三日前にカルデラさんのパーティーが最深層のデュラハンの討伐に向かって、帰還していますね。依頼は成功。一応これがギルドの記録に残る潜入者としては一番新しいのです」
「なるほど、じゃあ彼らに話を」
待てよ、ダンジョンには別にギルドの依頼経由で入る必要はない。魔石採取の名目ならダンジョンの見張りに銅貨三枚支払えば入れる。しくじったかもしれない。ちなみに魔石ってのは、魔物を倒した際に出る石のことであり、この世界では様々なものに使われる資源だ。
「カルデラさんたちなら、商人の護衛依頼に出ていて、帰ってくるのは明日の夕方になりますよ」
「マジかよ」
結局しくじっとるやないかーい。仕方ない。ダンジョンに向かうとしますか。
「わかった。サンクスな。カルデラさんたちには話をしておいてくれないか」
「わかりました。気を付けてくださいね」
俺はそう言ってナイルと別れ、ダンジョンへと向かった。