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異世界転生してから八年たった  作者: タリナーズヒーコー
第一章
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コッテコテの異世界転生だ

初投稿です。よろしくお願いします。

目の前からトラックが猛スピードで迫ってきている。

ああ、もっと親孝行しとけばよかったな、といまさらながらに思った。

どう考えてもよけきれない。

次の瞬間、俺は体中に痛みを感じつつ、意識を手放した。




***



「もしもーし、もしもーし、聞こえるかー?」

なんか声が聞こえる。

「もしもーし、もしもーし」

少しずつ意識がはっきりするのを感じる。

「もしもーし、あれ起きないな。しかたない、声帯をいじってかわいい女神っぽく声を出せば見るからに煩悩にまみれていそうなこいつも起きるだろう」

「おぃぃぃぃぃぃ」

思わず飛び起きた。なんということをいいやがる。

「おう、起きたか」

どっちかというといまのは新八なんだが、いやそんなことはどうでもいい。

「どちらさまでしょう」

かしこまってたずねたのは、俺こと二子山鏡、大学二年生である。

いや、だったというべきか。

トラックにはねられたのに意識があるというこの奇怪な状況、そして思わずかしこまった口調になってしまうほどの尊そうなオーラを放つ目の前の存在。そしてどう考えても現実世界とは思えない今俺のいる空間。

おそらく、というか確信があった。

「おう、元気そうだな。俺様は神だ。その様子だと懇切丁寧な説明は必要なさそうだな。単刀直入に言う。お前には異世界に転生してもらう」


やっぱり異世界転生して第二の人生を送るパターンですかそうですか。

いや待てよ。そもそも転生先は人間だろうか。最近だと剣だったり自販機だったり肋骨に転生している元人間だっている。確かめねばなるまい。

「わかりましたよ。それで、転生先は人間ですか」

神様は虚をつかれたような顔をした。

「そんな質問初めて聞かれたわ。おまえおもしろいな。ああ心配しなくても転生先は人間だぜ。」

よかった。さすがに色物に転生するのはちょっと抵抗があったので。

「それと、ここでいくつか転生にあたって決めてほしいことがある。あとは転生に関してのルールとかの説明と諸注意を聞いてもらう。ああそうだ、別に敬語使わなくていいぞ」

思ったよりも親切な神様らしい。ちょっと安心した。

「ただし、敬語を使わないでしゃべるなら正座かつ平伏した状態で俺様の話を聞け。」

どんな条件だよ。さてはこの神Sだな。まあでも別に正座がつらいと感じたことないし、従っておくか。

いや待て。

もしかしたら正座×平伏×敬語のコンボを決めれば、より良い条件を飲んでくれるかもしれん。さっき俺に決めてほしいことがあるとか言ってたし。そうしよう。

俺はすらっと正座×平伏のポーズをとり、敬語で話す準備をした。

「まず、転生先の世界について説明しておく。よくある剣と魔法の世界だと思ってくれてかまわん。文明レベルはフランス革命ぐらいのヨーロッパとほぼ同じだと思っていい。元居た世界のことについてべらべらとしゃべりまくるのはやめてほしい。それから…」

その後しばらく説明と諸注意が続いた。というか諸注意って単語久しぶりだな。

「よし、これでルール説明と諸注意はおしまいだ。なんか聞きたいことあるか」

いくつか質問をした。もちろん敬語で。神様はそれぞれに対して答えてくれた。

「……。お前の親に関しては、今後の人生が少しうまく運ぶようになるよう、別の神に俺が連絡を入れる。最後のに関しては今から話す」

そういって神様はなんかタブレットっぽいやつを出した。

「転生先のオプションについてだ。さっきも言った通り、転生先の世界にはスキルとレベルの概念がある。お前に決めてほしいことは三つある。」

タブレットっぽいやつの画面に何やら選択肢が出てきた。

「一つ目は赤ん坊から転生するか、今の肉体年齢のままで転生するかだ。転生したいほうの選択肢をタップしろ。いずれにせよお前の精神年齢は維持されたままだ。」

一つ目にしてなかなか難しい選択肢だな。そもそもこれ他の条件を加味して決めたほうがいいんじゃないか。

「ちなみに転生先の家庭環境とかってランダムですか」

「赤ん坊に生まれたならランダムだ。現状維持なら金銭と身一つで追い出す」

「転生先の座標はわかりますかね?」

「良ーい感じの町の中。教えられるのはここまでだ」

ちょいと考えて、タブレットに出ている現状維持と示されている方をタップした。というか赤ちゃんライフをいまさら送りたくなかった。

「よし、じゃあ次だな。次は転生後のジョブとそれに関する数値やスキル決めだ。詳しいことはその画面を読んでオクラ」

この神様時たま雑だな。現に今も目の前で妙な本読んでるし。

このままだと放置プレイまっしぐらなので取りあえず画面を見てみる。幸いなことに思ったよりシンプルそうであった。ミスらないように慎重に入力していく。

「できましたよ」

そう神様に報告をした。

「んー、オッケー確認できた。じゃあ次で最後だな」

そう言って、神様は指パッチンをした。

するとイスとテーブルが現れ、俺と神様も向かい合って座っていた。

「とはいっても三つめはお前に対する褒美みたいなものだ。お前みたいにきちんとした転生者は久しぶりでな、お前の願いを最後に一つ聞いてやって、俺がそれに可能な限り応えられるギフトを一つ授けるってのが本当のところだ。さて、何か望むものはあるかい、二小山君?」

評価を訂正したほうがいいかもしれない。めっちゃ親切ですやん。そして敬語で会話を試みた過去の俺、グッジョブ。


しばし考えた。

「んー、しいて言えば、人生を倍楽しみたいってところですかね」

チーレム無双がしたいとかいってみたかったが、なんかそういうと好感度が下がって妙なことが起きそうなので辞めた。かわりに口から出たのは何とも言えない曖昧な要望だった。

「わかった。お前の転生後に何らかの形で組み込んでおく。楽しみにしてな」

そういうと神様はもう一度指パッチンをした。すると目の前にティーセットが現れた。中には珈琲が注がれている。

一口飲んでみた。すごくうまい。

「うまいだろ。ちなみにそれを飲み干したら転生だ。カップの中身をこぼしても転生だ。」

転生前に良い思いをさせてやろうという気遣いだろうか。

あと、俺がカップの中身を床?にぶちまけて、「もう転生できませーン」とでもやると思ったのか。だとしたらなんか悲しいのだが。

だがいつまでもこのままというわけにはいかないので、少し寂しさを感じつつもコーヒーを飲み干した。

「それじゃ転生だな。セカンドライフをきちんとエンジョイするんだぞ」

薄れゆく意識の中、最後に聞こえたのはそんなセリフであった。


***




目覚めると、そこは知らない街の中だった。雰囲気的にも異世界って感じ。

「いや知ってる街の中だったら逆にヤバイか」

通りすがりのおっさんが変な目で俺を見た。いかんいかん、独り言は俺の癖だ。気をつけねば。というかあれだな、普通に日本語として言語は認識されてるっぽいな。ここら辺は神様に質問したとおりだ。

取りあえずは今日の寝床と金策探しだな。おっとその前に所持金の確認だ。たしかいくらかくれると神様が言っていた。

ポケットをまさぐって財布を発掘、そして中身を確認する。中には金貨と銀貨らしきものがそれぞれ8枚づつ入っていた。

神様の言葉を思い出す。現状維持なら金銭と身一つで追い出すとか言ってたな。

「所持金のある喜びかみしめていこう、出発」

小声でつぶやいて、俺は探索を始めた。




そして八年の月日が流れた。








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