侍、年甲斐もなくはしゃぐ
「あれは何でござるっ? むっ、向こうにも何かあるぞっ!! ややっ! これはまた面白いっ!」
「マ、マルさんっっ! は、恥ずかしいから大人しくしててなのらっ!!」
初めて見る町の景色に拙者、年甲斐もなくはしゃいでしまっていた。
ジェネラルベアーを倒したあと、拙者達は何事もなくここロンマリネの町へと到着した。規模でいうとそこまで大きな町ではないのらしいのだが、日も暮れた夜更けだというに、沢山の人で賑わっていた。
おまけに、妖術の類いなのか夜でも町が明るい。日本でも提灯やら蝋燭の明かりやらで、真っ暗ということもなかったが、ここはそれと比べ物にならんほど明るかった。リリデル殿によると、魔灯という提灯のようなものが有るからで、魔物除けも兼ねているのだとか。
それにしても、先程から何やらいい匂いがしているぞ。
クンクン……クンっ。
匂いはこちらか? クンクン、むむむ……あそこからのようだぞ!
「り、リリデル殿っ!! ちとこちらに来るでござる! ここからいい匂いがしてるでござるぞっ」
匂いを辿り、目の前にあったのは露店商らしきものだった。
どれどれぇ、ちと拝見いたす。
何やら焼いているようだが、これは……肉か?奇妙な形をしているが、このタレのようなものがいい匂いをさせているのだな。
一体、何を焼いて――
「まままマルさーんっ!! そんなに屋台に近づいて匂いを嗅いだら迷惑なのらっ!」
リリデル殿は何やら慌てた様子でこちらに走ってきた。
「おいおい、兄ちゃん! いい匂いなのはわかんだけどよぉ、そんなに嗅がれちゃ商売できねぇよ! おいっ妖精さんよ、お前の連れか? ちゃんと見ててもらわねぇと困んだろっ」
「ご、ごめんなさいなのら。その、ニ本買って行くから許して欲しいのら」
上目遣いのリリデル殿に謝られ、露店商の男も顔が緩んでおる。リリデル殿は天然の人たらしというやつだな。
「お、おぉう。わかってるじゃねえか! 一本おまけしてやるから、たーんと食べてでっかくなんだぞ!」
ちゃっかりおまけまでしてもらうとは、さすがリリデル殿でござる。
笑顔で串を3本受け取ったリリデル殿だったが、拙者と目が会うなりその表情は一変した。
「もぉーっ!! マルさんっ!! だから大人しくしててって言ったのら! 僕怒っちゃうら!!」
頬を膨らませ腕を組んで睨む。
さすがの拙者もちょびっとばかし、羽目を外し過ぎたと反省であったが。「もう勝手にどっか行かないように、僕とお手々繋いでおくのらっ」なーんて言って手を差し出してくるもんだから、ニヤニヤが止まらなくて、更にリリデル殿に怒られたのでござる。
リリデル殿に手を引かれつつ、買ってもらった串を頬張った。
「この『ヤミヤミ肉』の炭焼きとやらは、非常に美味であるな!」
いやはや、これがまた旨すぎるのである。噛む程に肉汁が溢れ、濃厚なタレがまた病み付きになる旨さだ。
「屋台でよく売ってるやつなのら! 食べ出したら病み付きになる味のタレだから『ヤミヤミ肉』っていうのらっ! 僕もこれ好きなのらぁ~」
そんな会話をしながら、気づくと一軒の店らしき前に来ていた。そういえば、光る石を売ってお金に変えねばならぬっと言っておったな。して、ここがその交換所なのか?
「リリデル殿、ここは何屋さんでござる?」
「ここはギルドお抱えの買い取り窓口なのら。……えーっと、つまりここに魔物から取れた物を持ってくれば、お金に交換してくれるのら」
余程わかりやすい表情をしていたのか、拙者にもわかるように言い直してくれた。
なるほど。交換所であるか。先程の魔物が一体いくらの価値があるのかわかるのでござるなっ! 高値が付けば、それ程に強く、それを倒した拙者も強いとな。ふーむっ、楽しみでござる。
――ではっ!!