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異世界転生してから八年たった  作者: タリナーズヒーコー
第一章
20/73

そんなこんなで、旅に出る

そこにケルファーが立っていた。

「よう」

え、ちょっと待てなんでこいつここにいるんだ。

「何やってんだお前」

「ん、ああいや、俺もお前の旅についていこうと思ってな」

なるほどなるほど、そのために宿屋の前で待っていたと。それならば理解できる。


いや待て。いまこいつなんて言った?

「ついてくるって言った、いま?」

「ああそうだ」

「いやお前騎士団の仕事はどうした」

「やめた」


ウソだろ。


「フッ軽すぎんか」

「フッ軽ってなんだ」

「フッ軽ってのは、フットワークが軽いってことだ」

「フットワークが軽いってのはどういうことだ」

「行動力がすごいってことだ」

「行動力がすご」

「いいかげんにしろ」

どこまで説明させる気だこいつ。

「いやーわりいわりい。実をいうとフッ軽の意味は最初から知ってた」

「じゃあ今の会話は何だったんだよ」

徒労感半端ねぇ。

「まあまあ、じゃそういうことだから」

「どういうことだよ」

「お前の旅に同行するって話だ」

あ、やっぱりそこに戻ってくるのね。

「マジなのか」

「大マジだ」

どうしようこれはさすがに想定外だ。待てよ、こいつのこの感じ、おそらくテントなどの類いを持っていないはず、そこを理由にすれば。

「ああ、装備のことなら心配しなくていいぜ。俺も昨日買った」

「そ、そうか」

ちくしょう、物資面で拒否するのは無理か。

「じゃあせめて理由を聞かせろ。ろくでもない理由だったら拒否するからな」

さーて、どう答える?

「んー、そうだな、あれだ」

そこでケルファーは一区切りしてこういった。


「お前と一緒の旅がなんか楽しそうだから。これでいいか」


予想していたものよりはるかにとんでもない理由が来て、俺は呆気に取られてしまった。

「なんだそれ、そのためにわざわざ騎士団をやめたのか、お前」

気づけば俺は笑っていた。

「なんだよ、人生楽しんでナンボだろ」

「そうだな」

実際、旅をエンジョイしたいというのは俺の目論見とも合致している部分である。

その時気づいた。俺は別にケルファーがついてきてくれることをそこまで嫌がっていないということに。おそらくそれは、ケルファーとならこの旅がより楽しくなるからと心のどこかでそう予感しているからだろう。

「よかろう、ついてきたまへ」

だから、拒否するという選択肢は存在しない。

「なんだそれ、偉そうだな」

言葉の割に、彼は特に嫌がっていない。それはきっと、俺の返しに悪意がないとわかっているから。

「いいだろこれくらい、俺ら友達だろ」

ほんの少し前に酒場で言われた言葉を返す。意趣返しの意味も込めて鼻高々に。

それと同時に自分でもその言葉をかみしめる。異世界で初めてできた友人という存在への感謝とともに。

「おうとも」

返ってきたのは、その返事と出会った時と同じような陽キャバリバリの笑顔であった。





「それで、どこへ行くんだい」

「おいおい、いきなり俺任せか」

寄りかかっていくスタイルは嫌いじゃないぜ。

だが大丈夫、なんと行先は決定しているんです!

「こっちだ」

俺は交差点のど真ん中にたてられている案内板の中の一つを指さす。そこには

「NORTH」と書かれている。ちなみに何の因果か意味は北である。

「ふむ、理由を聞かせてもらおうか」

なんだこいつ、さっきの俺の真似か。しかも意外と似てるし。

「行ったことがないから」

さあ果たしてこいつはこの理由にどんな反応をするのかと好奇心半分興味半分で回答を待つ。自分で言っておいてなんだが、これ実質好奇心100パーじゃねぇか。

「いいね、そういうの嫌いじゃないぜ」

「じゃあこっちで決定だな」

そういうと、俺は歩き出す。ケルファーも横についてくる。

かくして、異世界に転生して八年間何もなかった男と、その男が出会ったフッ軽な男の二人組による旅が始まった。


初めまして、タリナーズヒーコーです。

この作品にここまでお付き合いいただきありがとうございました。

いったん完結にしますが、続きは考えてあるので、まとまったらまたアップロードすると思います。

まあもしかしたら忘れられているかもしれませんけど。

ちなみに私は基本的に完結済みの作品しか読みません。私のブックマークにもそういった作品がいくつか並んでいるので、よろしかったら読んでみてください。

それでは、またいつの日か。あなたがこの小説家になろうで一つでもいい作品に出会えますように。

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